第24話 【商会長の怒り・4】
それにしても、俺のされた事を伝えただけで冒険者ギルドとの取引が終わってしまうなんて思いもしなかったな。
「それと別件の話だが、アルフは冒険者にまだなりたいか?」
「冒険者になろうと思ったのは、生活をする為に働く為に登録しようとしたんです。ですけど、今はこうしてエルドさんに雇ってもらっていますので、特になりたいとは思ってはいません」
「ふむ……儂としては、アルフにもアレンのように冒険者になって、その実力で世界を驚かせてほしいのだが。アルフがしたくないのであれば、仕方ないな……」
「俺としても、アルフには冒険者になってもらい。世界を驚かせてる姿を見たい気もするな……」
エルドさんと師匠は、俺が冒険者になるつもりはないというと、そんな風に自分の考えを言ってきた。
「別になりたいと思ってないだけで、冒険者に登録する事は嫌ではありませんよ。冒険者になった方がエルドさんの役に立ちそうですし」
「儂は別にお主に役に立ってほしくて、冒険者になってもらいたい訳では無いが……」
「まあ、いいんじゃないですか? エルドさんだって、アルフに過剰に与えてる所もあるんですから、お互い様だと思いますよ」
「それを言われると、なんも言えんな……」
師匠からお互い様と言われたエルドさんは、思う所もあるのか反論は出来なかった。
「取り合えずアルフには、儂の知り合いがおる冒険者ギルドで冒険者登録をさせようと思う。アレン、頼めるか?」
「はい、良いですよ」
「よし、アルフの事はアレンに頼んだぞ。冒険者ギルドについては、その間に儂等で進めておく」
そうエルドさんから言われ俺は、なんだかすごい事が決定してしまったなと部屋を出てからも思っていた。
その後、明日は冒険者登録をする為に隣街に行く事になったので早めに寝る事にした。
「師匠。今回もよろしくお願いします」
翌日、朝食を食べた俺と師匠は修行で使った馬車と馬を用意して、隣街に行く準備を整え。
エルドさんに見送られながら、俺と師匠は王都を出発した。
今回、行く予定の隣街は王都から大体馬車で三時間程の所にあり。
王都程では無いが、そこそこ栄えた街だ。
「着いたぞアルフ」
「はい!」
前回同様、馬車の中で【土属性魔法】の訓練をしていた俺は師匠の言葉に返事をして、荷台から顔を出した。
「ここが王都から一番近い街、ウィストの街ですか」
「ああ、治安も王都の次に良くて王都とは違って冒険者ギルドも腐ってない場所だ」
そう師匠から言われた俺は荷台に乗ったままでいると、街に入るために並んでる列とは別の方に師匠は馬車を向かわせた。
「師匠。街に入る列って向こうじゃないんですか?」
「アルフ。俺は冒険者の最高級ランクの冒険者だぞ? それなりの特権を持ってるんだよ」
師匠はニヤッと笑みを見せながらそう言うと、もう一つの入口の兵士に冒険者カードを見せた。
「アレン様でしたか、どうぞお入りください」
「ああ、待て後ろに俺の弟子も乗ってる」
師匠の冒険者カードを見た兵士は、直ぐに師匠を通そうとすると師匠は後ろに俺が居る事を伝えた。
師匠の言葉に俺は荷台から体を出して、身分証を取り出して兵士に渡した。
兵士は俺の身分証を見ると、慌てて確認をして「大丈夫です」と返してくれた。
「すみませんでした。いつもアレン様はお一人だったので確認を忘れてました。教えていただき、ありがとうございます」
「いいんだ。俺もアルフに前に出てるように言うの忘れてた。じゃあ、またな」
謝罪をしてきた兵士に師匠は言うと、馬車を動かして街の中に入った。
「さっきの人、師匠と仲が良さそうでしたが知り合いなんですか?」
「ん~、まあ知り合いと言えば知り合いだな。エルドさんの知り合いってこっちの街にも沢山居るから、それで俺もこっちの街に来る事が多いんだよ。それで来るうちにさっきの兵士と顔見知りになって、仕事が無い日にこの街に居たら一緒に飲むくらいには仲がいいんだ」
「師匠って、本当に仲いい人としかつるまないイメージだったので意外ですね……」
「大体はそうだぞ? 人とつるんでもいい事はあまりないからな」
師匠はそう言うと、少しだけ悲し気な表情をした。
多分、昔に人関係で何か問題が起こったのだろう。
師匠の隠したい過去に無理矢理入るのも失礼だし、これ以上は聞かないでおこう。
そう俺は思い、話題をこの街について師匠に色々と聞いた。
「この街についてか? アルフも気になったと思うが、どうしてこの街が王都並みに栄えているのか気にならないか?」
「気になります。王都から近いとはいえ、こんなに栄えるって事は何かあるんですか?」
「それはな、この街の冒険者ギルドが真面に機能しているからだよ。馬鹿な冒険者は追い出し、冒険者の教育もちゃんとしている。だから、この街は新人の冒険者にとっても好まれ。冒険者をきちんと育てる冒険者ギルドに信頼している商人も多く、そんな商人達がこの街を発展させて行ってるんだ」
師匠がそう言うと、確かにこの街には王都以上に出店等が並んでいるような気がする。
「冒険者ギルドが真面だと、街にそんな変化が現れるんですね」
「国が頑張って街を発展させようとしても、発展に一番力になるのは商人達だからな。そんな商人を蔑ろにした王都の冒険者ギルドは、商人達からの信頼も失い。王都から徐々に人が去っているのが現状だ」
そんな事を教えて貰うと、丁度この街の冒険者ギルドに到着した。
馬車を停める場所に置いた俺と師匠は、冒険者ギルドの建物に入る事にした。
「どうした。アルフ。入口で止まって」
「あっ、すみません。ちょっと、追い出された事を思い出してしまって……」
「そうか……ここのギルドは大丈夫だ。安心しろ」
建物に入ろうとした俺は、入口で足が止まってしまった。
一度、追い出された過去がある俺は自分でも気づいていなかったが、ギルドが苦手になっていたみたいだ。
そんな俺に師匠は声を掛けてくれて固まってる俺の手を握り、俺を建物の中まで連れて行ってくれた。
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