第32話 破壊要塞シシシリア
破壊要塞・シシシリアの主砲が充填されていく。
オペペペラ艦長の紗希は、畑中に連絡を取っていた。
「もしもし! 畑中さん!!」
『お聞きしたい事は分かりますが、1つだけ言わせてください。僕が名付けたわけじゃありません!!』
「シシシリアとか言うヤツの、オリジナルの名前!! 教えてください!! 場合によってはわたしの中でルワイフルの評価が割と落ちますよ!!」
『……オシリンです』
「…………」
『オシリンです』
「2回言わなくても聞こえてますよぉ!! ねぇ、ルワイフルってなんでこんなピンポイントで日本語の下ネタに引っ掛かるんですか!? おかしいじゃん!! オペペペラはオッペイだったでしょ!? ああ、もぉ! 決めた! わたし、ルワイフルの王になる!! そして上品な異世界を作る!!」
来海紗希さん、紆余曲折の末、スローライフのため天に立つ覚悟を決めた。
マントを翻して、紗希は指示する。
「ミリアちゃん! こっちも撃つよ! なんか強いヤツ!!」
「えとえと! オペペペラ砲が1番破壊力の高い砲門ですが!! ルビー様の故郷を焼き尽くした時のエネルギー充填でよろしいですか?」
「んー。まあ、そだね。別にあっちが殺意持ってるからって、こっちまで殺意持ったら同じ低次元に立つことになっちゃうし。お仕置きするくらいにし」
通信が入る。
『ブゥーハハハハ!! 兄上ぇ! 聞いておりましたが!! なんですかぁ? その乳の貧相な女に無敵要塞を乗っ取られてるんですかぁ!? バカだなぁー!! 絶世の美女ならはべらせるのも分かるけど、乳も貧相、尻も貧相、なんか無理して脚だけ出して! 必死過ぎるんですがぁぁ!! しかも太ももだけなんか太いしー!! あのぉ、乳や尻と違ってぇ、脚って太くても出す意味ないんですよぉ? 分かりますぅ? 兄上、そういうご趣味でしたか!? ブゥーハハハハ!! ぷっ、薄目で見たら消えそうな乳!! ブゥーハハハハ!!』
「……ミリアちゃん。……あと、みんなも。……いいね?」
「あ。はい。オペペペラ砲、フルチャージします。総員、揺れに備えてください」
逆鱗にタッチしまくったモッコリンド。
女子高生にスタイルのディスは厳禁なのに、乳、尻、太ももの欲張りパック。
紗希は手を伸ばして、かつてないほど声を張って命令した。
「オペペペラ砲!! 撃てぇ!! あと、わたしとルビーちゃんとラミーさんは揺れるとこないから!! 振動に備える必要なし!!」
「ひぅぅ! おっしゃる通りです!!」
「あ。私はついに紗希の仲間認定されたんだな。でも、あんまり嬉しくない」
オペペペラ砲の充填の方が後だったのに、シシシリア砲よりも先に発射する。
シシシリアもチート戦艦だが、オペペペラは無敵要塞。
似たようなものが2つあれば、良い方を相手にあげるのがお年寄りのジャスティス。
先代最長老の優しさがここで活きる。
『……は!? ちょ、待てよ!! あ、待って!! 汚いぞ、貴様ら!! うちは余のワンオペなのに!!』
「うるさーい!! うちだってミリアちゃんしか働いてないよ!!」
シシシリア、主砲の直撃を受ける。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「フハハハハハ! やったな!!」
「ほわわわわわわ! やりました!!」
「ああ。完全にやったな。あれで生きているはずがない。完全にやった」
「ルビーの故郷が焼き尽くされたシーンを思い出しますぅ! やったぁー!!」
「勝利のバーベキューパーリーでぇーす!!」
オペペペラクルーはみんな仲良し。
なお、紗希艦長は日本から来ているので、これがフラグだという事は察知済み。
「みんなさぁ……」
「えとえと! レーダーに反応!! シシシリアからたくさん砲弾が来ます!!」
「ほらぁ!!」
「フハハハハハ!! さすがはリリンソン皇国の血族!! やるではないか! あ゛っ! 今のケツは別に尻を指した訳ではなく、そもそも私は紗希くらいの尻が好きべぇぇぇ」
弟の代わりに制裁を受ける兄上。ルッツリンド第一皇子。
同時にオペペペラが揺れる。
「さ、紗希様……!! オペペペラが揺れるほどの投げ技を……!? あの、ルビーもちょっとだけ良いですか!? 先っぽだけで良いので!!」
「わわわわっ! ほんとに揺れてる!! ミリアちゃん!? 状況教えて!!」
「わぁー! 無視されましたぁー!! ふへへへへっ!!」
