第22話 n番目のあの子
はっと、目が覚めた。
(ここは……?)
リンナは目を見開いたが、目の前に広がるのは真っ暗な光景だった。目隠しをされている。顔の上を覆う布の感触に、リンナは首を振ろうとした。……しかし、体が動かない。
リンナは硬い椅子に座っていた。
両手首と足首、そして首には冷たい金属の輪がはめられて、椅子に固定されている。肘掛けに手を置いたまま、身じろぎひとつできない。
両手には分厚い手袋が被せられており、これも金属でできているのか、指先はわずかにも動かせなかった。
口には猿轡を噛まされている。
「ん……! んんーッ!」
リンナは必死に体をよじったが、拘束具は毛一本ほども緩む気配はない。
視界を奪われ、体の自由はなく、声を上げて助けを呼ぶこともできない。自分の置かれた状況に気付いた瞬間、喉がひくりと鳴った。
恐怖が大波のように押し寄せて、気付けばリンナはがむしゃらに体を動かしていた。戒められた四肢が拘束具と擦れ、首輪で引きつれた喉元が焼けるように痛む。
けれど、椅子はびくともしない。軋みすらしない。
あふれ出た涙が目隠しに染み込む。吸い込みきれなかった涙が頬へとにじみ出し、顎まで伝ってゆく。
『やめなさい』
頭上からアルラスの声がしたのは、そのときだった。リンナははっと息を飲み、顔を上げて耳をそばだてる。
彼の声は、まるで通信機を通したようにがさついた音質である。
アルラスはここにいない。遠くから自分を監視して、音声だけをこちらに出力しているのだ。
音を立てて、手足を拘束していた鉄輪が外れた。勢い余って椅子から転げ落ち、膝をしたたかに打ち付ける。
リンナは体を起こすと、目隠しと猿轡を剥ぎ取って投げ捨てた。
明るい光が目に刺さって、リンナは顔を歪めて辺りを見回した。
椅子に溶接された拘束具は、遠隔操作で開閉できるらしい。リンナは呆然と、皮の剥けた両手首を見下ろした。
目が慣れた頃に、ゆっくりと顔を上げる。
知らない部屋であった。床も天井も石造りでひんやりとしており、窓はひとつもない。物は何もないのに、随分と広い。ちょっと走り回るくらいはできるくらいの、丸い部屋である。
何より特徴的なのは、丸い部屋の壁が全て牢屋のような鉄格子で囲まれていることだった。鉄格子の外側には同じく円形の通路があり、四つほどの廊下が放射状に伸びているが、先は暗くて窺えない。
紛れもなく、全方向から監視できる独房だった。
(これじゃ、まるで動物園の檻みたい……)
リンナは椅子から立ち上がり、きょろきょろとしながら途方に暮れた。
椅子の真上に、スピーカーが取り付けられている。リンナはそちらに向かって、「閣下」と小さく声をかけた。
絞り出した声は掠れていた。唾を飲もうとして、口の中はからからに乾いていた。
「ここは、どこですか?」
不安の滲んだ口調で問う。
しばらく返事がなく、リンナは背筋が凍る思いだった。まさか、こちらの言葉はアルラスには聞こえないのだろうか?
しかし、ややあって『レイテーク城の地下だ』とアルラスの返答があった。会話ができたことに安心して、また涙が出る。
リンナは手の甲で目元を拭った。
「わ、わたし……閣下に撃たれたんだと、」
『重要参考人を殺すわけがなかろう。空砲だ』
アルラスの声に抑揚はなく、冷たく突き放す口調に聞こえた。顔が見えないからそう思うのだろうか?
