第46話
「そんなに広い?」
「はい、私の部屋の何個分?いっぱい分です。」
か、かわええ・・・。
いっぱいを両手使って表現する子供特有の可愛さが、たまりません。
「お姉さま、あれは何でしょう?」
そう言って、アリスはパターゴルフを指さした。
「パターゴルフよ。やってみましょう。」
基本のストレートコースでお手本を見せる。
「こういう風に、真っ直ぐに打てば、いいだけだから。」
アリスにパターを手渡す。
「あーん、入らない。」
悔しがるアリスも可愛い。
女中たちがアリスのボールを回収し、再びセットする。
そんな光景を一歩離れた位置で愛でる私。
「ねえ、アリスは、滅茶苦茶可愛いと思わない?」
私は、側に控えるリリアーヌに同意を求めた。
「はい、アリスお嬢様は可愛いです。更に言えば、お姉さまぶるお嬢様も可愛いです。」
ちがーーーーうっ。
私の事はどうでもいい。
今はアリスの可愛さだけを語り合いたいのだ。
「私の事は置いといてくれる?」
「お嬢様、3歳の幼女が居たとします。」
なんで、3歳の幼女がここで出てくる?
「アリスお嬢様が、その幼女にお姉さまぶったら、どうでしょう?」
ぶはっ!
そんな光景みたら、たまらんでしょっ!
「それは、それで愛くるしいわ。」
「そういう事です。」
「何が?」
「そういう可愛さがお嬢様にあると言っております。」
「あんただけでしょっ!」
「いえ、奥様もそういう瞳で、お嬢様を見つめられておりました。」
な、なんてこったい。
「もしかして、女中の皆が、ニコニコしてたのは?」
「そういう事です。」
くっ・・・、アリスだけでなく、私に対しても、いつも以上に優しく微笑んでいたのは、そういう事かっ!
駄目だ、ここには私の意見に同意してくれそうな人間が居ない。
エヴァーノも駄目だろ。
エヴァーノからしたら、私とアリスの年齢なんて誤差みたいなもの。
はっ。
ビルなら?
駄目だ、変な性癖に目覚められたら困る。
一人で、愛でるしかないか。
「やった、入りました。お姉さま、入りましたよ。」
「アリス、そういう時はカップインっていうのよ。」
「なるほど、カップインですね。カップインしました。」
全身を使って喜びを表現するアリス。
かわえええ。
「お嬢様もあのように全身を使って表現すれば・・・。」
する訳がない。
あんな子供っぽいことを。
「自然とカロリーが消費されるでしょうに。」
「ぐはっ・・・。」
だ、大丈夫だ、私。
その為の剣術と乗馬なのだから、うん。
「アリス、お茶にしましょうか?」
「あ、あのう、私、紅茶が、あまり好きくなくて。」
ああ、そうだ。
前世でも子供の紅茶嫌いは意外と多い。
化粧品のような香りがしたり、独特の渋みや苦みがあったりとするからなのだが。
まあ、化粧品のような香りというのは、化粧品が、そのような香りをさせているからであって、紅茶のせいではない。
「飲みやすい茶葉とはちみつを用意して。」
「畏まりました。」
リリアーヌに準備だけしてもらい。
「苦手だったら、残していいからね。」
「えっ?お姉さまが、いれてくれるのですか?」
「ええ、そうよ。」
いつものように、紅茶をいれて、そっと蜂蜜を入れる。
「無理しなくていいからね。」
カップセットが3つ分用意されたので、仕方なく3ついれたが。
コイツも飲む気だな・・・。
3人でテーブルにつき、紅茶を飲む。
「うわあ、美味しい。匂いも変な匂いがしない。」
「変な匂いですか?」
「ほら、甘い香りがするのに、飲んでみると、甘さはないでしょう?」
私がリリアーヌに説明した。
「そういうものでは?」
「まあ、慣れればね。」
うん、蜂蜜入りも甘くていいな。
「もう、私が教えることはありませんね。」
「だったら、もう飲まなくていいんじゃないの?」
「それはそれ、これはこれです。」
単に飲みたいだけだろっ!
「ねえねえ、リリアーヌだけ、ブローチ付けてるのは、どうして?」
アリスがリリアーヌに聞いた。
「これはお嬢様専属を意味します。お嬢様に頂きました。」
「お姉さまが買ってあげたの?」
「いえ、これはお嬢様が初めてお作りになった物です。」
そう言って、ブローチを誇張させるが如く、胸を張る。
「すごーいっ!お姉さまが作ったの?すごい、すごい。」
いかん、私の鼻が伸びる伸びる。
可愛い妹に褒められて、喜ばない姉が居るだろうか?いや、居るはずがないっ!
アリスの可愛さをたっぷりと堪能した私は、夕食時に叔母さまに提案した。
「王都滞在時は、アリスは私の部屋で預かりますので、宜しく。」
「何、決定事項みたいに言ってるのよ。」
ありゃ?提案したつもりだったのだが・・・。
「そりゃあ、こっちは人手が少ないし、助かるのは助かるけど。いいの?義姉さん、アウエリアが勝手なことを言っているけど?」
「問題ないわ。アウエリアは、この屋敷のナンバー2なのよ?」
「そりゃあ、そうだけど。」
名目上、ナンバー2とは言え、私は養女だからなあ。
「まあ、いいわ。義姉さんもそう言うなら、アウエリア、アリスの事お願いね。」
「はい。(身命に変えましてもっ!)」
こうして、私は、アリスと楽しい日々を送れることとなった。
「それじゃあ、お姉さま、今晩から宜しくお願いしますね。」
「ええ、宜しくね。」
「お姉さまのベッドは、見たことがないくらい大きいです。」
だよね・・・。
前世で大きいベッドと言えば、キングサイズ。
日本で使ってる人って、ましゃ位しか聞いたことがない。
一応、キングベッドがどれ位のサイズかは、私も把握しているが、今世の私のベッドは、それの約2倍だ。
大きいにも程がある。
最初にお母様の部屋で一緒に寝た時のベッドは、キングサイズくらいだった。
が、私が一緒に寝る様になってから、暫くして、お母様の部屋のベッドサイズが変わった。
現在、ピザート家では、私とお母様の部屋のベッドだけ、異様に大きいサイズとなっている。
お母様の部屋に納入される時に聞いた話だと、国内で、このサイズは2例目だという。
つまり、国内にこのサイズのベッドは、ピザート家にしかないらしい。
まあ、それ位、大きいから、アリスと一緒に寝ても、全然、平気だ。
朝、紅茶の香りと共に目覚める私。
いつものように、ガバッと起き上がり、隣に天使が眠っている事を思い出す。
いかん、いかん。
そっと、起きようとするが手遅れだった。
「もう、朝ですか?」
目をこすりながら、アリスが言う。
「まだ寝ていても大丈夫よ?」
「ううん、起きます。」
かわええ。
何だ、この可愛い物体はっ!
抱きしめたい欲望を抑えつつ、アリスをベッドから降ろした。
「おはようございます、お嬢様がた。」
「おはよう。」
リリアーヌに朝の挨拶を返す。
「リリアーヌ、昨晩はありがとう。」
アリスが何やら礼を言っている。
「なんかあったの?」
私は、リリアーヌに聞いた。
「アリスお嬢様とお花摘みに行っただけです。」
はっ?
夜にアリスを何処に連れて行ってるんじゃっ!
と一瞬思ったが・・・。
ああ、トイレか。
アリスは、まだ子供だし、慣れない環境だ。
トイレが近いのも仕方がない。
その辺まで、頭が回ってなかった。
「ねえ、リリアーヌ。ちゃんと寝てるの?」
「私は、寝ていますが?」
「それならいいけど。」
後で、お母様に相談しよう。
「おいしい。お姉さまがいれてくれたのと、味が違う。」
「茶葉が違いますので。」
「色んな茶葉があるんだ。」
「茶葉はアーマードの特産ですから、アリスお嬢様は、これから、学ばれていけば、いいと思います。」
「うわあ。いっぱい勉強しなきゃね。」
「頑張ってください。」
いやあ、いいわ。
朝から、いいもん見せてもらったわぁ。
素直なアリスも、可愛すぎっ。
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