アンの留守番
アンのおばあちゃん、サラがマジックソードアカデミーを見学している間アンは、畑仕事をして勉強をして、ご飯を食べて、ほぼいつもの日常と変わらない1日を過ごしていた。
唯一いつもと違うのは、『おばあちゃんがいない』ということだけだった。
アンは『少し寂しいな』と思いながらも一日を過ごし寝る準備を終え、アンがそろそろ寝ようとした時だった。
ドアからガチャガチャっと音がしてアンは、泥棒!?と一瞬焦ったが『よく考えればこんな田舎以上な場所にあるこの家を襲う泥棒なんか、いやしないか。じゃあ、おばあちゃんが帰ってきたのかも。』と思い玄関に向かうと、やはりおばあちゃんだった。
「アン、ただいま。留守番してくれてありがとね」
とおばあちゃんが言うとアンは、おばあちゃんに抱きついた。
アンはすごく寂しかった訳ではなく、『少し寂しかった』その程度で、いつもの日課をこなし、おばあちゃんが家に帰ってきた。
それだけなのに、何故かアンは涙が出るほどすごく安心した。
「おかえり。おばあちゃん」
アンはおばあちゃんに抱きついたまま、少し震えた声でそう言った。
「アン。泣くほど寂しかったのかい」
と抱きついて涙を流しているアンを見て、おばあちゃんはそう訊いた。
「わかんない。少しは寂しかったけど、泣くほどじゃないはずなのに、なんか涙が止まらないの」
「そうか。まあ泣ける時に泣いておきな。
これからの人生泣きたくても泣けない場面がきっとある。
それにアンは、いつも泣くのを我慢する子だったから、今までの分とこれからの分を今、泣いておきな」
おばあちゃんがアンの泣く姿を見るのは、今回が3回目だった。
それもアンがこんなに泣いたのは、おばあちゃんがアンを迎えに行った時だけだった。
おばあちゃんは精一杯の気持ちを込めて、アンをギュッと抱きしめ返した。
その日アンはいつの間にか泣き疲れて寝てしまった。
そしてアンは久しぶりに夢でとても懐かしい思い出を見たのであった。
次の日の朝、アンが眠りから覚めるといつものように美味しい匂いがした。
アンは、いつの間にか泣き疲れて寝てしまったせいか、いつも以上に重い体をなんとか起こし、台所に向かった。
「おばあちゃん、おはよう」
「アン、おはよう。よく眠れたかい」
「うん。なんの夢だったかは忘れちゃったけど、すごい懐かしい夢を見た気がする」
「そうかい。とりあえず、顔を洗ってきな。目が赤く腫れているから」
「うん」
アンは、顔を洗いに洗面所に行った。冷たい水がアンの寝ぼけた脳をよく覚ます。
顔をよく洗い鏡を見るとアンの目は少しだけ赤くなっていた。アンは『そりゃあ、泣き疲れて寝ちゃうほど泣いたんだから、目が赤くなるわな』と心の中で、鏡に映った自分の顔につっこんだ。
「ふぅ」
とアンは一息付き台所に戻ると、すでに朝食ができていた。
「ご飯できたよ。ほら、アンも早く座って朝ごはん食べるよ。今日はやることたくさんあるんだから」
「うん」
「「いただきます」」
と二人は声を揃えて言った。
アンは、いつも食べている朝ごはんと同じなのに、この日の朝ごはんは何故か少しだけ、いつもより美味しく感じた。
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