ぐいと強く目を擦った手を、そっと頬に添わせた。
指先で頬を叩く。……泣いていても仕方ない。なにも解決しない。
心が麻痺してゆくのを、まるで窓の外を見下ろすように感じていた。気にしない。なにも気にしない。
「閣下! それで、どうして私はこんなところに入れられているんですか? 何だか湿気っぽくて縁起の悪そうな場所だわ」
リンナは明るい表情でスピーカーに話しかけた。声は無意識に媚びるような響きを帯びている。
は、とアルラスが息を飲む音が、通信機越しに聞こえた。
「……閣下?」
リンナは笑顔のまま、もう一度声をかける。
「ねえ閣下、私が何かしましたか? いつここから出られるんですか? 閣下、教えて、おねがい……」
感情を鈍くして、不安を押し殺しているはずなのに、顔は笑っているのに、次から次へと涙が頬へ伝って止まらないのだ。
「わたし、なにも知りません。南部戦線のことも、二百年前のことも、なにも知らないの、」
口元だけは笑って、不随意に肩を揺らしてしゃくり上げる。
スピーカーの向こう側は息遣いや衣擦れの音が微かにするだけで、返事はない。
「たすけて、閣下…………」
もう彼はこちらの声を聞いてなどいないのかもしれない。もう二度と声が返ってくることはないのかもしれない。
リンナは天井を仰いだ。頭上にいくつも据え付けられた照明を浴びて、長い髪は根元から毛先まで真っ白に輝いていた。
リンナの髪は、生まれつき白い色をしていた。父とも母とも似ていない色で、どんなに遠くまで親戚を辿っても同じ髪色の者はいなかった。
全体的に骨太でしっかりした体つきのセラクタルタ家のなかで、リンナだけが小柄で華奢であった。
誰もが軍人を目指す辺境伯の家に生まれて、リンナだけが学者の道を選んだ。幼い頃から、気質がまるで違っていた。
だから父はリンナを知らない血筋の人間だと断定し、娘として認めなかった。兄たちも、そんな父に同調してリンナを遠ざけた。
自ら腹を痛めた母は、リンナを大切な娘と呼んでくれた。けれどたまに、ふと正気に戻ったような顔で、呆然とリンナを見下ろすのだ。――ほんとうに、これは自分の血を分けた娘か?
応えなければ。証明しなければ。
自分はこの家の娘なのだと、世間にも家族にも知らしめなければ。
(……砦の外に、私と同じ顔をした女が、たくさんいるんだって)
リンナは俯いて拳を握りしめた。
(閣下は、二百年前に、私と同じ顔をした女を知っていたんだって)
片手を上げ、顔を覆っていた。三回ほど息を吸う。
気付けば、膝がかくりと折れて、その場に崩れ落ちていた。
「う……ああッ!」
床に額を押しつけ、リンナは言葉にならない悲鳴を上げて椅子の脚を強く殴りつけた。
椅子はびくともせず、手足を拘束するための鉄輪が音を立てるだけだ。
リンナは両手で自らの髪を握り締めると、力任せに引っ張った。音を立てて毛髪が抜けて手指に絡まり、同じ動作を繰り返すたびに色のない髪が床へ散らばってゆく。
「私が何者かなんて、私が一番知りたいに決まってる!」
絶叫して、リンナは体を丸めて啜り泣いた。どこかで、ぷつんと糸が切れる音を聞いた。
「もうやだ。もう頑張れない、ぜんぶ無駄だったんだわ、馬鹿みたい……」
うずくまって呟くと同時に、天井から白い煙が噴射される。リンナは息を飲んで顔を上げた。周りを取り囲む柵が見えないほどの煙幕である。咄嗟に口と鼻を覆ったが、目の前がぐらりと揺れる。
(閣下が、なにか薬を撒いたんだわ)
椅子にしがみついた手から、力が抜ける。床に倒れると同時に、目の前が暗くなった。
***
「……ご命令通り、鎮静剤を噴射しましたが」
イーニルはそれしか言わなかったが、『これで満足か』と続くのが聞こえるようだった。冷ややかな口調に、 、アルラスはゆっくりと顔を上げる。
