第46話 リエルスターリゴスゴメール 3
ボクはジェニ-にゆっくりと話しを切り出した。
あの大聖堂の地下に囚われているものの正体を。
「実は驚かないで欲しいんだけれど…」
「うん?驚く…って何?」
「ボクが大聖堂にいた秘密だよ」
『リリスが大聖堂に…この国に居た秘密…?』
ジェニーが小さく呟く声が聞こえた。
(何か情報をもっているのか…不可解な娘だからボクの知らない事情を知っている可能性もあるが)
ボクは素知らぬフリをして話しを続けた。
「実はあの大聖堂の地下の結界に囚われているのは――『魔王』なんだ」
「ま、魔王…?」
不思議な事だが、やはり
(やはり…この娘は変っている)
少なくともこのデルヴォーにおける一般的な貴族の娘の考え方では無い。
肝の据わり方も、普通の娘とは違っている。
ジェニーはボクに確かめるように質問をした。
「本当に本当の『魔王』…?」
「本当に本当の『魔王』なんだ…今代の魔王だよ。人間に擬態しているはずだけどさ。でも完全体じゃない。彼女の本体の身体と魔力を含む魂の半分だけが、大聖堂の地下に囚われている」
不思議な事だが『魔王』の存在も、何故ボクが此処にいるのかも瞬時に彼女は察している様だ。
「あの、半分って…どうして半分なの?」
ジェニーは続けてボクに訊いた。
ボクは簡潔に答えた。
「ボクが『皆に見つからない為に半分にしろ」って言ったから」
ーーーーー
『何故魂(魔力)が半分になっているのか?』
それは――ボクがそのやり方を炎竜ロンデリルギゼに教えたからだ。
その為、炎竜ロンデリルギゼのまま人間に擬態したとしても、あまりにも大きな魔力故、帝国内の勘の良い――例えばあの目障りな
その為、半分以下の魔力を別の身体に一時的に移し、残りは見つからない様に隠しておく――という方法を教えたのだ。
方法としては、あまりスマートとは言えない。
けれど、『魔力を消す』という高等技術が出来ない不器用なロンデリルギゼには、単純な方がやりやすいだろうと彼女にボクが教えたのだ。
ただ幾つか――問題がある。
分割した魔力にあった
あまり長い間は、魔力分割できないということだ。
長期間魔力を分けておくと、別れた魔力が元の魔力と同じものと認識できなくなる。
ジェニーはその話を聞いて絶句していた。
(まあ、その反応は当り前だろう。ただの人間には何を言っているのかすら分からないだろうから)
するといきなりジェニーは思い出したかの様に大きな声を上げた。
「あ!……そっか…!」
「…そっか?」
「あ…ううん。ゴメン、何でもない」
ジェニーはボクの問に慌てた様にまた口を噤んで、そのままぶつぶつと独り言をいいながら石の様に動かず何かを思い出そうとしている様だった。
「ああ…そっか、そーだ、あったわ。そんなイベントが…」
『もしや話の処理が追いついていないのか?』と考えたボクが
「ジェニー?頭バグってない?」
とボクが声をかけると、ジェニーは顔を上げた。
「ああ、うん。大丈夫だけど…」
と一人頷いてから、ジェニーは改める様にボクへと尋ねた。
「じゃあ、残りの半分は…人間に擬態した『魔王』の半分は、
「まさにそれさ。擬態の身体が…今どこにいるのかが分からないんだよ」
ボクは言った。
「誰が擬態の身体を隠したか、そしてその身体が何処にあるのか分からないんだよね~」
大体の予測はついているが、ボクがこの帝国の人間と直接関わるのは避けたい。
これが大事の火種になる可能性があるからだ。
もう一つ、二つ懸念材料はあるが、ボクにとっては、とりあえず『ロンデリルギゼが不夜城に戻って来る』事が、第一重要案件だ。
すると、ジェニーはロンデリルギゼの擬態した容姿を訊いて来た。
確かにそれが分からなければ、彼女を捜しようがない。
ボクはそれを彼女に教えると同時に、今回、ジェニーに逢いに来た裏の目的を伝えた。
「…だからさ、帝国側の、こっち側の人間…ジェニーにも手を貸して欲しいんだよね」
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