おばあちゃんと私


話は少し戻り、アン・ミッチェルがマジックソードアカデミーに入学する前の、夏のこと。


「おばあちゃん、畑で野菜収穫してきたよ」

「アンありがとね、そこに置いといてくれるかい。あとで洗うから」

「はーい」


当時アンは、唯一の血縁者であるおばあちゃん、サラ・ミッチェルと首都から程遠い村のはずれに二人で暮らしていた。


アン達が暮らしていたところは、土地が開けており周りには、アン達が耕している畑ぐらいしかなかった。

だが、少し離れたところに、森があり、反対側には小さな町はあった。


でもアン達が暮らしていたのは、田舎も田舎、超田舎。

ここで暮らせていけるのか?となるほど何もない場所で暮らしていた。

だがアン達は、おばあちゃんの栽培術とアンの力で普通に暮らしていた。


「おばあちゃん、今日もたくさん収穫できたよ」

「それはよかった」

「あと、もう少しでトマトが収穫できそうだった」

「じゃあ、明日にでも収穫しようかね」

「うん」


アン達の畑は、まあまあ広く年中作物が取れたので、似たような会話をほぼ毎日していた。


アンはここでおばあちゃんと二人で暮らしているのがすごく好きだった。

おばあちゃん以外とは誰とも会わず、美味しいご飯が食べれて、これといった困りごとがないこの暮らしが好きだった。

町にはどうしても必要な物や、買わないといけないものが出た時にしか町には行かないし、何より大好きなおばあちゃんとの暮らしがアンは好きだった。


だが、アンにも訪れるのであった。と言う名のアンにとっての悪魔が。


が訪れたのは、この日の夜であった。


夜ご飯も食べ終わり、寝る準備を始めようとしたその時だった。

突如おばあちゃんが、アンに話しかけた。


「アン」

「何?おばあちゃん」

「アン、将来どうするか決めているのかい」


おばあちゃんにそう言われたとき、アンは少しドキッとしたが、答えは一つだった。


「うん。もう決めてるよ」


アンはそう答えた。アンはここでの暮らしに慣れ始めた頃からずっと決めていたのだ。ずっと前から。


「私、おばあちゃんみたいにスローライフを送るの」

アンは少し微笑みながらそう言った。


その言葉を聞いておばあちゃんはとても驚いた。アンに「そんなこと」と言おうと思ったが言うのをやめた。

なぜならアンの顔を見て、これは何を言ってもということが一瞬でわかったからだ。


アンのおばあちゃん、サラ・ミッチェルは思った。

息子のグレンも頑固で説得するのが、いつも大変だった。

だがアンはグレンよりも、だった。

いつも説得するのに時間はかかるし、ものすごく大変だったが、いつもなんとか説得させてきた。


だからわかる。

いつもなんとか説得させてきたからわかる。


これは、じゃない、


今までなんとか説得させてきたけど、今回は100パーセントいや、1億パーセント 無理。



と心の奥深い底でそう思った。


「アンは本当にしょうがない子だね。ほんとうに」

とおばあちゃんは言った。


なんで、「ほんとうに」を2回も言ったの!?とアンは思いながらも、「でも納得してくれてよかった」とほっとしていた。


のも束の間、おばあちゃんは完全にしたわけではなかった!!

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