詐欺ハガキが届いたよ。

鳥路

ポストにあった例のアレ

どうも、鳥路です。この短編エリアでは二回目ですね

金に関わる問題に関わりやすいというのは本職の性質だと言い聞かせたいのですが、小学生の頃に一度詐欺に関わる日があったのです


また詐欺かって?

詐欺に巻き込まれやすいのも残念ながら血筋みたいでしてね。あはは


「まあ、血筋というのは自分が把握しているそれではないようなんですがね・・・」


僕のせいで判明してしまった悲しい事実が一つあったりします

実は母方の祖父母は二人共O型だったりします

ちなみに僕はAB型。母も僕と同じでした


「・・・姉みたいにA型であれば、父の血筋だよって誤魔化せたのですがね」


母方の祖母が生きている間は、僕の血液型は秘密だったりします

流石に八十過ぎた祖母を困らせることは言いたくないですからね


「僕がいなければ、母は何も気にせず祖父母と「血が繋がった親子」をやれていたと思うのが申し訳ない・・・」


けど、血液型が原因でその事実を小さい頃から知って、親に頼まれて血液型を話すなと、バレないように気を遣うことになったのはしんどかったです

・・・あれ?こっちの方が墓場まで持っていきたい話らしい?

そうかもしれませんねぇ


「さて、前置きはここまでにして、そろそろタイトルのお話をしていきましょうか」


今回の話は誰にも信じてもらえない不思議な話

偶然に偶然が重なって、変な方向に突き進んだ話をさせていただきます


「これは僕が小学一年生の時のお話です」


・・


ちょっとオンボロ気味のアパート

そこが、僕たち一家が住んでいる部屋がある場所です

とある条件が揃った学校帰りの僕には、ある仕事がありました

ポストの郵便物の回収です

アパートのポストは口が上に大きく空いた横開きタイプ

周囲の同世代は中間ぐらいの階層に住んでいたので、普通に郵便物を回収できていたのですが・・・


残念ながらうちがある階は上層

とてもじゃないですが、小学一年生の子供が普通に背伸びしたって届くような高さではありません


しかし、これがあれば話は別です

傘の持ち手をポストの口に入れて、扉を開ける

そして持ち手を使って郵便物を落とす

そう。この仕事をこなせるのは「傘を持っていた日」

その日も同じように傘を使って郵便物を落としました

そして僕はそれを拾い上げてしまうのです


「・・・なにこれ」


ハガキの宛名は母の名前

そして中身は・・・


・・


家に戻って開口一番、僕はインターネットを見ていた母にハガキのことを聞きました


「おかあさん」

「なあに」

「なんかわるいことしたの・・・?」

「は?」


今でもあのワードはぎょっとしたと言われていたりします

あの日拾い上げたハガキには母が訴えられており、裁判所に出廷するように書かれていました


「ちょっとあんた、何言ってるの。お母さんそんな事してないよ」

「だってはがきに、さいばんにでろって」

「さいばんっ!?」


ハガキを渡し、母に内容を確認してもらいます

しかし母はそれを一瞥して、近くに置きました


「大丈夫よ。お母さん何もしてないから。悪いことしてない。泣かなくていいから。ね?大丈夫大丈夫」

「だって、うったえられてるって。おかねはらってって・・・」

「悪いことしてないのに訴えられるわけがないでしょう?」

「うん」

「だから、ここの・・・お金も払う必要ないでしょう?てか払ってないし」

「うん」

「はがき見てびっくりしたね。大丈夫大丈夫。ほら、ランドセル置いておいで」

「ん」


母に大丈夫と言われながら、僕はランドセルを部屋に置きにいく

手を洗って再び母の元に戻ります


しかしやはり話の話題はハガキになるわけです

不安と疑問は消化しろ

幼くとも、いや幼いからこそ・・・その考えが深かったのかもしれませんね

まだ「なぜ」「どうして」と聞くような年頃です

