第7話 【今後について・3】
「夢じゃなかったか……」
俺は周りを確認して、謹慎させられていた部屋ではなく寮の部屋だと気づくとホッと安心した。
「……なんか安心したら、一気にお腹が減ったな」
安心感と共に空腹が俺を襲い、俺は部屋を出て食堂に向かった。
すると、昨日の夜とは違い沢山の人が居て、朝食を食べていた。
「あら、おはよう。よく眠れたかしら?」
「はい。ご飯を食べた後、すぐにぐっすりと寝てました」
「ふふっ、寝る子は育つって言うものね。まだまだ成長期なんだから、無理しちゃ駄目よ」
おばちゃんはそう言いながら、朝食を用意してくれた。
用意してくれた食事を俺はお礼を言って受け取り、て席に座りに行った。
昨日とは違いかなりの人が居て、空いてる所は少なかったがなんとか座る事が出来た。
「朝ご飯も美味しそうだ……」
こんな美味しそうなご飯を二食続けて食べたのなんて、二年も前の事だ。
そう思った俺は昨日と同じく目に涙を少し浮かべ、人に見られる前に涙を拭いてご飯を食べ始めた。
朝食後、運動用の服に着替えようと部屋に戻ってくると、部屋に手紙が届いていた。
「エルドさんから?」
手紙の主はエルドさんだと気づいた俺は、すぐに封を切り中を見た。
すると、俺の会員証と一つの手紙が入っていた。
その手紙には、朝食を食べたら部屋に来るようにと書かれていた。
「朝には無かったって事は、俺がご飯食べてる間にこの手紙が来たんだな。急いで、準備していかないと」
俺は直ぐに部屋の扉を閉めて、寮から商会の建物の方へと来て、エルドさんの仕事部屋に向かった。
もしかしたら人に止められるかもと思ったが、先に通達されていたのか特に止められる事は無かった。
そして部屋に着いた俺は、ノックをするとエルドさんの声がして扉を開けて中に入った。
「すみません。遅れました!」
部屋に入った瞬間、俺はエルドさんに頭を下げて謝罪をした。
「そんなに遅れておらんから、そう慌てるでない」
俺の行動に対して、エルドさんはそう優しく言ってくれた。
そして俺は顔を上げて改めて部屋の中を確認すると、エルドさん以外にこの部屋に人が居る事に気づいた。
その人はエルドさんと同じ歳頃の女性で、優しそうな顔で俺の方を見ていた。
「貴方が主人が言ってた子ね。初めまして、私はシエナ・ルクリア。エルドの妻よ」
「エルドさんの奥様!? は、はじめましてアルフレッドと申します」
俺は「もしかして……」と思っていた予想が当たり、すぐに頭を下げて挨拶を返した。
すると、シエナさんはそんな俺に「礼儀正しい子ね」と優しく微笑みながらそう言った。
それから俺はエルドさんから、座るように言われ部屋のソファーに座った。
「アルフレッド君。まずは、主人の事を助けてくれてありがとう」
「い、いえ。当然の事をしただけですから」
「その当然の事が出来ない人が多い中、貴方は動いてくれたのよ。主人から聞いたわ、他の人は無視してる中、アルフレッド君だけがすぐに動いてくれたと。もしアルフレッド君が居なかったら、今頃串肉で死んでいたかもしれん、と言っていたわ」
「うむ。あの時、他の者にも助けを求めたが誰一人として止まらなかったからの、そんな中お主だけが動いてくれたんじゃ」
確かにあの時、俺以外の人もエルドさんの事に気づいていたけど誰も動こうとしてなかった。
……ってか、今気づいたけど、エルドさん何か顔が腫れてないか?
そう思いエルドさんの事を見てると、エルドさんは悲しそうな顔をして「この顔は気にするな」と言った。
「大丈夫よ。この人の顔が腫れてるのは、私との約束を破った罰だから誰かに襲われたとかではないわ」
「は、はい」
シエナさんは冷めた視線でエルドさんを一目見て、そう言い切りその言葉の圧に俺は返事をする事しか出来なかった。
それから、エルドさん達は俺を部屋に呼んだ理由を説明してくれた。
「昨日で手続き自体は終わったんだが、シエナがどうしてもお主と会いたいと言ってな」
「主人の命の恩人に対して、挨拶も無しは失礼と思ってね。それにこれから、商会で働く子でもあるんだから一目見ようと思ったのよ」
「そうだったんですか、もしかして昨日勝手に訓練場を使った事を怒られるのか少しだけドキドキしてました……」
俺は昨日の事を思い出し、勝手に訓練場に入って勝手に道具を使った事を怒られるのかと思って内心心配していた。
「そんな事で怒る事はないぞ? それに訓練場は、商会の者達が体を動かすスペースとして用意してあるんだから、お主も使いたい時に好きに使ってよい」
「ええ、そうよ。アルフレッド君はもう私達の商会の仲間なんだから」
そう俺はエルドさん達に言われて、ホッ安心した。
そしてエルドさん達は本当に呼び出した理由が、俺とシエナさんの顔合わせだけだったのか、この場は解散する事になった。
解散後、俺は特に仕事を持たない身分なので昨日と同じく訓練場へとやってきて、俺の持つスキルがどんな効果なのか更に調べる事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます