第25話

いや、なんか多くね?

ざっと見ても20人以上・・・。


えっ?リリアーヌ。

どう連絡したら、こんな大勢来るの?えっ?


私が呆れていると、いつもの様にクロヒメが頬を寄せてきた。

私は、条件反射で、クロヒメの頬を撫でた。


「ふふふふん?」

お砂糖は?と聞いてきた。


「ある訳ないでしょ。我慢しなさい。」


「ふん・・・。」


「って、なんであんたがここに?えっ?」


ビックリだ。

何気なく頬を撫でた私にもビックリだけど。


「お嬢様~。」


そう言って、兵士の一団から、馬具屋の姉ちゃんが駆け出してきた。


はい?

何でこの人まで、ここに?


「ちょうど、御用聞きで、お屋敷に居たら、クロヒメが勝手に抜け出す騒動に遭遇しまして。」


「えっ?」


「ここに来る兵士の一団に、勝手について行こうとしたらしく、誰にも止められず、私が対処する事に。」


「えっと・・・、対処した結果、一緒にここに来たと。」


「はい。」


えっと・・・、この人、名前なんだっけ・・・。


「スザンヌさんです。」


リリアーヌが耳元で小さく囁いて教えてくれた。


さすが、出来る側仕えっ!

もう出来る側でいいよね。


「面倒に巻き込んでしまって申し訳ありません、スザンヌさん。」


「お嬢様、私は出入りの業者ですから、さん付けは不要ですよ。」


また、これか。


「あっ、そう・・・。」


グリグリと頬を押し付けてくるクロヒメ。

まるで、褒めて、褒めてと言わんばかりだ。


が、褒める訳ないでしょ?えっ?

むしろ、叱るべきところだと思うが。


まあ、いいや。


「あの、スザンヌ。どうしてクロヒメは、宿の厩舎に入ってないの?」


「一応、隣は牝馬にしてるのですが、どうやら狭くて気にいらない様です。」


勝手についてきて、なんて我儘な・・・。


「クロヒメ、厩舎に行くわよ。」


「ふふん。」


とりあえず、大人しくついてくるクロヒメ。


しかし、厩舎の前につくと、いやいやと首を振る。

まあ、その仕草は可愛いんだけども。


「勝手についてきたのは、あなたでしょ?我慢しなさい。」


「・・・。」


凄く不満そうな顔で、私を見る。


暫くして、ようやく厩舎へとおさまった。


「お嬢様、これを。」


そう言って、リリアーヌが、角砂糖を渡してくれた。


「どうしたの、これ?」


「宿で貰って来ました。」


「そう、ありがとう。」


「はい、クロヒメ。」


私は手のひらの上に、角砂糖をのせて、クロヒメの前に差し出した。


ほむほむ。


美味しそうに、食べるクロヒメ。

これで、少しは、機嫌が直るといいんだけど。





兵士な人達は、3交代で宿の警護をするようだ。

ご苦労様です。


急遽、雇ったヒャッハーなボス達は、今日は宿で休んで、明日、帰るようだ。

まあ、私達もその予定だ。


ドワーフ達は、私たちの出発を見送った後に、ドワーフの国に帰るそうで。

うわっ、ドワーフの国、行ってみたい。


その晩、私は、モソモソと布団に潜り込む。

リリアーヌが堂々と隣で、寝ようとするのは、無視だ、無視。


がっ。


反対側に、ヘスティナが潜り込んできた。


ちょっ、狭いんですけどっ!