手の中で、まだ新しいはずの万年筆が真っ二つに折れていた。力を緩めれば、音を立てて軸の破片が机に散らばる。
数滴の血が机の上に滴ったが、手のひらに既に傷はなかった。食い締めた唇から血が滲み、口の中に鉄の味が広がる。
目元を覆っていた左手が濡れている。
皓々と輝く大きな画面には、斜め上から見下ろした独房が写っていた。鎮静剤で白く煙っていた画面が、徐々に鮮明になってゆく。
画面の中央に、小柄な女が横倒しに倒れていた。四肢を投げ出した姿はぴくりともせず、嫌な想像に一瞬背筋が冷たくなる。
同じことを考えたのだろう。イーニルが音を立てて腰を浮かせた。アルラスは鋭い声で彼女を制した。
「何をしようとしている」
「……医師を呼ぶ必要があります。あの薬剤の量が適切だとは思えません」
「駄目だ」
厳しく言い放ったアルラスに、イーニルが体ごと振り返る。上官に対する口答えをしない女騎士だったが、いま向けられている眼差しはむしろ初めて会ったときに似ていた。人でなしを見る視線である。
アルラスは顎を引き締めてイーニルを睨み返した。
「呪術師に近づいてはならない。鉄則だ」
「……非人道的なやり方です。今日び騎士団だってあんな拘束はしません」
「呪術師を相手にするというのは、そういうことだ」
あの円形の牢獄は、呪術師の影響が及ぶ範囲に人が入らないようにするための形状である。今となっては、古い建造物であるレイテーク城くらいにしか現存しない。呪術師を監視、拘束し、尋問するためだけの檻だ。
画面の向こうで倒れたまま動かない姿を眺めながら、アルラスは掠れた声で呟いた。
「少佐。砦へ行ったことはあるか」
「……いいえ。私は配属以来これまで、刑事事件が管轄で」
砦に関しては、今回の件を理由に話を聞いただけです、とイーニルが答える。
「一度、前線に出てみると良い。あれが呪術師によるものだと思えば、甘いことを言えなくなる」
荒んだ目をして、アルラスは吐き捨てた。
「俺が馬鹿だった。呪術師に肩入れしようとして、惑わされて、……自分が恥ずかしい」
小さな画面越しに、ぴく、とリンナの体が震える。その動きを認めた瞬間、指先が思わず跳ねた。
詰めていた息を吐き、胸を撫で下ろす動きが、一体いかなる感情から生じるものなのか。それを認める気は毛頭ない。
ごまかすように、冷めたコーヒーを手に取る。もうすっかり冷たく、風味もしない。
「閣下のご意志について、私から申し上げることはございませんが、」
イーニルは画面を注視しながら、低い声で囁いた。
「こちらで働いておられる方々が、私のことを閣下の不倫相手かなにかと思っている件に関しては、閣下の口から否定して頂きたい」
……いくら不死の体であっても、飲料が鼻に入ると痛いことを知った。
「な……なんだと?」
咳き込んで口元を拭いながら、アルラスは身の毛がよだつような思いでイーニルを振り返る。
イーニルは軽蔑そのものの眼差しで、こちらを見下ろしていた。とてもではないが所属組織の高官に向ける目ではない。
「エディリンナ様は行方不明。しかしその話をするなと命じて、地下室に部下の女と日がな一日こもっている。正直、不倫がバレて奥方に逃げられ、開き直ったようにしか見えませんよ」
あまりの言い草にきつく睨みつけるが、イーニルは毛先一本そよがせる様子もなかった。
「迷惑極まりない。言っておきますが、私も家で可愛い夫が待っている身です」
出張として誤魔化せる期間にも限界がある、と彼女が冷静に告げる。この状況はいつまで続くのか言外に問われて、アルラスは答えられなかった。
口調こそ静かだが、イーニルは随分と頭にきているようだった。
「私なら、夫がどんなに重い罪に問われても、最後の最後まで彼を信じ続けますけどね」
それが家族ってものでしょう。そう語る表情には、嫌悪感が滲んでいた。
