第31話 【ルクリア商会の動き・3】
それから食堂へと移動してきた俺とアリスは、おばちゃん達に夕食を用意してもらい席に座った。
おばちゃん達はアリスの事を知っていて、俺と一緒に居る事を驚いていた。
それと食事を始める前に互いの年齢を聞くと、何とアリスは俺と同い歳という事が分かった。
「アルフレッド君、驚きすぎだよ。私って、そんなに幼く見える?」
「いや、ごめん。正直、3つくらい年下かと思ってた」
そう俺はアリスに思っていた事を言うと、アリスは「正直に言ってくれたから、今回だけは許します」と俺を許してくれた。
そんな感じでなんだか打ち解け、アリスと少しだけ距離が縮まった感じがした。
「へぇ、アリスは学園に通ってるんだ」
食事をしながら会話をしていて、会話の話題は学園の話となった。
この国には、12歳から入る事が出来る学園がある。
その学園は〝初等部・高等部〟の二つに分かれており。
同じ歳であるアリスは初等部で3年間過ごし、今は高等部に入学した年だろう。
俺はというと、家の方針で学園に入らず家で勉強をさせられていたから、学園には通った事が無い。
「うん。通ってるけど、勉強についていけてなくて……」
「もしかして、アリス。勉強苦手なの?」
そう聞くと、アリスは頷いた。
「勉強にもついていけてないし、学園も楽しく無くてお父さん達に辞めたいって言ってるんだけど……」
「辞めさせてもらえないって感じだね。まあ、エルドさん達の考えとしては商会の事もあるだろうから、学園には出ていて欲しいんだろうね」
「それは分かってるんだけど……」
アリスはエルドさん達の考えは分かるが、学園が楽しく無くて行きたいと思えないと愚痴を零した。
「学園って人が沢山居るんだよね? アリスの人見知り、そこまで酷くないみたいだし、友達とかは居るんじゃないの?」
「……」
「……も、もしかして居ないの?」
地雷を踏んでしまったと思いながらそう聞くと。
アリスは俯き、「居ない。学園の外にも一人も友達居ない……」と悲し気に呟き、今にも泣きそうな表情となってしまった。
「ほ、ほら! 今日、俺と友達になったから友達は居ない事はないよ!」
落ち込むアリスに俺は元気を出してもらおうと、そう無理に声を大きくしていった。
「そうだよね。アルフ君はもう私の友達だから、一人も友達がいない人間じゃなくなってるもんね……」
俺の言葉に気を取り戻したアリスを見て、俺はホッと一安心した。
エルドさんの孫であるアリスを落ち込ませ、泣かせたなんて知られたらいくら俺でも怒られるだろう。
そう俺は安心していると、気を取り戻したアリスから「アルフ君は学園に興味はないの?」と聞かれた。
「う~ん。前は通ってみたいって気持ちはあったけど、今は無いかな? 師匠に魔法を教わって、エリスさんに剣術を習ってるから学園に通う必要は無いからね」
「学園に行かなくても良いアルフ君が羨ましい……」
既に学園に行きたくないと思っているアリスは、学園に通わない生活をしている俺を羨ましそうに視線を向けながらそう言った。
話しを聞いて、友達も一人も居なくて勉強にもついていけてない状況なら、多分俺もアリスと同じ気持ちになっていただろうな。
そう俺はアリスの気持ちを理解して励ましていると、食堂に師匠とエリックさんがやって来た。
「その様子だと、アリスはアルフ君と仲良くなれたみたいだね」
「はい。もう俺とアリスと友達です」
戻って来たエリックさんにそう言うと、驚いた顔をして「アリスに友達!? お祝いをしないと!」と叫んだ。
「お父さん大きな声で言わないでよ!」
「学園でも一人も友達が出来ないって、毎日悩んでたアリスに友達が出来たんだからお祝いものだよ!?」
「もう! お父さん、嫌い!」
アリスに友達が出来たと興奮していたエリックさんは、アリスのその言葉でピタッと体が止まった。
そして、バッとアリスに向かって頭を下げて「ごめんなさい!」と謝罪をした。
そんなエリックさんをアリスは、プイッと顔を背けて俺の手を取って食堂を出てしまった。
「アルフ君、ごめんね。私にはじめて友達が出来てお父さん興奮したみたいで……」
食堂を出て、訓練場へと移動して来たアリスは俺に謝罪をした。
「大丈夫だよ。エリックさんも悪気があってした感じじゃないしね」
「……それじゃ、迷惑じゃなかった? お父さんのせいで、私の事を嫌いになったり」
「いや、嫌いになんてなってないよ。エリックさんを見て思ったのは、娘思いの良い父親だなって事位だよ」
俺は自分の父親から能力が無いからと捨てられた事を思い出しながら、そうアリスに言った。
その後、アリスは俺が嫌いになってない事を確認して落ち着き。
食堂へと戻り、落ち込んでるエリックさんにアリスは近づき二人は仲直りをした。
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