そんなこんなでも、私は即、寝れた。

の〇太、ならぬ、のび子か私は・・・。





朝、いつもの様に紅茶の香りで目覚めると、部屋にあるテーブルの席には、ヘスティナが既に着いていた。


ふみゃ、ふみゃ。


「おはよう。」


私は、二人に挨拶した。


「「おはようございます。」」


二人ともにこやかに返してくれた。


「朝の紅茶っていいですね。癖になりそうです。」


「アーリーモーニングティーって、言うのよ。」


私が教えてあげた。


「紅茶の香りも昨日と違いますね。」


「今日のは、ブレンドしております。」


リリアーヌが答えた。


屋敷で紅茶を飲むことが多いのだが、リリアーヌとダリアの紅茶は、毎回違う。

色々と工夫してるのだろう。

マメだなあ。


「ブレンドのコツってありますか?」


「そうですね。ヘスティナさんは、冒険者ということですし、色んな場所へ行かれますよね。」


「はい。」


「では、まずは水に合わせる事でしょうか。」


「はい?」


「水で紅茶の味は変わりますので。」


「そうなんですか?」


ヘスティナは驚いていた。


そう言えば、前世では紅茶で有名なリプトンが、水で味が変わる事に気が付いて、その地域地域で、ブレンドを変えてるってのを何かで聞いた事がある。

日本の水道水と日本人の味覚に合わせてブレンドされてるから、水を変えちゃうとイマイチだった気がする。

それを知らない友人が、購入したお高い水を使って、「やっぱり、水が違うと紅茶も美味しいわ。」なんて、知ったかぶりしてたけど・・・。


私は、二人の会話を聞きながら、アーリーモーニングティーを楽しんだ。


私たちが朝食をとる頃には、ヒャッハーなボス達は、出発した後だった。

荒くれ風なのに、朝が早いのは、さすが冒険者と言うべきか。





私、リリアーヌ、エンリ、ヘスティナの4人は、馬車に乗っての移動となる。


「お嬢ちゃん、エンリの事を頼むな。」


ディグレットさんに、そう言われた。


「はい。」


「ううう、私はまだ、残りたかったのに。」


「お嬢ちゃんに、原石貰ったんだろ?それでいいじゃねえか。」


「それは、そうですが・・・。」


原石の価値は1万ゴールドくらい。

それが、王都の街に戻ると、あら不思議3倍に跳ね上がる。

まあ輸送費がかかるから、そんなもんか。

それを職人がアクセサリーに加工すると、なんと100倍に。

この辺は、職人の腕にかかっているので、誰でも100倍になる訳ではない。


まあ、この辺りは、前世でも変わりはないか。

300万円の指輪の原石って、現地の価値は微々たるもんだったしね。


私が馬車に乗り込む前になって、クロヒメが私に纏わりつく。


乗る?ねえ、乗る?


乗らねえよっ!


なんとかクロヒメを宥め押しのけて、馬車に乗り込む。クロヒメには、スザンヌが騎乗する。


迷惑かけて、本当にすまんっ!


それにしても、アレだ。

周りの人たちが引くくらい大仰だ。


馬車を取り囲むは20名を超える兵士たち。

何、これ、本当・・・。


ドワーフの一団に見送られ、私たちは、帰路についた。


「宝石のデザインは、どうしましょう?」


エンリが聞いてきた。


それ位、自分でやりなさいよ・・・。


石拾いが1日で終わった事は、私の責任だが、賞品の原石をあげたんだから、それで勘弁してほしい。


「お嬢様のお披露目の方ですよ?」


そっちかっ・・・。


「うーん・・・、参考になりそうなのは、レントン商会もアレだけっぽいし・・・。」


「王宮の展示室はどうですか?」


「何それ?」


私はエンリの提案に首を傾げた。


「王宮の展示室は、貴族しか入れません。」


リリアーヌが答えた。


「ふーん、リリアーヌは入れないのね。」


「はい、ですが、飾ってあるのはイミテーションです。」


「デザインの参考にするなら、イミテーションでもいいと思いますよ。」


「確かに・・・、まあ帰ったら、お父様に相談してみるわ。」


「きっと、お嬢様なら、素晴らしいデザインが完成すると思います。」


「デザインってどれ位で、終わらせた方がいいの?」


「師匠なら作るのに1週間もかかりませんから。」


「じゃあ、ゆっくりできるわね。」


「お嬢様、お披露目の衣装は、アクセサリーに併せて作る予定では?」


「うっ・・・。」


そうなってくるとデザインも前倒しになる訳で。

ま、まあ、なんとかなるでしょう。


そうこうしてると、私たち一行は、休憩ポイントで停車した。


さてはて、クロヒメは疲れていないだろうか?


馬車から降りると、私達とは別の兵士の一団があった。ざっと見、30名は居る。


どこの一団だろうか?

王都内だから、野盗というわけではないだろう。

格好も、こっちの兵士たちと同じで、ピシっとしてるし。


一団の長っぽい人が、私の方に向いて歩いて来た。

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