一章 大魔王学園入学編

第5話 ファーストデュエル


 数日後──。


「これが学生服か」


 真新しい白の学生服に袖を通しながら俺は身だしなみをチェックしていた。

 父さん譲りの黒髪に一部混じっているのは母さんと同じピンク色の髪。アメジストの瞳は魔力を込めれば魔眼としての効果を発揮する。

 成長期なので背は伸びていて、今では父さんより僅かに高い百八十センチだ。

 魔法だけに頼らないよう毎日森を走り回って鍛えた体はバランスのいい筋肉が宿る。


「俺が着ると平凡な服もたちまち舞台衣装へと早変わりだな」


 自分の罪深さに酔いしれながら身だしなみを確認し、教科書の入った鞄を手に持って寮の部屋を出る。

 見た目にインパクトのある技で実技試験を突破した俺は中央大魔王学園への入学を果たした。

 当然の結果とも言えるが、どうやら合格した一般入学の生徒はそこまでいなかった。

 学園に通う生徒の大半はエリート魔族の子供で推薦組と呼ばれる者達らしい。


 一般魔族に割り当てられたオンボロ寮から教室のある校舎に向かって歩いていると、道の途中で赤い学生服の子供達と合流する。

 彼らの制服には金の刺繍が施され、胸元には様々な形の紋章があしらわれている。

 俺の制服には当然そんなものは無かった。


「げっ、推薦組だ」


「おい。目を合わせたら絡まれるぞ」


 同じ寮に住む同級生達が鞄で顔を隠したり、うつむきながら小走りで校舎へと駆け込んでいく。

 彼らがあそこまで恐れるとは、推薦組はやはり格が違う強さを持っているのだろう。

 まぁ、俺から言わせてもらえば現代の魔族はレベルが低くなっているとは思うが。

 そもそもかつての魔族は七人の魔王が覇を競い合っており、魔王は勿論その臣下も毎日戦闘に明け暮れていたのだ。

 それに比べて現代は魔族が統一され、大きな戦が何百年も起きていない平和な時代だ。

 平和が悪いことだとは言わないが、実技試験の様子を見るに弱体化しているというのが俺の見立てだ。


 赤服にニヤニヤと見られながら校舎に辿り着くと入り口の掲示板にクラス分けが書いてあった。

 俺のクラスは1組らしい。

 魔族のトップを目指すこの俺がナンバーワンの1とはなんと縁起がいいのだろう。

 合格時に渡された校舎の地図は頭の中に入っているので迷うことなく教室に着いた。


「おい、白服がまた一人増えたぞ」


「下僕くん一名ごあんな〜い」


 教室に着いてそうそう俺の前に二人の赤い制服の男達が立ち塞がった。

 視線を少し逸らすと、顔を腫らして教室の床で泣いている白い制服の男子がいた。


「ねぇ、きみ。そこのやつみたいにボロ雑巾になりたくなかったらお小遣いくれないかな?」


「無茶言うなよ。一般入学の底辺魔族が金なんて持っているかよ。物々交換してる連中だぞ」


 これはどうやら絡まれているという状況か?

 この色欲の魔王であるアスモデウスが大したことない魔力の若造にか?


「おい、なに黙ってんだよ」


 俺の態度が気に食わなかったのか、二人組の片方がこちらの服の襟に向かって手を伸ばしてきた。


 ……まさかこれは父さんが教えてくれたテンプレ不良学生というものではないのか? そんな、実在する生き物だったとは驚きだ。


「触れるな。シワになる」


 伸ばされた手を軽く払い、俺は近づいてきた男子生徒の耳元で魔力を込めて囁く。


「しばらく眠っていろ」


「ふぁい…………すぴー、すぴー」


 俺の声を聞かされた生徒は膝から崩れ落ちて地面に寝転がった。


「おい、てめぇ何しやがった!」


「イライラしているのは睡眠不足のせいだと思ったので休ませてやったのだ」


 軽い〈催眠声ヒュプノボイス〉を使っただけなのに倒れるとは魔法に対する耐性が弱過ぎるな。

 エリート魔族と聞いて期待していたが、この程度の実力なのか?