元気があれば、過ぎた発言を咎めるところだった。けれど、そんな大声を出す気力も残っていない。
「家族じゃない」
アルラスは呟いて、無事だった万年筆のキャップを握り締めた。ぱき、と小さな音を立てて、親指の下でキャップにひびが入る。
「もともと、俺が彼女の家族を人質にとって脅して、婚姻届にサインをさせただけだ。情もない」
家族だったことなど、一秒もない。
イーニルが息を飲む。驚愕のつぎに、その頬に軽蔑が浮かぶ。
「もしその言葉が本当なら、閣下――」
『閣下』
不安げに自分を呼ぶ声がして、アルラスは弾かれたようにマイクのスイッチを見た。……入っている。
数秒前までの会話がすべて筒抜けだったと悟って、血の気が引いた。
リンナは自分がどこから監視されているかを知らないらしい。あらぬ方向を見上げながら、彼女はぎこちなく身を起こした。
鎮静剤が効いているのか、その動きは緩慢である。口調もぼんやりと眠たげで、意識が混濁しているのだと推測がついた。
ぐらりと揺れた小さな頭が、硬い椅子の肘掛けに当たりそうになる。すんでのところで前へ振れて、頭は椅子にぶつかることなく元の位置に戻った。
そんな様子をひとつひとつ、固唾を飲んで見ている自分がいる。
声を殺してさめざめと泣いているリンナの後ろ姿を、見ているしかない自分がいる。
アルラスは唇を強く噛んだまま、静かにマイクを落とした。
額に手を当てて、地下室の天井を睨んだ。
『またいつか』と、遠い記憶の中で女が笑う。それから二百年の時を超えて、同じ面立ちをした女が再び目の前に立ち現れた。
(呪術師が顔を見られてはならないのは、同じ顔をした人間が複数存在するからだろうか)
俯いたリンナの白い髪が揺れている。リンナは床に斜めに座り込んだまま、床に向かって何かをしているようだった。
「何をしている?」
眉をひそめると、イーニルはすこし躊躇う様子をみせた。答えろと視線で促すと、渋々口を開く。
「……床に、なにか書き取りをしているようです」
「筆記用具など渡していないぞ」
「ええ。ですから、指で……」
意味が分からず、アルラスは画面の表示を切り替えた。リンナを真正面から見下ろし、思わず息を飲む。
人差し指の腹から滲む血を床に擦りつけ、リンナは黙々と床に文字を書き綴っていた。掠れた血文字は小さく、画面越しに読み取ることはできないが、恐らくは呪文だろう。
反対の手の指先で、リンナはひっきりなしに頬を打っていた。あの動作には見覚えがある。リンナが時おりする、癖のような所作だった。けれど今は、その様子にどこか病的なものを感じた。
「リンナ」
通信を繋ぎ直し、アルラスは厳しい声を発した。
「やめなさい」
『ああ、閣下。ちょうど良かったわ、筆記用具を工面して欲しいんです』
驚くほどあっけらかんとした声で、リンナがにこりと微笑む。
『私、研究を続けます。もともと脅されて監視下に置かれていたんだもの、よく考えてみれば状況はなにも変わっていないでしょう? 筆記用具や資料は用意して頂けるって、前に閣下から伺いました』
おののいたように、イーニルが半歩下がる。アルラスは何も言わずに目を細めた。
リンナにはこういった、人格が途中で切断されて縫い合わせられたような不連続性があった。呪術の使いすぎなのだ。
自らを書き換えることを繰り返し、元の形も分からないパッチワークである。その痛々しさに、たまに息を吸うことすらできなくなる。
『ほーら、早く! 私に死の呪いを作って欲しいんでしょう?』
拘束用の椅子以外に何もない独房で、彼女は明るい笑顔で手を振っている。不自然に笑う姿を見ていられず、アルラスは咄嗟に下を向いた。
……まぎれもない異常者で、危険人物。二百年前の大事件に関わっている可能性のある重要参考人で、野放しにする訳にはいかない犯罪者予備軍である。
それなのに、こんなに懐に入れてしまって、もう引き返せないところまで来てしまった。
