第23話 【商会長の怒り・3】
翌日、俺は朝食を食べ訓練場へとやって来た。
今朝、俺の部屋に手紙が届いており。
その手紙には、今日は一人で訓練してるように書かれていた。
「……これは間違いなく、昨日の俺の話が原因だよな」
訓練前の準備運動をしながら、俺は昨日の事を思い出した。
「食堂でもその話題で持ちきりだったし、かなり大事になりそうな予感がする……」
いや、でもただ俺が追い出されたからといって、冒険者ギルドといざこざが生まれるなんて事は……。
「無いと思いたいな~。エルドさん、なんだか俺の事を特別に扱ってくれるからな……」
命の恩人と俺は特にそんな事は思って無いが、エルドさんは自分を助けた俺に対して色々としてくれてる。
仕事は用意するからと言われてずっと待っているが、今の所全く指示をされていない。
多分、あれは俺を紹介で雇ってくれる建前で言っただけなんだろうな……。
「……取り合えず、色々と考えてたら集中できないから一旦忘れて、訓練に集中しよう」
両手で顔を叩き、自分に活を入れて訓練を続けた。
そうして、その日は途中からちゃんと集中して訓練に身が入り、【土属性魔法】のスキルレベルが1上がった。
「はぁ~、一日訓練して疲れ切った後に入る風呂が一番気持ちいいな~……」
秘密の訓練場でも欠かさなかった風呂。
謹慎生活中やそれ以前は、特に風呂が好きでも嫌いでも無かったが。
家を追い出され、商会の寮で暮らすようになってからは好きになっている。
「あれ、師匠? どうしたんですか、食堂の前で立ってて誰か待ってたんですか?」
「アルフを待ってたんだよ。まだ飯に来てないって聞いたから、ここで待ってたんだ」
「えっ!? す、すみません。お風呂に入ってました」
「いいよ。俺が急に来たからな。それより、飯を食べた後時間はあるか? あるなら、アルフを連れて来るようにエルドさんから言われてるんだ」
師匠はそう言うと、俺は「飯を食べる前でも行けますよ?」と言った。
「いや、用事が直ぐに終わるか分からないから、先に食べ来るようにエルドさんが言ったんだ。それに、俺もまだ食べてないしな」
「……分かりました。エルドさんを無駄に待たせるのもいけませんから、食べに行きましょう」
それから俺は師匠と一緒に食堂に入り、おばちゃん達に料理を頼み夕食を食べた。
その後、食べ終わった俺は師匠と一緒にエルドさんの仕事部屋に向かった。
「すまんな、アルフ。突然、呼び出してしまって」
「アルフ君。こんな時間に呼び出してごめんなさい」
部屋に入ると、仕事部屋にはエルドさんとエリスさんが待っていた。
そして部屋に入った俺は、エルドさん達が座ってるソファーの向かい側のソファーに座った。
「アルフを呼び出した理由だが、今回の一番の被害者であるアルフには話しておこうと思って呼んだのだ」
「ひ、被害者って冒険者ギルドから追い出されただけですよ?」
被害者という言葉に俺は驚き、そう言うとエリスさんは「それが問題なのよ」と言われた。
「アルフ君も突然言われて驚いたと思うけど、本来冒険者ギルドではスキルの数で登録を拒否するなんて事は出来ないのよ。昔、それで一度騒ぎになって冒険者ギルドとしてはスキルの数で優劣を決めるのはしないという取り決めが出来たの」
「えっ、でもスキルが一つで俺は追い出されましたけど……」
「調べたら、それは受付の独断のようだったわ。普通の人は、最低でもスキルが三つあるけど、アルフ君は一つだったでしょ? 普通以下の人が来て馬鹿にしようと考えたんでしょうね」
そうエリスさんが言うと、話を聞いていたエルドさんは眉間に皺を寄せた。
「それで今回の出来事を踏まえて、ルクリア商会は会議を行った。現状、アルフと王都の冒険者ギルドには溝が出来ているのは確かで、儂等としては王都の冒険者ギルドを取るよりも、アルフの今後を考えた方が良いという結論に至った」
「えっ、それってどういうことですか?」
「言葉の通り、儂等は冒険者ギルドとの契約を切る事にした。今まではアレンが冒険者として活動をしているから、儂等もアレンや他の商会の者達が冒険者として活動をしているから契約をしていた。だがこの数年間見ていたが、特にギルドの改善も無く。アルフにそんな対応をした受付を雇っている冒険者ギルドと、儂は契約を続けたくないと思ったんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺が受付で酷い対応をされたからって、何か大事な事が決まってないですか!? 俺、別に馬鹿にされただけなので、そんな冒険者ギルド事態に処罰を下すなんて!?」
そう俺は立ち上がり、自分の気持ちを言った。
「アルフは優しいな……しかし、これはアルフのその優しさでどうにかなる問題ではない。商人の間では、王都の冒険者ギルドについて以前から問題視されているんだ」
「冒険者ギルドは冒険者の育成もまともにせず、傷だらけの素材を品質を偽ったりして商人に売りつけた過去もあるのよ」
「えっ、そんな事を冒険者ギルドがしたんですか!?」
「それがしたのよ。ルクリア商会も被害を被った商会の一つだけど、アレン君や他の商会の人達が冒険者としても活動をしているから我慢していた。だけど今回のアルフ君の一件で、我慢の限界が来たエルド様は完全に王都の冒険者ギルドとの契約を切る事にしたの」
その話を聞いた俺は、俺の予想よりも遥かに王都の冒険者ギルドは色々とやらかしていたんだなとそう感じた。
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