母は僕が疑問に感じるハガキの話題から逃げられませんでした


「でも、なんでそんなはがきがきたの?」

「・・・間違いじゃないかな」

「でも名前お母さん」

「・・・なんでお母さんの名前知ってるの?」

「お父さんが言ってた。かんじかけないけどよめる」

「・・・」

「で、お母さんにはがきがなんでとどいたの?わかんない?」

「・・・多分詐欺。わかる?オレオレ。そのハガキ版」

「なんでさぎだってわかるの?」

「前も一回こんなのが送られた事があるから」


「・・・こんきょ」

「なんでそんな難しい言葉使ってくるの・・・。まあ、身に覚えはないから」

「それはこんきょにならない。きちんとしたの、ていじもとむ!ぷりーずしょうこ!」


机をペシペシ叩きながら母に抗議します。討論は机を叩くところから始めるのです


「・・・」

「・・・さぎなら、おなじものがあるかも」


母の膝に滑り込んで、母の膝をペチペチと何回か叩きます


「インターネット」

「はい」

「うって。さぎはがき。さいばん」

「はい・・・」


しかし残念ながら英字入力のまま


「・・・」

「その目はやめなさい・・・あんたのその目怖いのよ・・・打ち直すからちょっと待って・・・これでいい?」

「さんくす」


マウスの操作は幼稚園でやったのでわかります

僕は画像検索で出てきたものと手持ちのハガキを見比べて、同じものを探し当てました


「おなじのある」

「ほら言ったでしょ」

「お母さんむざい。おめでとう」

「最初から無罪だってば・・・」


最後まで疑ったのは申し訳ないとは思っています

悪い人は嘘を吐く

そんな偏見がなぜかあったので、自分の中で確証を得るまで、母を信じられませんでした


「ふむ」

「どうしたの。あんた安心した?」

「した」


母が何もしていないということを納得できたのは結構大きくて、甘えるように膝にすり寄る

母の膝は今でも最高なんですよね

世界で一番安心できる場所と言われたら膝の上だと断言してもいいですよ


「でもなんでこんな難しい漢字読めたの・・・裁判とか、出廷とか」

「なるほど」

「なるほど?」

「お父さんがレイ○ンみたいにあたまつかうかんじだから、かってきたあれ。逆○裁判」


基本的に我が家はお父さんがゲームを買ってきて、僕にやらせていました

僕は子供の頃、体力がなくてあまり外に出たがりませんでした・・・今もそうですけど

それに昔は今以上に風邪も引きやすかったですしね

姉が近所の友だちと遊んでいる後ろで、家でできるゲームとか読書、人形遊びにお絵かきに・・・とにかく一人で遊ぶことばかりやっていました

その中でも、頭を使うゲームが大好きで・・・父もそれがわかったから、その二つのゲームを与えてくれたのかもしれませんね

偶然かも、しれませんけど


しかし父が選んだ「偶然」というのは結構無視できない事実

父の、こういうところの勘はよく当たるのです

父が必要だと断言したものは数週間後に必ず必要になる場面が出てきます。買い物だってそうです。購入予定がなく、雑に買ったものが後に大活躍なんてしょっちゅうでした

ガチャガチャで欲しい物が次来る予感がする!と言って回せば八割欲しい物があたる

夢で死んだ祖父とその同僚が酒盛りしている夢をみたら、その数週間後に同僚全員お亡くなりになったとか・・・父は素敵な第六感をお持ちのようなのです


小学生の時の僕は気がついていなかったでしょうけど、大人になった今は無視できないお話だったりします


しかしこの第六感、中々に面倒なんですよね。扱いが悪いと言うか。本当になんでこんなところばっかり引き継ぐんだろう。しかも劣化版


まあ、それは置いておいて・・・まさかこの事態を予測していたなんてことは流石にないでしょうけど・・・自分が買ってきたものがきっかけで、ただ詐欺ハガキが届いた話が、父好みの面白い展開になったのは間違いないでしょうね

