第21話 【商会長の怒り・1】
翌日、俺と師匠は洞窟の中の整理をして帰宅の準備をしている。
昨日の夜、飛び立って行ったクロだが、朝になっても戻ってこなかった。
多分、次の王を見つける事は出来なかったのだろう。
「最後、挨拶位はしておきたかったな」
「仕方なかろう。これが最後の別れでは無いから、また時間が出来たらくればよいしな」
「そうだね。それじゃ、フェルガも人に見られたら騒ぎになるから異空間に入っててね」
フェルガを異空間に入ってもらい出発しようと、師匠が馬車を動かそうとした瞬間、目の前にクロが「ズドンッ」という音共に現れた。
「ふ~、間に合った。久しぶりに全力を出したから疲れた……」
やれやれと疲れた表情をするクロ。
そんなクロに対して、俺は「もしかして次の王は決まったの?」と聞いた。
「話し合い中だ。だから、今回は見送りに来た。数日間、飯を作ってくれた相手に見送り位はしないといけんと思ってな」
「そっか、態々ありがとね」
見送りに来たクロに対して俺はそう言って、今度こそ馬車を動かして移動を始めた。
移動を開始して直ぐ、俺は行きのように【水属性魔法】の訓練ではなく。
秘密の訓練場で得た【土属性魔法】の訓練をする事にした。
正直、馬車で移動しながら【水属性魔法】の訓練は、揺れている馬車の中だとかなりきつい。
だけど【土属性魔法】なら、揺れている馬車の中でも訓練に集中する事が出来る。
「……アルフ。お主、訓練馬鹿だと常々思っていたが。まさかこんな揺れてる馬車の中でもしているのか?」
訓練に集中していると、脳内にフェルガがそう話しかけて来た。
「うん。だって、俺は強くなって師匠やエルドさんの役に立ちたいからね。今の俺は弱いから、強くなるには時間が足りないんだよ」
「ふむ……」
フェルガは俺の言葉に納得したのか、それからは俺の邪魔をしないように話しかけなくなった。
それから王都に着くまでの間、俺は【土属性魔法】の訓練を続けた。
「アルフ。この馬車は一応は商会のだから、その土は降りる時は片付けるんだぞ?」
「分かってます。ちゃんと綺麗に掃除しております」
荷台で訓練を続けてる俺を見て、師匠から注意をされた俺はそう言葉を返した。
その後、行きと同じように半日程かけて王都に戻って来た俺と師匠は、王都の中に入り真っ直ぐ商会へと向かった。
「さてと、多少汚れてるが。先に、エルドさんに戻って来た事を報告に行くか」
商会に着き、馬車の荷台を綺麗に掃除をした俺はそう言われて、師匠と一緒にエルドさんの所へと向かった。
「期日ギリギリだな。後一日、遅れていたら捜索隊を出す所だったぞ?」
エルドさんの部屋に入ると、エルドさんは少し怒った様子でそう言った。
「すみません。アルフの訓練が思った以上に進み、ギリギリまで訓練をしようと二人で話し合ったんです」
「ふむ……まあ、よい。無事に戻って来たのなら、怒る意味も無いからな」
エルドさんはそう言うと、笑みを浮かべた。
そんなエルドさんの表情の変化に対し、師匠は部屋に入ってからずっと緊張していたのが解け、安心した表情となった。
あの師匠でもエルドさんに対しては緊張するんだな……。
意外な一面を見た俺は、そう思っているとエルドさんから「成果がどれ程か見せてもらえぬか?」と聞かれた。
「はい。これが今のステータスです」
エルドさんから聞かれた俺は、直ぐにステータスをエルドさん達に見せた。
✤
名 前:アルフレッド
年 齢:16
種 族:ヒューマン
身 分:平民
性 別:男
レベル:10
筋 力:84
魔 力:175
敏 捷:59
運 :91
スキル:【経験値固定:—】【剣術:3】 【属性魔法(4):—】
【魔力制御:5】 【従魔:10】【調理:2】
加 護:Error
✤
「元々はスキルが一つだったのが、経った数日でこれだけ増えるとはな……」
「ちなみにエルドさん、アルフの属性魔法のレベルを見たらもっと驚きますよ」
「むっ? 属性魔法が統一されているな。という事は、複数の属性魔法を習得したのか?」
「はい。詳しく見せますね」
エルドさんは師匠の言葉にハッとした顔になり、俺はそんなエルドさんに属性魔法を詳しく見せた。
✤
水属性魔法:6
土属性魔法:4
火属性魔法:3
風属性魔法:2
✤
「四属性の属性魔法も驚くべき場所だが、最も驚く場所は【水属性魔法】のスキルレベルだな」
「今回の修行では【水属性魔法】の技をアルフに教え、その過程でレベルが二つ上がったんです。それとは別に、アルフが料理を覚えたいと言ったので自分で火が起こせるように【火属性魔法】と【風属性魔法】を習得させました」
料理を作る際、火を師匠に頼むのは悪い気がした俺は自分でも出せるようになりたいと師匠にお願いした。
そんな願いを師匠は聞き入れてくれて、【火属性魔法】とついでに【風属性魔法】の訓練方法を教えて貰った。
「ふむ……これだけの実力があれば、魔物狩りも出来そうだと思うが。レベルがそのままという事は、魔物狩りはさせなかったのか?」
「はい。俺が連れて行った場所の魔物は、アルフにとっては強敵なので取り合えずスキルの修行に集中させました」
そう師匠が言うと、エルドさんは改めて俺のステータスを見て、目が点になり「この【従魔】のスキルはなんだ?」と俺と師匠に聞いて来た。
「それについてですが、ここでは説明が出来ないので一緒に外に出てきてくれますか?」
師匠のその言葉にエルドさんは、不思議そうな顔をして頷き。
俺、師匠、エルドさんの三人は商会の訓練場へと移動して来た。
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