門の番人

「ばか、やめろ!このどアホ!!」


走ってきた男はそう怒って言いながら、先に来た男の背中に軽い飛び蹴りをした。

「うぎゃ」

と言って飛び蹴りされた男がふらつくと、飛び蹴りをした男がいい加減にしろよと言わんばかりに、ふらついた男の頭を勢いよく脇に抱えた。

その男は怒りを抑えきれたのか冷静な様子で、門の隣にあった人が一人しか通れないような扉を開け、サラを敷地内に入れるとサラに話しかけた。


「申し訳ありません。私はマジックソードアカデミー警備の本部隊隊長を務めている、カロン・バリアスと申します。そしてこの者は、私の部下で新人のアラン・ハントという者です。

この度は、私の部下が大変ご迷惑をおかけいたしました。無礼な態度をとってしまい誠に申し訳ありません。心からお詫び申し上げます。」


とバリアスはハントを脇に抱えたまま深々と頭を下げた。


「いえ。・・・ハントさん、バリアス隊長が隊長で本当によかったですね。ただ、部下の教育がいいとはお世辞でも言えませんが」

「その通りでございます。私がまだしっかりと教育できていなかったため招いたことですので、後でしっかりとこの者に言い聞かせておきます。済みましては、サラ・ミッチェル様でお間違いありませんでしょうか」


それを聞いたハントは、顔を上げこれでもかというほど目を見開き驚いた様子で、


「え!!サラ・ミッ」


と半分言いかけたところでバリアスに口を塞がれた。サラは、少し微笑みながら自分がサラであることを認めた。


「ええ。サラ・ミッチェルです」

「遠方から遥々ありがとうございます。この度は、本学園の学園長『リリア・ガーネット園長』との面会でよろしかったでしょうか」

「ええ」

「かしこまりました。では、早速私がさせていただきます」

「ありがとうございます」


そうサラとバリアスが話すと、バリアスはハントの頭を離し、ギロッと睨みつけながら、

「お前は急いで、学園長にサラ・ミッチェル様がいらっしゃったことを伝えてこい。寄り道せずに行くんだぞ」

と言った。


するとハントは最初の時のような、百獣の王を思わせるような荒々しい雰囲気はおろか、まるで震えた子鹿を思わせるほど怯えた様子で「はい」と返事をして、大人のライオンから逃げる小さな子供の豹のように、ものすごい勢いでその場を走り去って行った。


「ではサラ・ミッチェル様、こちらへ」

とバリアスは礼儀正しくサラを、学園長室までした。

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