「このヤロウ!」


「ちょっと、朝からうっさいわよ。それにみんなの邪魔になっているから退きなさい」


 俺達の間に割り込む影があった。

 まず視界に入ったのは真っ赤な艶のあるツインテールの髪。次に勝ち気そうな大きな瞳。ギラギラと輝くルビーのような緋色の目だ。

 まだ少女と呼ぶのが相応しいが、いずれは絶世の美女になるのが約束されている原石の娘の登場に視線が集まる。


「アンタ、白服のくせに赤服に喧嘩売るなんて生意気そうね」


「逆だ。あちらから絡んできて、俺は喧嘩を売られた側だ」


「そんな態度じゃこの学園で長生きできないわよ」


 ツインテールをなびかせて、少女は窓際最後方の席に座った。


「あの子って、確か大魔王様の直系の!」


「貴族より更に上の王族かよ」


「本物のお姫さまなんて生で見たのはじめて〜」


 教室がざわざわと騒がしくなる。

 ふむ。あの娘は大魔王の血縁なのか。


「はーい、皆さん席について……って、なんじゃこりゃ!?」


 遅れてやって来て男性教師が教室の惨状を見て驚いたところで初登校の騒ぎは終息した。

 俺に絡んで来たやつも気の強い娘や教師のいる前では暴れるつもりもないようで腹立たしそうにこちらを睨んでいる。

 全員が席に座ってから始まったのはこの学園でのルールや成り立ちについての講義だ。

 ルールについては入学のしおりに記載してあったことと変わりないので聞き流し、学園の成り立ちについて注目しておく。


「みなさんは将来の魔王軍の戦士としてこの学園に通っています。優秀な成績で卒業した生徒は即座に幹部になることもできますよ」


 やはりこの時代の魔族は前世の俺がいた頃と変わっているな。

 大魔王の統一により魔族はひとつの巨大な組織として編成されている。

 優秀な魔族には人間社会のような貴族としての地位が渡され、爵位によって優劣が決まっている。

 魔族同士で殺し合いをするのが日常だったのに随分と平和になった。


「かつての魔族は血生臭い戦争をしていましたが、今は魔族間での戦争は禁止されています。これにより我々はめざましい文化の発展を遂げたのです。その成果の一つがこの中央大魔王学園の誕生です」


