第2話 私はよく食べるレディ
次に目を覚ました時、外はもう暗くなっており私の肩をそっとさすってシリウスが起こしてくる。
「お嬢様、ディナーのお時間ですよ。もう旦那様も奥様もお待ちです」
「もう少し寝かせて……」
「いけません。レディなのですからしっかりなさいませ」
そんな紳士的で礼儀の正しい口調で言いながら、私の着ているシーツを剥ぎ取るという暴挙を起こす。
こんなことするなんて……覚えてなさいよ?!
そう心の中で思いながら私はその足でディナーの席へと向かう。
ダイニングに着くとすでにお父様とお母様が席についており、私もシリウスの引いた私の席の椅子に座る。
目の前には前菜のテリーヌとスープが置かれてそれを家族で食べながら、話をする。
もちろん今日の話題は
「フルーラ、どうしていつもいつもお前は……」
「私に合わなかったんです。今度は素敵な方をみつけてください」
「そう言ってもう9人目だぞ。いい加減に親を安心させてくれ」
「そうよ、もうちょっと落ち着いて上品にしてみたら?」
「お母様、今回はおしとやか作戦でいってダメだったの。もう私には無理よ」
そんな家族の会話を聞きながら、私のテーブルには料理が次々に運ばれてくる。
もちろん配膳をしているのもシリウスだが、相変わらず非の打ちどころのない所作と言葉遣いでなんだかむかつく。
「じゃあ、明日知り合いにいい人がいないか聞いてみるから」
「ええ、お願いしますお父様。今度はもっと私好みの方にしてくださいませ」
「そんなこと言っているからうまくいかないんだ……」
もはや頭を抱えるようにして食事も進まないお父様を尻目に、私はもぐもぐと一定のマナーを守りつつ美味しく食べる。
よく食べる私は家での食事は普通の令嬢の2倍の量で出される。
あんな少しの量で足りるご令嬢の気が知れないわ、と心の中で呟きながらデザートのアイスクリームを頬張る。
そして、そんな私に一生一代の婚約話が舞い込んでくるのはこの5日後だった──
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