第42話

朝、お父様と叔父様と私の3人で、話し合いが行われた。

何の話だ?

叔父様まで一緒とは?


「実はね、パターゴルフを王家に献上しようと思っているんだ。」


そんな事をお父様に言われた。


「なるほど。」


「それで現在、商会の方で5コース作成しているのだが、そのうち、いくつかを王家に回せないだろうか?」


叔父様が言ってきた。


「いくつ回せばいいでしょうか?」


「そうだね、真っ直ぐの基本は、あった方がいいだろ?」


「はい。」


「では、2コースほど、王家の献上品に。」


「わかりました。では、叔父様、シェリルに伝言をお願いします。基本3コースと、片山のコース3コースに変更するようにと。」


「アウエリア、1コース増えてないか?」


「王家に献上するのです。1コース位、増えても、しょうがないかと。」


「そ、そうだな。」


職人さんは大変かもしれないが、うん、頑張れ。


「お父様、私が王宮へ通う件ですが。」


「もう、展示室のデッサンは、必要ないんだよね?」


「はい。」


宝物庫の方もめぼしい物のデッサンは終わっているが、これは表に出せない話だ。


「申し訳ないが、今まで通り、週に一度は通うようにして欲しい。」


「了解しました。」


そうして、私が王宮へ通う日を迎えた訳だが、王宮では、わざわざ王妃様が私を出迎えた。


「さあ、私の部屋に行きましょう。」


結局、この日は、王妃様とのお茶会だけで時間が過ぎていった。

今後は、こういった感じになるみたいだ。


そして、別の日。

私は、お父様の出勤に併せて、王宮へ向かうことになった。

どうやら、私がパターゴルフを説明するらしい。

いや、散々、練習してたんだから、お父様か叔父様が説明すりゃあ、いいのに。


私とお父様が王宮へ着くと、出迎えてくれたのは、王妃様だった。


「王妃様、どうなされました?」


お父様が、驚いたように言う。

って、事は予定外の事なんだろう。


「陛下が執務室でお待ちよ。さあ行きましょう。」


そう言って、王妃様が私に手を差し出した。


はいはい、手を繋ぐのね。


って、待って?

陛下の執務室?


「お、お父様、陛下に謁見するのですか?」


「安心していい、執務室だからね。問題ないよ。」


いやいやいや、場所は関係ないよね?

えっ・・・。


「心配しなくても、私が側に居るから大丈夫よ。」


おおー、心強い。

持つべきは親戚か。


「パターゴルフって、どんなのかしら、楽しみだわ。」


「陛下の執務室に設置したんですか?」


「ああ。とりあえずね。」


私の問いにお父様が答えてくれた。


それにしても、陛下に謁見する日がこようとは。





「初めましてアウエリア・ピザートと申します。」

礼儀作法でならった、最上級の挨拶をする。


「ここは執務室だ。そう畏まらなくてもよい。」


「アウエリア、こちらに座りましょう。」


そう言って、王妃様が私を長椅子に招いた。


「どうして王妃がここにおる?」


「あら?私がアウエリアの側に居て、何の問題が?」


「王妃としての執務もあろうに。」


「ご不満があれば、いつでも離縁してくださって結構よ。」


「また、それか・・・。」


不穏な空気が流れる。

私、ここに居ていいの?


「陛下が離縁してくだされば、私は遠慮なくアウエリアと過ごせるのよ。」


「もう、その話は、終わっておろう。それに今は、エカテリーナ殿が、手放すとは思えん。なあ、宰相。」


「既にアウエリアを娘以上に思っているようで・・・。」


「エカテリーナ様に渡すべきでは、なかったわ。」


「今更だ。もういい。それよりもだ、今日は話がある。」


そう言って、陛下は私の方を見た。


「パターゴルフのお話ですか?」


「それは後程な。話が終われば呼ぶ故、王妃は席を空けるがよい。」


「私がアウエリアから離れるとでも?」


「・・・。」


「陛下、私が居たら話しにくい話かしら?それなら余計に、話して頂きますわ。」


「宰相、説明を頼む。」


「わ、わかりました。」


お父様が一息ついて説明を始めた。


「実は今になって、またテセウスの涙が話題になっていてね。」


「何ですか、それ?」


「アウエリアが見つけた宝石だよ。」


「ああ、あれ。そんな名前でしたっけ。」


「テセウスの涙が発見されたときに、アウエリアが居たという話が出回っていてね。」


「でも、ドワーフの国に展示してあるんじゃあ?」


「そうだけどね。アウエリアがあの場に居たというのが、バレてしまったようだ。」


まあ、あそこに居たのは確かだし、全員に口止めなんてできないよね。

最後には大層なお迎えまで来てるし。


「それに一体、どういう問題が?」


そう聞いたのは王妃様だ。


「アウエリアに接触を図る者が出てくる可能性があります。」


「もうすぐ社交シーズンですよ?貴族に、そんな暇がありますか?」


「社交シーズン中は問題なかろう。むしろ社交シーズン中に余計に情報が広まるだろうがな。」


そう答えたのは、陛下だった。


「で?アウエリアをどうしようと?まさか国外に?」


「いえ、暫くアーマード伯爵領に居てもらおうかと。」


「いつからですか?」


「社交シーズンが終わってからだよ。」


「では、その間、私もアーマード伯領へ滞在するわ。」


「馬鹿を言うな。王妃の公務はどうするのだ。」


「知った事じゃないわ。」


「「・・・。」」


陛下とお父様が絶句した。


「ちなみにエカテリーナ様は、どうするのかしら?」


「エカテリーナ殿を王都から動かすことはできん。」


「でしょうねえ。」


なんで、お母様が動けないんだろ?


「エカテリーナ様には、もう説明を?」


「いえ、今からです。」


「お母様が動けないってどういうことですか?私がアーマード伯領に行けば、ついてこられると思うのですが?」


「エカテリーナ殿は、わが国でも3本の指に入る魔力量をもっておるのだよ。」


陛下が説明してくれた。


国内で3本指って・・・。

確か、王宮内の屋敷の一つに大賢者が住んでるとか。

ゲームで出てこなかったから知らなかったけど、今までの授業で習った事だ。


3本指って、大賢者って言われる人に匹敵するのか、恐るべし、お母様。


「という事は、私は一人でアーマード伯領へ行けばいいわけですね?」


「サスロが、戻る時に一緒に行けばいいよ。」


「わかりました。お母様への説明は、お父様の方で、お願いします。」


「・・・。」


「では、私もその時に。」


「だから、駄目だと言っておろう。」


険悪なムードだ。

陛下と王妃様でこれだ。

お母様だと、どうなるんだろう。

よし、考えたら負けだ。考えないようにしよう。


「そろそろパターゴルフをしませんか?」


険悪なムードに耐えかねた私が、提案した。


「それがいい。」


真っ先に乗っかったのは陛下だった。


「陛下、後程、話の続きを。」


王妃様は、諦めてないようだ。





さて、簡単にパターゴルフの説明を。

といっても、ドライバーやアイアンと違って、パターに標準な持ち方なんてない。


長尺パターで、あごに付けたり、お腹に付けたりといったスタイルが一時期流行った事もある。

廃れた原因は、アメリカのツアーで禁止されたからだ。

禁止されたって事は、効果があるという事だ。


という事で、パターに関しては、これが正解というものは存在していない。


だから持ち方は自由にしてもらい。


初心者コースで、私が試し打ちをする。

一発でカップインした後、王妃様にやってもらった。


おっ、王妃様も、どストレートだ。

そして・・・。


お母様と同じで、カップ上を通り過ぎていく。


「ねえ、アウエリア。穴が小さいんじゃない?」


言う事まで、お母様と一緒だ。


「王妃様は、真っ直ぐ打てますので、力加減が分かれば、直ぐにカップインするようになりますよ。」


「そうかしら?」


王妃様は、数打打ったところで見事カップインした。


その後、練習をした王様もカップインした。


「ふむ、これは私室にも欲しいな。」


「では、手配しておきましょう。」


「私の部屋にもお願い。」


「畏まりました。」


うーん、頑張れ、アーマード商会の職人たち。

私は心の中で、そっと応援した。

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