項垂れるアルラスの心境も知らないで、リンナは『あっ、机と椅子ももちろん持ち込んでくださいね』と血に濡れた人差し指を立てた。
手が届く距離にいても何を考えているか分からない女が、手の届かない今はまるで別世界の生き物に思えた。
けれど、ひとつ確かなことがある。
自分は昨日からの数時間のうちに、あれほど心を寄せてくれていたリンナの信頼を一切失ったのだ。
***
ヘレックがこの城で働き始めてから、あと一週間ほどで二年が経つ。このレイテーク城を出て行かねばならない日が迫っていた。
再就職先は老舗の魔道具メーカーの開発職で、すでに様々な調整や準備を終え、あとは荷造りと引き継ぎを残すばかりだった。
ここのところ当主は忙しくしているようで、ほぼ毎日地下室に入り浸っては一日中なにかをしている。研究だろうかと思うが、アルラスはその内容に関して一切口を割ろうとはしなかった。
(このままじゃ、結局、奥方様には挨拶もできずじまいだな……)
気がかりなのは、数ヶ月前に忽然と姿を消した城主夫人のことである。
もうじき見納めになる自室を眺めながら、ヘレックは長い息を吐いた。背を預けた壁の向こうでは、しとしとと音のしない霧雨が降っている。
春先の頃だった。アルラスに呼ばれたといって慌てた様子で外出したリンナは、それきり二度と戻ってこなかった。行き先はアルラスだけが知っているはずだが、なにも語らない。
彼女に関してアルラスは一切の言及や詮索を禁じ、現在レイテーク城ではリンナの話は禁句のようになっている。
リピテなどは、それでアルラスに厳しく咎められたことで、随分と落ち込んでいる時期もあった。
春にリンナがこの城から消え、もう初夏である。まるで彼女など初めからいなかったように、しかし妙にひっそりと、この城は回り続けている。
自分が退職したあとどうなるかは分からない。
アルラスは多忙を理由に、ヘレックの後継を探し忘れていたらしい。後任者が見つかるまではリピテがヘレックの作業を一部肩代わりすることになり、ここ最近は城内の警備も担当してくれている。
もっとも警備といっても、制御室に常駐して城内に張り巡らされたセンサーに異常がないか見張る仕事である。異常があったためしは、ヘレックの知る限り一度もない。
何から何まで、もうすぐここを去るヘレックには関係のない話である。
ヘレックは枕のへこみを叩いて直すと、布団を手繰り寄せた。今日の夜番はリピテだった。
薄手の布団を腹までかけて、照明を消す。目を閉じると、それまでは気付かなかった幽かな雨音が、囁き声のように周囲を取り囲んだ。
明るい夢を見始めたころ、枕元で通信機が音を立て、ヘレックは飛び上がった。あわてて受話器を取って耳に当てる。
『夜遅くにごめんなさい』と、リピテの声がした。
『……ヘレックさん、今すぐ制御室まで来てもらえますか』
誰もいないだろうに、声を潜めて、緊迫した様子である。
すっかり眠気が覚めて、ヘレックは「何か問題でもあったの」と囁き返した。
受話器の向こうで、リピテが振り返ったような衣擦れの音がした。制御室からは、城門が見下ろせる。
『……来客、みたいな』
「もう日付が変わっているよ。こんな夜中に人が?」
眉をひそめたヘレックに、リピテはますます小さな声になって告げた。
白い服を着た女が、この雨の中、傘もささずに城門の前に立ち続けているという。
暗い森を背景に、明かりも持たず、ただぼうっと城を見上げているらしい。
想像しただけで、ぞっと背筋に冷たいものが走る。
「見たことない人?」
『い……いいえ』
リピテは一度息を吸って、掠れた声で答えた。
『――たぶんあれ、奥方様なんです!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます