第22話 【商会長の怒り・2】


 訓練場へと移動して来た俺達一行に対し、訓練場を使っていた商会の人達は驚いていた。

 まあ、自分達の商会長とその商会でも一目置かれてる師匠が同時に来たら、驚くよね。


「さてと、アルフ。フェルガを呼び出せるか?」


「はい。大丈夫です。フェルガ。出て来て」


 師匠の言葉に俺は返事をして、フェルガに出て来るように念じると。

 俺達の目の前にフェルガは姿を現した。


「……フェンリルか?」


「はい。フェンリルのフェルガです。色々とありまして、俺の従魔になったんです」


「……フェンリルを従魔にした!?」


 俺の言葉を聞いたエルドさんは数秒間固まり、硬直が解けると出会って初めて聞くレベルの大きな声で叫んだ。

 そんなエルドさんの叫びに、周りで見ていた商会の人達もフェルガの姿をみて固まっていたのが解け、訓練場は騒がしくなった。

 あの後、エルドさんがその場を落ち着かせ。

 あのままあの場に居たら、騒ぎが収まらないからとエルドさんの仕事部屋に戻って来た。


「まさか、フェンリルを従魔化させて帰ってくるとは予想もしてなかったぞ……」


「偶々、従魔にしちゃったんですよね」


 そう俺は言って、エルドさんにフェルガを従魔化させた経緯を伝えた。


「成程、名付けをして従魔化させてしまったのか。普通、そんな事はありえないと思うが。アルフの加護の不自然さを見た感じ、神が介入した可能性はあるかも知れんな……」


 エルドさんは俺の話を聞くと、納得した様子でそう言った。

 それからエルドさんから、従魔を使役しているのなら冒険者ギルドで登録しないといけないと言われた。


「冒険者ギルドですか……」


「そう言えば、アルフは冒険者ギルドから追い出されたと言っておったな。あの時は、そこまで詳しい事は聞いておらんかったが何故追い出されたのか聞いても良いか?」


 初めて会った時、愚痴程度でしかエルドさんに話してなかった俺は、冒険者ギルドでされた事をエルドさんと師匠に話をした。

 登録をしようとしたら、スキル一つである事を大きな声で馬鹿にされ、その場に居た冒険者達からも馬鹿にされた事を話した。


「「……」」


 エルドさんと師匠は、俺の話を聞くと二人から怒りのオーラの様なものを感じ取った。

 そんな二人は視線を合わせると頷いた。


「アルフ。話し合いは今日はここまでにしよう。修行で疲れてるだろうし、今日は早めに休むんだぞ」


「は、はい? わ、分かりました」


 真顔で言ってくる師匠に、これは断ったらいけないと思ってそう返事をした。

 そして俺だけ仕事部屋から出て行くと。


「緊急会議を行う。至急、幹部達は儂の会議室に集まるように」


 と、放送が流れた。

 その放送を聞いた商会の人達は、何事だ? となり、急いで会議室に向かっていた。


「もしかして大事に発展しちゃうのか?」


 仕事部屋でのエルドさん達の表情は、明らかに怒っていた。

 俺は不安だなと考えながら寮の方へと移動して、部屋に戻る前にお風呂に入ろうと風呂場へと向かった。


「アルフ君。さっき幹部の人達が会議室に呼び出しされてたけど何か知ってる?」


 風呂から上がり、食堂に来ると食堂のおばちゃん達からそんな事を聞かれた。


「多分、俺が冒険者ギルドでされた事を聞いてから会議の招集の放送が鳴ったので、多分俺が原因かも知れません」


「冒険者ギルドでされた事? それって、私達も聞いても大丈夫な事かしら?」


「大丈夫ですよ。特に隠す様な事ではないので」


 そう言って俺は、食堂のおばちゃん達にエルドさん達に話した事と同じことを伝えた。

 すると俺の話を聞いたおばちゃん達は、「冒険者ギルドも落ちたわね」と冷めた表情でそう言った。


「昔はもっと良い所だったけど、最近の王都の冒険者ギルドは駄目ね」


「王都にある冒険者ギルドだから、頭に乗ってるのよ。自分達が偉いとでも思ってるんでしょうね」


 おばちゃん達は次々と冒険者ギルドの悪口を言うと、何かあったら俺の力になるからね! と言ってくれた。

 その後、おばちゃん達から「沢山食べて強くなるんだよ」と言われて、大盛りの食事を用意してもらった。


「ひ、久しぶりの食堂の料理だからって食べ過ぎたな……」


 最初の時点で大盛りを用意してもらった俺は、それと同じ量をもう一度食べた。

 その結果、食べ過ぎて苦しくなり部屋に戻ってきた俺は直ぐにベッドに横になった。


「フェルガも美味しそうに食べてたし、やっぱりおばちゃん達の料理は凄いな……」


 既に俺に従魔が居る事は商会の人達には伝わっていて、おばちゃん達もフェルガの存在を知っていた。

 なのでフェルガの分の料理も用意してもらい、フェルガも一緒に食事をした。


「あの者達の飯は本当に美味かった」


 食事を終えたフェルガはそう満足気に言って、今はもう寝ている。

 そうして俺も、苦しさが大分治まって来たので寝る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る