第10話 【師匠・2】
そうして、エルドさん達との話し合いから数日が過ぎた頃、俺はエルドさんに呼び出しされた。
事前に指定された時間に、エルドさんの仕事部屋にやって来た俺は、俺の指導者となる人物と顔合わせをする。
事前の話し合いで、エルドさんは知り合いに一人だけ俺の事を頼めそうな人が居ると言っていた。
「き、緊張してきた……」
エルドさんが用意した指導者という事は、それなりに実力のある人だと思う。
なんていったって、エルドさんはルクリア商会の会長だ。
知り合いも多分、俺の予想を遥かに超えてくる人物だろう。
そんな人の貴重な時間を俺の為に使って貰うなんて、俺はやっぱりあの時しっかりと断っておけばよかったと少し後悔した。
「そこまで緊張しなくても大丈夫だぞ?」
あまりにも緊張している俺を心配に思って、エルドさんはそう俺に声を掛けてくれた。
エルドさんの心配する声と同時に、部屋の扉をノックする音が聞こえ、俺はビクッと反応した。
そして扉が開いて外から入って来た人物に、俺は立ち上がり扉の方を向いて頭を下げた。
「は、初めましてアルフレッドと申します」
190㎝はありそうな高身長に、体つきもガッシリとしていた。
この辺では珍しい黒髪黒目で、長い髪を後ろで束ねていて、目つきはかなり鋭かった。
「ふむ……エルドさんが言ってた意味が何となく、分かったよ。こいつ才能の塊だな」
「ほほう。お主がそこまで言うとは、やはり凄い逸材のようだな」
男性が俺の事を褒めると、エルドさんは自分の事の様に笑みを浮かべながら嬉しそうにそういった。
「俺の名はアレン・バルザール。白金級冒険者だ。よろしくな、アルフレッド」
「は、はい。よろしくお願いします。アレンさん!」
……って、ちょっと待てよ?
白金級って冒険者の中で一番上のランクだよな?
それにアレンって名前、どこかで聞き覚えが……。
「も、もしかして〝黒衣の魔導師アレン〟さんですか!?」
「……アルフレッド。初めてだから許すが、その名ではもう二度と呼ぶな?」
アレンさんの二つ名を口にすると、俺は睨まれながらそう言われた。
そ、そう言えば、本人はこの名前を気に入ってないって噂も聞いた事がある。
「アレン。そこまでにするんだ。アルフレッドが怖がってるぞ、今日から仲良くやっていかないといけないのに早速、溝を作るつもりか?」
エルドさんはアレンさんに対して注意すると、アレンさんは俺に対して謝罪をした。
それから俺達は立ち話を続けるのも変だろうと、全員ソファーに座った。
「エルドさんとアレンさんとはもどういう繋がりなんですか? その、凄く親しい感じだったので」
「アレンは、儂がお主の前に拾った子なんだ。あの時は、アレンが死にそうになってる所を儂が助けたから、出会った時の状況は反対だけどな」
「その節は本当に感謝してます。あの時、エルドさんに拾われなければ今の俺は無いです」
アレンさんはそう口にすると、チラッと俺の事を見てエルドさんに視線を戻した。
「エルドさんが死にそうになったと聞いて、相当焦りましたよ。何で護衛を付けてないんだって……でも、その原因が串肉だと聞いて、本当に呆れましたよ」
「歳には勝てん、昔は何本でも食えたのに……」
エルドさんは悲し気にそう言うと、アレンさんは俺の事をジッと見つめて来た。
「さっきも言ったけど、お前は才能の塊だな。ここまでの才能の原石は見た事がない」
「あ、ありがとうございます。その、でも俺はスキルを一つしか貰えず家から追い出されたので、そんな才能の塊なんて……」
「それはお前の家が馬鹿なだけだろう。エルドさんから話は聞いてるが、お前のその唯一授かった能力は唯一無二のスキルだと俺は思う。俺はこれまで沢山のスキルを見てきたが、お前の持つスキルと似たようなスキルは見た事がない」
「それに……お前、神の加護も持ってるだろ?」
アレンさんの言葉に俺は驚くと、隣に座っているエルドさんも「そうなのか?」と驚いて聞いてきた。
「俺は、人の能力の一部を見抜くスキルを持ってる。それでお前を見たら、加護を持ってると分かったんだよ」
アレンさんは続けてそう言ってきたので、俺はここが話すタイミングだなと思って、加護についてエルドさん達に話す事にした。
話を聞いたアレンさんは首を傾げていたが、俺のステータスを見せると驚いていた。
「本当にない……隠蔽系のスキルがあるとかじゃないよな?」
「俺の持ってるスキルは、【経験値固定】と【剣術】の二つだけです。他は何も持ってません」
「……マジか」
アレンさんは俺の話を聞いた後、少し混乱していたので落ち着くまで俺とエルドさんは待つ事にした。
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