第4話 謎は全て解けました……(遠い目)
確かにホールケーキを一人で食べるって、誰もが一度は夢見ますけど!(あくまで個人の感想です) それに先生はこの前、ケーキをホールで食べたいってつぶやいてましたけど! だからって無理して完食しますか普通! あ! あれですか! 願いが叶うという星夜祭だからですか! 夢を叶えにいっちゃったんですか! 無茶しやがって……が過ぎますよ……!
……えーとですね……何のことか説明しますと、下町ではクリスマス&婚活イベントみたいなことになっている星夜祭ですが、本来はこの世界の神話を起源とした儀礼祭なのです。
その神話というのは、病気の家族の回復を毎日、毎日、神様に祈っていた人間の願いを、その神様が聞き届け、願いを叶えたのが十二月二十五日の星の綺麗な夜だった、というものです。
それで、その日は神様に祈りを捧げ、天に届いた願いは叶う、という言い伝えとして残り、後世に語り継がれるようになったそうです。
それ以降その日は、神様に感謝し祈りを捧げる儀式の日、その前後は感謝祭としてみんなで楽しむ日、となりました。……それがなぜ伝言ゲームのごとくこんなクリスマスナイズされたイベントに変化したのかは謎ですが、
“十二月二十五日に、星夜祭で願ったことは叶う”
という、人間に都合のいい部分はしっかりと残り、毎年毎年、無茶をやらかす輩が発生するのが現状となっております。…………目の前でうーうー
……は~、もうほんとうに、この食いしん坊先生さんは……。一応あとで主治医の方に看ていただきますが、病気とかではなさそうなのでひとまず安心しました……。
一人で全部食べたということはそれだけおいしかったということでしょうが、それで体調を崩されてはとてもじゃないですが喜べません……。
《時間停止》の魔法陣を使えば、ケーキも紅茶もベストの状態を保てます。今は星夜祭の真っ最中ですので先生のご友人が訪ねてくる可能性もありましたし、予め切っておくよりも皆様で取り分けた方が楽しいかな? と思い、ホールのままで保管したのが間違いでした…………。
あくまで料理はおいしいものです。
嬉しいものです。
幸せなものです。
それがわたしが目指す料理です。料理人としての目標です。ですが今回はわたしの配慮が足りませんでした。反省です……。
……いえ、ですが苺のケーキに罪はありません。現にシーちゃんはとても喜んでくれましたし。よかったこともちゃんと覚えておきましょう。おいしくできたことも。失敗も成功も、料理人を目指す以上は全てが経験です。糧なのです。栄養なのです。
……ハイ! 反省終わり! 今から元気に前向きに、がんばっていきましょー!(ポジティブ)
……ちなみにこの世界、牛乳やバターなどの乳製品はありますが、脂肪分や塩分などはそのままです。現代風にいうなら成分無調整ですね。つまりそれらで作ったケーキは現代のものと比べて──こってり重いです。とっても高カロリーです。胃への破壊力は相当なものです。ですので今回の『金髪美少女、無茶しやがって事件』(勝手に命名)は、当然の結末を迎えたといえるでしょう。
……安心したからか理由がわかったからか気持ちが落ち着いたからか、
「……………………ふ、ふふふふふっ……。……ねぇ、先生? 念のためお医者様に看ていただいた方がよろしいかと思うのですが、どちらにご連絡を差し上げたらよろしいでしょうか? お知り合いの主治医の方でしょうか? それとも……………………ご実家でしょうか?」
その言葉にビクッ! と体を震わせ、別の意味で顔を青くした先生が「それだけは…………!」 といったご様子で、ふるふると首を横に振ります。綺麗な金髪がボサボサです。普段は可愛らしいお顔が今にも泣き出しそうにガクブルしてます。美少女が台無しなのです。
詳しくは知りませんが、どうやらご実家とは距離を置きたい何かがあるようなのです。微妙なお年頃なようなのです。……まあこの際、使えるものはなんだって利用させていただきますが(悪い笑顔)。
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