 戦争の禁止か。

 同格だった魔王の何人かが聞いたら反発しそうなルールだな。奴らは戦闘狂でわざと戦いを長引かせるような奴もいたな。

 俺は無駄な争いが嫌いなので売られたものだけ相手をしてた。戦うよりは女に囲まれていた方が幸せだろうに。


「私達が今の生活を送れているのは魔王軍と大魔王様の存在があってこそなのです」


 最後に大魔王を讃える言葉を教師が口にして入学後初めての講義が終わった。

 座ったまま教師の話を聞くのはつまらんと思っていたが、自分の死後の歴史を学ぶというのは中々に興味深いものだった。




 ♦︎




 最初の講義が終わった後、俺達のクラスは広大な学園の敷地にある演習場にいた。

 学園での授業には座学と実習の二つがあるが、割合としては後者が多い。

 だだっ広い平地の真ん中に集まり、教師が実技内容を話す。


「これより諸君らには実力テストを行なってもらう」


 教師のひと言に生徒から驚きの声が出る。

 テストの内容は二人組を作って模擬戦を行い、それを教師が評価するのだそうだ。


「それと模擬戦では相手を殺傷させるような魔法は使用禁止とする。だがしかし、大怪我くらいならば回復魔法で治癒できるのでヨシとする」


 流石は魔族一の教育機関。

 貴重な回復魔法を使える人材を保有しているのは優秀だな。


「では、名前を呼ばれた者は前に出るように」


「赤服と当たりませんように……」


 俺の隣で朝から教室で泣かされていた男子生徒が必死に祈っていた。

 しかし、彼の祈りも虚しく白服を着た者は全員が赤服の対戦相手をしなくてはならない組み合わせになってしまった。

 そんな中で俺と模擬戦をすることになった不幸な相手は……。


「ふん。アンタが私の相手ってわけね」


「随分と余裕そうだな」


「当たり前でしょ。この私が白服相手に負けるわけないもの」


 今朝の気の強そうな娘だった。


「あーあ、死んだわあの白服」


「お姫様って既に魔王軍幹部候補の実力者じゃなかったっけ?」


「彼女が使う噂の大魔法を見たかったけど、それどころじゃねーな」


 周囲の反応はほぼ全員が相手の娘の勝利を信じて疑わないものだった。

 白服の生徒も俺を気の毒そうな顔で見ている。


「先生。対戦相手を変えてくれませんか? こんなのが相手じゃウォーミングアップにもならないわ」


「フェイト・サウザンドウォールくん。これは君の力の制御を見る目的もあるのだ。君がどれだけ魔法の精度を身につけているかを知りたい


 あげくには教師まで相手を応援していた。

 ずっと気にはなっていたが、この学園では着ている服や出身だけでかなり差別があるようだな。

 生徒だけではなく教師まで加担しているとなると親世代以上も同じ価値観を持っているのか。


「仕方ないわね。さっさと終わらせるわよ」


「ふっ。自分の勝利を疑っていないようだが、気をつけておけよ」


「はぁ? どういう意味よ」


「プライドが高いほど敗北の辛酸は苦いものだぞ」


「……私が負けるって言いたいわけ?」


 俺の気遣いに対して彼女の声が低くなる。

 おや? 気に障ったのか?