実際にこの光景をみたら物凄く面白がりそうですし、そういう人です。うちの父。なんせ僕の父ですからね。性格そっくりなんですよ。悲しいですね


「・・・あんたあれやってたのね。大丈夫?怖くない?人が死ぬタイプのゲームみたいだから、お母さん心配」

「・・・DL○号のシーンはこわかった」

「・・・?」

「とにかくね、さいばんも、しゅっていも、全部ゲームでいってた。ふりがなつき!」

「・・・」

「どうしたの、お母さん」

「いや、ちょっと複雑で・・・」


ゲームだって、適度であれば知識の糧になる

ゲームをやっていたから内容を大まかに把握できた詐欺ハガキ

ゲームをやっていたから内容を大まかに把握してしまった詐欺ハガキとも言えるかもしれませんが

少なくとも、この話が成り立ったのは偶然にして裁判を取り扱ったゲームをしていたから

こんなもの、普通の小学一年生が普通に過ごしていて読むようなワードではありませんからね


「・・・お父さんはなんであのゲームを買ってきたんだろう」

「さあ?でもね、むずかしいけどね、たのしいよ。つくえばんばんたたくし。さいばんにオウムでるし」

「机は叩くものじゃありません。それにオウムは出廷出来ないでしょ。鳥よ鳥」

「・・・でたけどな」


その数年後、シルクハットの英国紳士と成○堂君はコラボを果たし・・・そこが逆○裁判初プレイとなった母は机をひたすら叩き続けるパン屋な弁護士○歩堂くんに唖然としていました。机は事あるごとに叩くものなんだよ、お母さん


それからしばらくして○転裁判のアニメ版が放映された際、オウム出廷を見てたまげたお母さんをニヨニヨしながら見ていました。オウムは出廷できる。理解したまえ


「まあとにかく。この話おしまい。ほら、これ捨てて」

「お父さんにみせなくていいの?」

「やめなさい。からかわれるから」

「えぇ・・・」

「露骨につまんなさそうな顔しない。ほら、細切れにしていいから」

「やったー」


当時、なぜか紙を細切れにすることにハマっていた僕の手により詐欺ハガキは細切れにされて・・・ゴミ箱の中に入れられました


・・


「そんな事もあったわねぇ」

「だねぇ」


声帯が変わっても元気に机を叩くナ○ホド君の再放送をのんびり眺めながら、僕らはかつてのことをしみじみと思い返しました

あれから、まさか自分が詐欺事件に巻き込まれることになるなんて思いもしませんでしたね


「しかしあんた・・・」

「何」

「あんたの人生、傘に縁がある気がするんだけど?」

「そんなわけあるか。なっ、ホーさん」

「ピ?」

「なんでインコに同意を求めるの・・・」

「ホ−さん言ってみ?その意見に賛成だ!・・・って」

「今度は学級裁判か・・・」


・・・確かに、傘で取った郵便物が詐欺ハガキだったとか

・・・一発芸は頭の上に傘を乗せながら歩くこととか

・・・傘に引っかかって、転んだら靭帯損傷とか


言われてみれば傘に縁がありすぎますね

傘なぁ・・・傘

傘を武器にして戦う話とか書いたら楽しそうだなぁ

その後も、自動車学校の卒業試験の日が台風で、傘が二本壊れたりとか・・・傘である場所に穴を開けたとか・・・


「僕の人生、もしかして傘で何か変なものを引き寄せているのかな」


おっかしいな・・・その辺の店で買った傘なのに、まるで曰く付きだ。お祓い行こ


さて。そろそろ話のまとめに入りましょうか

これは、誰にも信じて貰えないような話

都合よく裁判関係のワードが飛び交うゲームを買ってきた父親

そしてそのゲームをプレイして、ハガキに並べられた漢字と用語の意味がわかってしまった小学一年生

そんなハガキを引き寄せた、詐欺になぜかお声がけが多い母親


「あまりにも出来すぎている。それがあの日のお話だったりします」


そんな偶然に近い話はもうないと思っていたのですが、人生何があるかわからないものです

色々と、変なことに巻き込まれましたし


「しかし、なぜか傘と縁があるのもまた事実」


ここでひらめいた「傘で戦うお話」は今、書いていたりします。そうですよね、雨葉さん


「さて、本日はここまでですかね」


また機会があれば、こんな風にゆるーくお話ができたらと思います

けれど基本は創作小説がメインです

自分語りは、難しいですからね


「次は作品で」


夢を見せる力を持った神様を取り巻く旅の話で

とある春。同じタイミングで産まれた二人が織りなす一年のお話で

他にも投稿しているお話で


そして、ここでは「ノブレスフルール」として、乙女の花園で咲き誇る権利を得るために、己を磨くご令嬢たちが集う学院に入学した「落ちこぼれ令嬢」と「借金苦のバイト使用人」のお話で


「お会いできるのを楽しみにしています!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詐欺ハガキが届いたよ。 鳥路 @samemc

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