第五百合「愛の行動」

学校を出ると、日が落ちかけていた。

「あっ、ヤバい!早く帰らないと!」

そして私は疾走するのだった。


♥♥


家に帰ると、朝までいた家とは丸っきり変わっていた。

「こ、これは……」

私に気付いたみゅーは、机にあった紙を持って、

パッと私に見せた。「部屋に物が多いから綺麗にしたよ。」

と、書かれていた。私は無言でみゅーにだ抱きついた。

苦しかったのか、背中をポンポン叩く。

「ご、ごめん。ちょっと強くし過ぎた。」

「にゃーにゃ」

大丈夫だよと言っているように感じた。

「嬉しくてつい……」

するとみゅーは腕を広げた。少しは恥ずかしそうな顔をしながら。

「んっ!」

ゆっくりとみゅーを抱きしめた。

心臓の鼓動が速くなっている。私もつられて速くなる。

お互い顔は見えないが、ヘンナ顔になっているに違いない。

「ありがと、でもごめんね。」

「こんな家で……」

「にゃっにゃ……」

しばらく抱き合ったあと、みゅーが何かを見せてきた。「にゃー」

それは指輪だった。でも、私はこんな物を買った覚えはない。

「うーん、何だろう?ん?文字が書いてるけど読めない。」

「……そうだ!みゅーがはめてていいよ。家に置いていたらまたどっか行っちゃうから。」

「にゃー?」

「紙:本当にいいの?」

「大丈夫。私の勘だけど、大切な物だと思う。」

私は、その指輪をみゅーの左手の薬指にはめた。

「……これでいい?ダメ……だったかな?」

するとみゅーは、照れくさそうに首を横に振った。

「にゃ~にゃ~」

「ふふ、よかった。私も指輪……買おうなか?」

と、脳裏にあることを思い出した。

「あっ、今日の夜ご飯……買ってないや。」

「ああでも、お金が無かったんだった。」

最後の百円を使った私は、お金が底を尽きていた。

それまでは親がの残したお金があったが、どんなに頑張っても到底生活できる金額じゃなかった。

「うーん、やっぱりするしかないのかな?」

と、困っていると。みゅーが紙を持って見せてきた。そこには……

「私の財布とって来ようか?」と書かれていた。

「えっ……で、でも……」

「にゃー!」と指輪を指しながら言った。

「お礼ってこと?」

「にゃ!」

「そ、そう。ここはみゅーに甘えようかな?」

私はみゅーに甘えることにした。

一応、仕事の依頼はある。でも、したくない。

いいことをしている訳ではないから。

「にゃ?」

と、私の視界に入って来た。その顔は私を心配していた。

「大丈夫、ちょっと考え事をしていただけ。」

「さて、みゅーの財布を取りに行きたいけど……」

「妹に見つからないように行ける?」

「分からない」と紙に書いてあり、どうしようと悩んでいる様子だった。

私は知ってる、既に妹にバレているかも知れないこと。だから、何やっても意味がない。

「考えても仕方ない。正面突破しよう!」

「にゃにゃ!?」

ひとまず今日はご飯が食べれる。

でも、これ以上みゅーに縋るのはみっともない。

やっぱり、するしか無いか……

そして、みゅーと一緒に家出るだった。


♥♥


みゅーの家に行く道中、何者かにつけられている気配がした。だが、こちらに危害を加えようとはしないため、知らないフリをする。だが、気配の消し方がそこそこ上手。なので、一応警戒はする。

「こうやって一緒に歩くのは初めてだよね。」

みゅーは少し恥ずかしそうに、でも笑顔で頷いた。

「にゃ!」と私に手を差し出した。

私はゆっくりとその手を握る。みゅーの温かさが伝わって体がビクッとなった。

その後は、しばらく無言になってしまった。

気まずくて死にそうだけど、何処か安心する。

そして無言のまま、みゅーの家の前に到着した。

「え、えっと……どうしよっか?」

「にゃぁ……」

「と、取り敢えず……これ……」

そう言うとそっと外れた。みゅーは終始うつむいている。

「……ありがとう。私の手を握ってくれて……」

「とっても嬉しいよ。」

すると、「ふにゃ~」と言いながら地面に座ってしまった。

「あっ、えっと……」

私はどうすればいいか分からない。

取り敢えず、みゅーの照れが治まるまで、説明する内容を考えるのだった。

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