「あいつ馬鹿かよ。お姫様に喧嘩売ったぞ」


「白服の虚勢だろ」


 赤服の外野がげらげらと笑う。

 教師も困ったような顔で俺を見た。


「白服のくせに生意気ね。ただ負かすだけじゃつまらないから賭けをしましょう」


「フェイト・サウザンドウォールくんそれは……」


「先生。決闘誓約ギアス・スクロールを承認をお願いします」


「本気かね!? まだ入学初日だが」


「学園の生徒であれば権利があるはずですよね。この世間知らずの白服に常識を教えてあげるんです」


 教師は驚いた顔をしていたが、好戦的な彼女の態度に押されて何かをしぶしぶと了承した。


「アンタもそれでいいわよね」


決闘誓約ギアス・スクロールとはなんだ」


「そんなことも知らないとか田舎者なの?」


「あぁ。辺境の出身でな」


「契約魔法の一種よ。決闘をする時にお互いが物や立場を代価にして破れないようにするの。違反者には肉体と魂に耐え難い苦痛を与えて最悪死ぬわ」


「なるほど理解した」


 俺が死んでいる間にそんな魔法が出来たのか。

 少し待つと教師が勝負のルールを書いた羊皮紙を持って来た。


「私が勝ったらアンタは卒業まで下僕になってもらうわよ。小間使いとしてパシリにしてあげる」


「そうか。ならば俺が勝ったらお前は俺の物になるがいい」


「「ぶふっー!?」」


 俺の条件を聞いて周囲の連中が噴き出し、腹を抱えて笑い出した。

 目の前のフェイトは額に青筋を浮かべながら拳をワナワナと振るわせている。


「上等よ。私を舐めてくれたお礼をきっちりしてあげるわ」


 羊皮紙に血判とともに魔力を流し込むと紙が青い炎に包まれて燃えた。

 これで契約成立というわけか。随分と面白そうな魔法だな。


「それでは両者、決闘の名乗りを」


 教師を中心として俺と彼女が向かい合う。


「大魔王が直系、フェイト・サウザンドウォール」


「淫魔族のハーフ、アスモデウス・ラスト」


 怒りに満ちた顔でフェイトが俺を睨み、その怒りに呼応するように魔力が漏れ出している。


「決闘開始!」


 戦闘開始の合図と共にすぐ動いたのはフェイトだった。


「一撃で終わらせてあげる!」


 フェイトが手を前にかざすと周囲の空間に魔法陣が浮かび上がる。

 ふむ。これは少しマズイな。


「〈超獄炎大火球メガフレイム〉」


周囲の大気を歪ませるほどの熱を持った炎系魔法の上位魔法だ。

 驚くべきは魔法の構築速度で、フェイトはさも当然のように発動させた。


「まだまだいくわよ」


 一つ、二つ、三つ。

 人間を軽く飲み込むサイズの巨大な火球が現れて俺をロックオンする。

 上級魔法の多重展開。魔法を発動させるスピードも問題なく、息切れしていない所を見るに魔力量も一般の魔族と比べものにもならない。


「どう? これだけの魔法、アンタなんか掠っただけで死ぬわよ」


「当たれば、の話だな」


 俺が鼻で笑うと教師が割り込もうとして来た。


「勝敗は明らかだ。よってアスモデウス・ラストの敗北を──」


「断る。これは俺とフェイトの決闘だ。審判役は大人しくしていろ」


 勝手なことをされては困るな。

 俺はこっそりと魔法を使って教師を黙らせる。


「威勢がいいわね。流石に殺すのはルール違反だから大火傷で許してあげるわ」


「殺すつもりで構わんぞ。俺は死なんからな」


「だったらお望み通りにしてあげるわよ!」


 フェイトが俺を指差して待機させていた魔法をリリースする。

 流れ弾に警戒したのか俺の後ろにいた観戦客の生徒が慌てふためきながら逃げる。


 この時代にも骨がありそうな魔族はいたんだな。

 ならば今後の成長のために俺が格の違いを見せつけてやろう。


 俺をめがけて飛来した火球は三つとも狙い通りに着弾して大爆発を引き起こした。

 爆煙が昇り、地面に大きなクレーターが出来た。


「ふん。淫魔族なんて所詮は口だけの低級魔族ね」


「それはどうかな?」


「なっ……!?」


 勝ち誇ったような顔をしたフェイトに声をかけてやる。


「どうしてあの攻撃を受けて無事なのか驚いているな? 答えは簡単だ」


 煙が晴れていきフェイトの視界に俺の姿が映る。

 そこには全くの無傷でクレーターの縁に立っている俺がいた。


「攻撃が当たっていないからだ」


「嘘よ! 私は狙いを外さないわ!」


「そうだとも。だからその狙いをズラさせてもらったんだ」


 俺の瞳が魔力を灯しながらうっすら発光する。

 ネタバラシをすると〈色欲の魔眼〉による強制催眠を使った。

 フェイトは魔法を発動させる時にしっかりと狙いを定めるために俺を目視したがその時に催眠状態にして位置を誤認させたのだ。


「命中率が仇になったな」


「魔眼の力ね。そういえば淫魔族は精神に干渉する魔法を使うって聞いた覚えがあるわ。でも、それは高位魔族に効かないはずよ!」


