第8話 【今後について・4】


 一時間程、昨日と同じように剣術の訓練をしていると、訓練場に人がやってきた。

 遠くから声を掛けられ、集中していた俺はその人の方を見ると、声を掛けて来た人物はルクリア商会副会長のエリスさんだった。


「エリスさん、おはようございます」


「アルフレッド君、おはよう。今日はお休みだから、少し運動しようと思ってね。剣術の訓練をしてたの?」


「はい。少しでもエルドさんの役に立ちたいので、まずは力を上げようかと思いまして」


「そうなのね。それなら、剣術の訓練相手に私がなってあげるわ。こうみえて、剣術は得意なのよ?」


 エリスさんからそう言われた俺は、「本当ですか!? よろしくお願いします」と言って剣術の稽古をつけてもらう事になった。

 それからエリスさんはまず、剣術の勝負の前に俺の構えを見てくれるとエリスさんは言ってくれた。


「……意外と基本がシッカリしてるわね。誰かに習っていたの?」


「特には? 兵士の訓練とか偶に見てましたが、実際に剣を振り始めたのは昨日からです」


「そうなの? 結構、シッカリと触れてて初心者にしては凄く筋が良いわね」


 俺の動きを見たエリスさんはそう言うと、それから少しだけ準備運動をすると模擬試合をする事になった。

 軽く打ち合う感じだとは言っていたが、エリスさんから学ぶべき所は沢山あるだろう。

 俺は少しでも強くなる為に、エリスさんの動きをしっかりと見よう。

 そう思いながら、俺はエリスさんとの模擬試合を行った。


「ハァ、ハァ……エリスさん、本当に強いですね」


「ふふっ、こうみえて剣術は得意なのよ。それにしても、アルフレッド君も中々、良い動きだったわよ。初心者なのにかなり動けていたし、何より試合が終わるまで体力が持つなんて凄いわね」


「ありがとうございます。体力だけは、自信があります」


 エルドさんやエリスさん達には、既に俺が元貴族で〝ノルゼニア家〟出身という事は伝えている。

 そしてつい先日まで謹慎生活を送っていた事も伝えていたので、エリスさんはそんな俺がこんなに体力がある事に驚いていた。


「でも、エリスさんも体力ありますよね。試合が終わったのに全然、息切れ一つしてないですよね」


「元々、森で暮らしていたからこの程度で体力が切れる事は無いわよ。アルフレッド君も体力強化したいなら、暫く森で暮らす事をお勧めするわ」


 そう言えば、エリスさんはエルフ族だった事を思い出し、俺は「いつか試す機会があったら、やってみます」と言葉を返した。

 その後、休憩をする為、ベンチに移動してくるとエリスさんは食堂からお茶を持ってきてくれた。

 俺はお礼を言って、お茶を受け取った。


「それにしても、アルフレッド君の剣の動きかなり良かったわね。本当に昨日、初めて剣を触ったの?」


「はい。初めて触ったのは昨日ですが、もうスキルを獲得しているのでそれのせいかも知れません」


「……えっ? もうスキルを獲得したの?」


 エリスさんは俺の言葉を聞くと、驚いた顔をして固まった。

 まあ、誰だってエリスさんの様な反応をするだろうな、スキルを獲得するにはあまりにも期間が早すぎるからな。


「本当は家で、剣術の訓練をしていたのかしら?」


「いえ、俺の家は魔法系の家だったので軽い運動はさせられてましたけど、剣を持つことは無かったです」


「……それなら、どうやってこんな短期間でスキルを手に入れたの? 普通はこんな速さでは獲得出来ないのよ」


「知ってます。そのスキルが手に入った理由なんですが、俺の唯一持っていたスキルが原因だと思うんです」


 俺はそう言って、スキルの名前とどんな効果なのかエリスさんに話した。

 エリスさんはスキルの効果を説明すると、「それ本当なの?」と真剣な顔で聞いてきた。


「能力がどんなのか、俺自身もまだ完全には分かっていません。でも、昨日から検証して分かった事です。エルドさんにはちゃんと分かるまでは時間の無駄になってしまうので、報告はしてなかったんです」


「……ねえ、そのスキルの力がどうか試したいのだけど、良いかしら?」


「試すですか? どうやって、試すんですか?」


「今から、私が魔法を教えるわ。その力が本当なら、本来習得するまでかかる時間より短期間で習得出来るはずよね」


 エリスさんの言葉に今度は俺が驚き、「魔法を教えて下さるんですか?」と聞き返した。


「ええ、こうみえて私は魔法も得意なのよ」


「それなら、是非お願いします!」


 俺はエリスさんの言葉にそう返事をして、早速エリスさんとの訓練を始めた。

 訓練の内容だが、まずは俺が習得が可能な属性を調べるとエリスさんから言われた。


「エリスさん、それなら大丈夫ですよ。俺、自分の属性知ってるので」


「そうだったわ。貴族は幼少期に、子供の属性を図るのが基本だったわね」


「はい。結局スキルとして現れなかったので、鑑定が間違いだったと思われてましたけどね」


 スキルとして何一つその属性魔法を手に入れられなかった俺は、属性が分かった時と比べて凄い対応の違いを受けた。


「それで貴方の属性は何かしら?」


「全属性です」


「……え?」


「全ての属性魔法に適性があります」


 当時、この結果を聞いた家族は「ノルゼニア家の最も優れた魔法使いになるかも知れん」と言い、親戚中に俺の話をしていた。

 それからエリスさんは、曖昧ならもう一度鑑定をしましょうと言い。

 エリスさんは鑑定の道具を持ってくるから待っててと言って、訓練場から出て行った。

 それから数分後、エリスさんはエルドさんと一緒に戻ってきた。

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