第9話 【師匠・1】
あれから俺は、エリスさんとエルドさんに連れられて訓練場からエルドさんの仕事部屋へと移動して来た。
なんでもエリスさんが鑑定道具を借りようとした際、エルドさんと偶々会って俺の属性の話になったらしく。
エルドさんも俺の属性が全属性だと聞いて、自分で確かめたいという事で一緒に来たと言われた。
「それじゃ、アルフレッド君。手を置いて、魔力を少しだけ流して」
「はい。分かりました」
属性を測る魔道具は〝鑑定石〟と呼ばれる物で、その石に魔力を流すと、その者の属性が分かる石だ。
鑑定石には等級があり、低い等級の物は一度使うと色がそのまま残ってしまうが、等級が高い物は何度も使う事が可能と本で見た事がある。
火なら赤色、水なら水色、風なら緑色、そのほかにも沢山の属性に通ずる色が石に現れる。
その中で最も特別な色は、何色にも染まらない白色。
「……白ね」
「……白だな」
そして俺が石に魔力を送ると、石は白色に変化した。
全ての属性を持つ者は限られた存在で、数十年に一人の天才と世間では言われている。
俺の場合は属性が希少でも、スキルがたった一つだけという理由で家を追い出されてしまったけどな。
「嘘を吐く者ではないと思っていたが、まさかこうして生きてる内に白色になる鑑定石を見るとは思わなかったの……」
「私も同じです。もしかしたら、何かの間違いだった可能性も考えましたが……ごめんなさい。少しでも貴方を疑ってしまって」
「い、いえ! 疑うのも仕方ないですから、頭を上げてください!」
頭を下げたエリスさんに俺はそう言って、頭を上げてもらった。
「それにしても、こんな才能があったとはな……家から追い出されたのが不思議に思う」
「両親や家の人は全属性よりも、代々受け継いできた【複合魔法】の方が大事だと思ってるんです」
「こう言ってはなんだが、馬鹿な考えを持ってる者達だな」
エルドさんは俺の家族の考えを知ると、そうハッキリとノルゼニア家の考えを否定した。
「あっ、そうだわ。この機会にスキルについて、エルド様に話したらどうかしら?」
「スキル? 確か一つだけスキルを持っておると言っておったが、そのスキルについてか?」
エリスさんに話したらどうと勧められた俺は、エルドさんに自分の授かったスキルについて話をした。
その内容を聞いたエルドさんは、俺の属性が分かった時以上に驚き、暫くの間考え込んでいた。
「エリスはどう思う? 才能次第だが、化けると儂は考えておる」
「エルド様、私も同じ意見です」
エルドさんとエリスさんは、そう言うとバッと同時に俺の方へと視線を向けた。
「儂は、お主の才能を開花させる為に協力しようと思う」
「えっ? ど、どういうことですか? 才能を開花させる為に協力って、今でも十分なほど色々としてもらってますよ?」
「今はただ、住む場所と働く場所を提供してるだけに過ぎん」
「い、いやこれ以上は受け取れませんよ!」
エルドさんの言葉に俺はそう言うと、エルドさんは下手な泣き真似をしだした。
「ふむ……お主がそう言うなら、仕方ないな。無理強いはできないからな……」
「そうですね。今回ばかりはエルド様と私のただの願望ですからね……うう」
「うっ……」
エルドさんの泣き真似を見たエリスさんは、同じように下手な演技を始めた。
お、恩人の人達にこんな泣き落としされたって、今回ばかりは……。
「……わかりました。わかりましたから! だから、下手な泣き落としはやめてください! 嘘ってわかってても、断り切れないじゃないですか!」
嘘泣き続けるエルドさん達に対し、俺はそう叫びエルドさん達の提案を受け入れる事にした。
「全く……今後は嘘泣きはやめてくださいよ」
「すまんすまん。だけどこれは、お主にとってもいい事だと思うぞ。強くなれば、妹の力にもなれるぞ?」
「……わかってます。でも、泣き落としは今回が最後ですからね。もし、次してもその時は絶対に断りますから」
そう俺はハッキリと伝えると、俺の強い意志が伝わったのか「そこまで言うのであれば、これで最後としよう」とエルドは約束してくれた。
その後、具体的な俺の才能開花についての話は後日する事になり、今日は解散となった。
解散後、エリスさんはエルドさんの手伝いがある為、魔法の訓練は流れてしまい、俺は訓練場に戻って来て剣術の訓練をする事にした。
「剣の握る感じ、昨日よりもいい気がする」
そう思った俺は、一旦休憩を挟もうとベンチに座ってステータスを確認した。
すると、昨日までは【剣術:0(16/100)】と表示されていたのが、【剣術:1(9/100)】とレベルが上がっていた。
「……0から1に上がってる。もしかして、俺は【剣術】のスキルを会得したのか?」
【剣術】のスキル効果は、剣の種類に関係なく使用していると、身体能力が強化されるという効果だ。
レベルが上がると、強化効果が上がり人間離れした動きも可能となると、剣術の本で見た事がある。
「でも、成程な剣を振ってた時に体か軽い感じがしたんだよな……何はともあれ、俺にも戦闘用のスキルが手に入ったぞ」
戦闘用のスキルを手に入れた俺は、これで無能卒業だと感じた。
しかし、よく考えてみると、普通であれば神様からスキルを授かる時に〝三つ〟のスキルを手に入る。
だけど俺はまだ二つしか、スキルを手に入れてない。
「まずは、最低三つだな」
俺は自分の目標を定め、取り合えず今日の所は【剣術】のスキルをもっと磨こうと、休憩を終えた後も剣を振り続けた。
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