独りで愉しめるようになったルビーちゃん。
「えとえと! シシシリアは攻撃に特化した要塞で、先ほどの主砲をどうにか防ぎ切られたことで今はずっとシシシリアのターンです!! あのあの! 次弾が山ほど飛んできます!!」
「わああああ!? ちょ、まずいよー!! はい、誰か意見のある人!! 優勝者には膝枕から耳かき、あとマッサージもつけます!! 全部バイトしたことあるから!!」
クルーの目の色が変わる。
ご褒美ハッピーセットの光は目がくらむに十分な明るさだったらしい。
「私に任せろ!! ついに鏡の精霊の個性発揮の時が来た!! あんなもの、全部鏡魔法で反射させてやる!!」
「フハハハハハ! ラミーよ! かつて私がオペペペラ砲で貴様のとこのなんか古い魔鏡を叩き割ったのを忘れたか! 今回も叩き割られる未来しか見えん!!」
「バカなんですかぁー!! ちゃんと対策してますぅー!!」
「ちゃんと対策する人は、最初から大事な鏡を壊されたりしませんー!!」
「ぶっ壊した犯人が偉そうに講釈垂れるな!! この犯罪者一族が!!」
「別に私は犯罪してませんー! お前が力を示せとか言うから、ガッツリ示しただけですぅー!!」
ルビーとレアのガチ戦力コンビはガチ戦略を思案中。
「あのー。どうにかあっちの要塞に近づけたら、ルビーが外壁を焼いて中に突入できますけどー。多分ですけど、オペペペラより防御薄いんだったらイケます。この前、興奮して夜中にお部屋の床に穴空けちゃいましたから。興奮したら余裕だと思います!!」
「だったらアタシはそのままシシシリアに突入して、制御装置をぶち壊して回りますよぉー!! 破壊のバーリーでぇーす!! さっき消す気満々で主砲撃ちましたし、もうやっちまうのが良しでぇーす!!」
紗希は顎に手を当ててシンキングタイム中。
このモードに入ると、結論が出るまではあとわずか。
「うん! ミリアちゃん! オペペペラになんかさ、小舟みたいなのない? ほら、敵の戦艦に白兵戦しにカチコミかける時に突撃するみたいなヤツ!」
「ほわわわわわわ! 調べます!! ほわわわわわわ!!」
ミリアのクルミが震えた。
苛立っていた紗希の心が穏やかさを取り戻す。
『ノリーオです。オペペペラには強襲揚陸艦・オッパオが備わっていますよ。居住区の角を左に曲がって、しばらく行くと格納庫です。ああ! 僕が名前付けたわけじゃないですからね!! 御武運を!!』
畑中分析官、戦術的撤退を味方にキメる。
「よし! 決めた!! みんな、聞いてー!!」
紗希艦長が作戦を立案した。
「まず、わたしとルビーちゃんとレアちゃん! あと、ルッツくんでお、……おお。ぐぬぬぬっ! オッパオに乗って、シシシリアの横っ腹にぶっこみます!! ルビーちゃんが穴をあけて、中に入ってレアちゃんが暴れます! 機能停止させたあと、艦橋に乗り込んで……」
マントをバサッと翻して紗希は宣言した。
「モッコリくんを、強めに投げますっ!!」
つまり、シシシリアは紗希の侵入を許した瞬間に敗北が確定する事実。
「あのあの! あたしはどうしましょうか!?」
「ミリアちゃんはオペペペラの操縦担当だよ! それに、危ないとこにミリアちゃんは連れて行けないもん!! 時々通信で、わたしを励ましてくれる? 囁く感じで!!」
「ほわわわわわわ! 了解しました!!」
ここからは不安そうな顔をしている2名の質問が始まる。
「ええと、紗希? 私は? あれ? 私、もしかしてさっきのさ。勢いで言った、鏡魔法を頼りにされてるのか!? さすがに、1人で全部は無理だと思うんだ! いや、2つ3つなら反射できるけど!! ……紗希?」
「ラミーさん! わたしね、信じてる!! ラミーさんならね、わたしの信頼を5倍くらいにして反射してくれるって!! ステキなお姉さんだもんね!!」
「よし! 任せてくれ!!」
承認欲求が満たされたラミー。
多分、最も危険なポジションに配備される。
「フハハハハハ!! 私はフィニッシュをキメるわけだな!!」
「んーん? ルッツくんはね、モッコリくんにごめんなさいして。その後、モッコリくんにごめんなさいさせて? ちゃんとできなかったら、多分ね。わたし、2人とも強めに投げると思うな」
最も危険なポジションがすぐに更新された。
いざ、最終決戦へ。
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