第10話 第二騎士団
団長室に入ると何人か他の人達もいる。
全身を守る鎧は着てはいないが、胸や股間を守るプレートが付いているところを見ると、この人達も第二騎士団所属の人なんだろう。
なぜ、そう思うかって?
ラニオンとトランも同じ服装をしているからだ。
「おい、お前ら見せもんじゃないぞ」
クロウはなぜか僕を後ろから抱きつき、そのまま持ち上げ後ろに隠した。
きっと聖女召喚に巻き込まれた僕を心配してくれた行動なんだろう。
だが、クロウやラニオンと関わっている時点で、第二騎士団の人達と接する機会は多そうだ。
「いや、僕にも挨拶させて頂けると助かります」
「別に挨拶はしなくても大丈夫だ」
クロウはなぜそんなことを言うのだろう。
「あんな大人気ない団長初めて見ました」
「くくく、あの暴君はどこに行ったんでしょうかね」
ラニオンとトランは楽しそうに笑っているが、見ているなら助けて欲しいぐらいだ。
「クロウさん邪魔しないでください」
「邪魔だと――」
大きな背中に邪魔されているため、いくら顔を出そうとしても背中に隠れてしまう。
「それなら……」
僕はクロウの腕を少し持ち上げると、その隙間から顔を出した。
これなら大きな背中からでも、邪魔されずに騎士達の顔を見ることができる。
「妹の夢と一緒にこちらの世界に来たカナタと申します。ご迷惑をおかけすると思いますが、色々と教えて頂けると嬉しいです」
挨拶を終えるとなぜか騎士達は震えていた。
何か言ってはいけないことを言ってしまったのだろうか。
「団長……この可愛らしい生き物は――」
「誰にも渡さないからな!」
まだ話している途中で耳を塞がれると、何を言っていたのかもわからない。
そして、そのまま僕の肩を掴むと引き寄せられる。
僕の耳はクロウの胸に抑えつけられ、聞こえるのは高まる心臓の音だけだ。
「これは心臓病か……?」
あまりにも心臓の音が大きいため、何か変な病気ではないかと心配になってしまうほどだ。
「それで団長はそんなに急いでどうしたんですか?」
それは僕も思っていた。
あれだけ急いで来たのなら何か理由があるのだろう。
実際にトランに呼びに行くように命令したが、遅いと怒っていたぐらいだからな。
「いや……」
「いや?」
クロウは僕の顔を見ている。
僕のことで何か大事なことがあったのだろうか。
「お前らが楽しそうに話していたからだ」
聞いていた僕は少し吹き出しそうになってしまった。
そんなに会話に入りたかったのだろうか。
「クロウさん、仲間外れにしてすみません」
「いや……俺はそんなつもりで――」
「寂しかったから寂しいって早く言ってくださいよ」
僕はそのままクロウに抱きつくと、背中を優しく撫でた。
どこか震えているクロウは本当に寂しかったのだろう。
そんなクロウの姿を見た他の団員はくすくすと笑っている。
「お前ら全員出ていけー!」
部屋の中はクロウの大きな声と心臓の鼓動だけが大きく響いていた。
やっぱりクロウは心臓の病気を持っていそうだ……。
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