第29話 絶対お家騒動だよね?乙女ゲーム 7
*15Rになります。嫌な方お気つけ下さい。
「殿下に是非お聞きしたい事がございますの。ローゼリット嬢の事ですわ」
羽織っていたマントのフードを下げながら、
『もしや殿下はローゼリット嬢の行方を知っているのでは無いのですか?』
とベアトリスが尋ねたその時――。
ベアトリスはルートヴィッヒと目がしっかりと合ってしまった。
「…彼女を愛しているのですか?」
図らずもその言葉を出してから、ベアトリスは自分が声にした質問の意味に気づいて思わず口元を押さえた。
「い、いえ、そうではなくて...」
ルートヴィッヒの薄いブルーの瞳が少し驚いた様に見開かれている。
(違う…これじゃただの嫉妬深い女になってしまうじゃない)
――違う。
こんな事が聞きたかったわけでは無い。
ローゼリットの行方が気になってここへと来た筈なのだ。
『ここが学園であれば良かったのに...』
自分が会長として彼に接して注意をする立場だったら、もっと冷静になって話しが出来た筈だった。
唇を噛みしめながら、自分の心の葛藤に弄ばれ立ち尽くすベアトリスを、ルートヴィッヒはじっと見つめていた。
「あの殿下...も、申し訳ありません。わたくし、いきなり失礼を…。また後日改めてお伺いいたしますわ」
ルートヴィッヒの視線に気付いたベアトリスは慌てて顔を反らした。
慌ただしく部屋を退出する為に身をひるがえそうとした瞬間、ベアトリスはルートヴィッヒに手首をしっかりと捕まえられてしまった。
そのままソファから立ち上がった彼の近くまでグイと引き寄せられる。
「…驚いた。ただの女のような事を言うんだな」
彼はベアトリスを抱き締めながら彼女の耳元で囁いた。
ビクリと身体を強張らせたベアトリスはルートヴィッヒから離れようとしたが、反対に強く彼に抱きしめられてしまった。
幼い頃と違って、ベアトリスがどんなに力を入れても彼の手はビクともしない。
「あ、あの、殿下...お放しいただきたいのですが...」
するとルートヴィッヒはそのまま顔の横でクスクスと笑った。
「いつも冷静な君がこんなに慌てているのを見るのは面白い」
ベアトリスはいきなり自分の顔が紅潮するのが分かった。
「――……か?」
「なんだ?」
小声で呟いたベアトリスの声が聞き取れなかったルートヴィッヒは、聞き直した。
「…ただの女とはどういう意味ですか?」
ベアトリスは、半分涙目で睨みながらルートヴィッヒをきっと見上げた。
「わたくしはただの女です…最初から。
なんて残酷な
自身の言葉に興奮したベアトリスは、ルードヴィッヒのガウンに摑まり思い切り体重をかけた。その勢いもあって自然ソファに倒れ込んでしまった。
「…で、殿下…申し訳ありませ…」
ルートヴィッヒの真上にのってしまった事に気づいたベアトリスは、慌てて、ルートヴィッヒの身体の上から降りようした。
けれどその時、ベアトリスの勢いと行動に目を丸くしていて本当に驚いているルートヴィッヒを見て、彼女は幼い頃の色々な事を思い出してしまった。
ヒューゴ、エアリスらと計画した子供達だけのルートヴィッヒの誕生日のサプライズパーティー。
意地悪な家庭教師にみんなでイタズラをして、それぞれの親に怒られたこと。
妖精を見た湖の帰りに、離れがたくて二人で手を繋いで皇宮まで帰ってきたこと。
(どうして…『ルー』とわたくしはこんなに遠くまで離れてしまったの?)
ベアトリスはそのままよく考えもせずルートヴィッヒの唇に自分の唇を重ねた。
「痛ッ!」
『ガチン』何かがぶつかる音と衝撃があり、今度は二人でソファの下に転がってしまった。
片手でベアトリスを庇いながらソファの下に転がったルートヴィッヒは、腕の中の彼女を見下ろした。
「…ベアトリス。勘弁してくれないか」
もう一方の手で口元を押さえて言った。
ベアトリスのキスの勢いで前歯がぶつかったのだ。
彼女は真っ赤な顔を両手で隠しながら泣いていた。
「...ふ、っあ...あ、ひっく、ごめん、なさっ...」
子供のように泣く彼女の唇も少し切れて血が滲んでいる。
毛足の長いラグに転がった勢いで飛ばされたグラスのワインが染みをつくっていた。
ルートヴィッヒは真っ赤な顔で泣くベアトリスに顔を近づけ、その切れた唇に滲む血を舌先で舐めた。
「…ベアトリス、口の中は?大丈夫だったか?」
ベアトリスは両手を顔から離し、涙に濡れた瞳でルートヴィッヒを見ながら、手を上げた。
そして、そのままルートヴィッヒの顔と唇に指先でそっと触れた。
「ひっく…ごめんなさい。ルー、ぶつかっちゃった…痛かった?…」
「...」
ルートヴィッヒはそのまま彼女の唇に自分の唇を深く重ねた。
そのまま自分の舌を入れて、ベアトリスの口腔内を時間をかけて味わう。
顔を反らして逃げようとするベアトリスの耳にキスをして耳朶を軽く噛むと、ドレスの前ボタンを外して首筋、鎖骨と吸っていった。
コルセットで寄せなくても盛り上がるベアトリスの白く豊かな双胸を両手で丁寧に撫であげてからじゅうっと強く吸うと、彼女の唇から切なげな吐息が漏れた。
ホックを外したコルセットを少しずらして両胸の先を摘み、繊細なレースのシュミーズの上から強めに歯を立てる。
「ひ、…ぁあっ…」
ベアトリスがいままでルートヴィッヒの聞いたことのない声をあげて仰け反った。
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ベアトリスは終始ルートヴィッヒの背中にしがみついてはいたが、一度我に返ったルートヴィッヒが、はっと一瞬身体を離そうとした。
「...ルー、いや、お願い...離れないで」
今度は彼女がルートヴィッヒの耳元で甘く囁いた。
「ルー…このままわたくしのほくろを見つけて…それから…」
コルセットを崩し、ガーターを付けたままの足をルートヴィッヒの腰に絡ませるベアトリスの囁く息は、熱くどこまでも扇情的だった。
「…わたくしに触れて…もっと奥にきてくださいませ」
いつもの『淑女』らしからぬベアトリスの言葉を聞いたルートヴィッヒは、もうベアトリスの中に深く深く沈む事しか考えられくなったのだ。
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