「違うな。高位魔族に効かないのではなく、術者より強い相手に通用しないだけだ」


 驚くフェイトに俺は告げてやる。


「つまり催眠にかかったお前は俺より格下なわけだ」


「〜っ!!」


 顔を真っ赤にさせて声にならない怒りを燃やすフェイト。

 うん。こういうタイプの女は怒り顔も非常に似合うと思っていたんだが百点の反応だな。


「だったら逃げ場のないよう広範囲の魔法で叩く!」


「そう。それが正解だ」


 空中に次々と新しい火球を用意するフェイト。

 それを見て彼女の初見な魔法への対応の早さに感心した。

 格下の者が魔眼持ちを相手にするには目を合わせないよう視線をズラして戦うか範囲攻撃で潰すかの二択だ。

 前者は武芸の達人級でもないと不可能だが、後者なら魔力でゴリ押せばどうにかなる。

 彼女の持つ膨大な魔力がそれを実現させようとしているが、こちらもただ黙って見ているわけにはいかない。


「次は俺の番だ」


 地面を強く蹴り飛ばして彼女へ急接近する。

 フェイトは俺の身体能力の高さに驚いたが、すぐに魔法の照準を修正して放つ。


「しまっ……」


「そうだ。慌てたら目で追ってしまうぞ」


 フェイトの火球は俺の真横を通過して地面に当たる。

 その隙にゼロ距離まで詰めて魔法を発動させた。

〈色欲の魔王〉と呼ばれた俺が使える汎用魔法は実はそれほど多くない。

 フェイトの魔法だって火属性に適正があれば誰でも使えるが、俺には魔法式のコピーこそ出来ても発動させられない。

 だから俺は自分が使える魔法を模索して生み出した。

 これはそのうちの一つ。


 色欲魔法〈触手腕テンタクルアーム〉。


 俺の右腕が魔法によって姿を変える。

 それは人の形をしていない無数の肉片だった。

 ピンクいろのうねうねとした触手へと変化した右腕が魔法を発動途中だったフェイトへと伸びる。


「ひぃっ!?」


 急に現れた触手に驚いたのか魔法が中断される。


「ま、まって! ちょ、どこ触ってんのよ!!」


 素早い動きで俺の右腕は彼女に絡みついて動きを封じる。

 敵を拘束するのにはやはりこの魔法が便利だな。魔力消費も魔眼と比べて少なく汎用性が高い。


「なんか湿ってる!」


「安心しろ。今出してるのは人畜無害な粘液だ」


「どこに安心要素があるの……にゃ!」


 この魔法は俺が開発した中でも上位の素晴らしい魔法だと思う。

 触手は俺の体の一部なので感覚は直接本体へ反映されて細やかな操作が可能。

 長さや太さ、本数まで魔力の加減で調節ができて痒いところに手が届く。


「こうなったら魔法で焼き切って、」


「それは無理だな」


「何を言って……えっ、嘘!?」


 魔法を使おうとフェイトは抵抗するがそうはいかない。


「力が抜けていく……」


「この触手は触れた相手から魔力を抜き取るのだ。捕まったら最後、逃げられん」


 魔族を相手にするなら魔法を使われることを想定しなくてはならない。

 そこで俺は淫魔族の吸精能力を応用して魔力を抜き取ってそれを拘束する力へと変換した。

 どれだけ屈強な魔族でも強ければ強いほど魔力を吸われて拘束がキツくなる。


「うぅ……うぅ……」


「大人しく負けを認めれば放してやるぞ」


「誰が認めるもんですか! 私はアンタなんかに屈したりしないわ!!」


 俺の提案を蹴り落とし、気丈に振る舞うフェイト。

 その心意気や良し。こちらも本気にならなくては無作法というものだ。


「ならば耐えてみせろ! 俺のテクニックに!!」


「んんっ♡ やっぱちょっと待っ──」



 ♦︎




「認めよう。お前は強い」


 右腕の魔法を解除して俺はフェイトを解放した。

 全身を触手に弄られながらも降参を宣言しなかった彼女は魔力を全て奪われて気絶してしまったのだ。

 全身がヌメヌメで体を痙攣させてはいるが、ただの一度も弱音を吐かなかった。


「これほど強情なやつは千年前でもいなかったぞ」


 彼女の精神力は既に魔王クラスとでも言うのか。

 この諦めない根性に実力が追いつけばかの魔王達を超える戦士になれるだろう。


「……勝者、アスモデウス・ラスト……」


 静寂に包まれた演習場で教師が勝利宣言をするが俺としては引き分けに等しい。

 模擬戦を見ていたギャラリーの反応は二つに分かれていた。

 具体的には青ざめてドン引きしている女子と真っ赤な顔で前屈みになっている男子だ。


「ふっ。俺のあまりの活躍に感激して声も出ないようだな」


「「いや、全然違うけど!?」」


 どうやら俺は入学初日から学園の注目の的になってしまったようだな。

 故郷の父さん、母さん、俺に学園で初めての女が出来たのでいずれ紹介するよ。




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