第33話 一方的にやられる艦隊戦! ~ラミーさん、死にそう!!~

 来海紗希を先頭に、ルッツリンド、ルビー、レアが格納庫へと走る。

 本来であればオペペペラの中を隅々まで探検する予定だったのだが、あまりにもみんなで入るお風呂が楽しすぎたせいで3割くらいを放置していた紗希。


 格納庫は最たるもので、「だって、興味ないんだもん。お友達の家に遊びに行ってさ、駐輪場見せて! ってならないじゃん?」とのことだが、そこが車庫にならない辺りは女子高生でありバイト戦士でもある証拠だった。


「えーっと! この次の角を曲がるんだよね? あれ!? なんかシャッター閉まってるじゃん! ルッツくん!!」

「フハハハハハ!! 知らぬ!! というか、私だって格納庫に行ったことなどない!!」


「えー。どうするのさー。ラミーさん、もう外に出てもらってるんだよ? なんかドカンドカン言ってるし。早くしないとラミーさんが割れるじゃんか!!」

「ひぅぅ! ラミーさん、割れるんですか!? ルビーも割れてみたいですぅ!!」


 ルビーは割れても再生するが、ラミーは仮に割れると多分お別れになる。


 シャッターがおりているのは、先ほどからオペペペラがシシシリアの砲撃を被弾しまくっている影響である。

 格納庫は全然使われる事のなかった起動メカや最先端技術の兵器などが雑に置いてあり、有事の際に引火したらえらいことになるため一定の衝撃を感知すると自動で隔壁が作動してロックされる。


 安全設計なオペペペラ。


 この後、「焼きますかー?」「ぶち壊しちまいましょう!! パーリータイム!!」とすぐに破壊衝動に駆り立てられる炎髪少女と竜姫の意見に惑わされた紗希が「ミリアちゃんに頼めばすぐなんじゃない?」と気付いたのは5分ほど経ってから。

 その頃、既にオペペペラの外ではラミーがクライマックスを迎えていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「ふふふっ! 私の鏡魔法を舐めてもらっては困る!! 『リフレクトミラー』!!」


 ラミーの伸ばした手の先にはキラキラと輝きを放つ魔鏡が召喚される。

 シシシリアから飛んでくる砲弾を2発、3発と反射させる魔鏡。

 鏡の精霊、ついに大活躍の時。


 バリンと音を立てて、4発目の砲弾が魔鏡を突き破る。


 ラミーは「ふっ」とシニカルに笑った。

 続けて、あまり豊かではない胸を張ってから宣言した。



「だから言ったじゃないか!! 2発か3発ならイケるって!! 私もまさか本当に限界が4発目だとは思ってなかったから! 結構ショックだけど!! これ、無理だ!! もう魔鏡出すの13回目だからな!! つまり、鏡を撃ち破られたのも13回目!! もう心が折れてる!! おい! ミリア!! 中に入れてくれ!! マジでもう無理だ!! ……ミリア? 嘘だろう!? なんで返事してくれないんだよ!! ねぇ、ミリア!? だあああ!? ほら、次が来るからぁ!! ダメだって! これ喰らったらいい感じに服がはだけてセクシーになるとか、そーゆう次元じゃないから!! 肉がはだけてスプラッターになるぅぅぅ!!」


 ミリアはちょうど、格納庫の隔壁を解除しているため通信を切っています。



 シシシリアからは無情にもどんどこ砲弾が飛んでくる。

 ビーム兵器とかであれば魔鏡と相性が良いので結構反射させてラミーの活躍のシーンも増えたはずなのに、現実は没個性精霊に残酷で、シシシリアも太古の要塞。


 オペペペラの姉妹艦であり、ちゃんと似たような高性能自律起動プログラムが備わっていた。

 ラミーを「鏡の精霊やな」と識別したのち「じゃあ、実弾で狙いますわ」と隙のない構えで殺りに来ている。


「あっ。終わった。なんか角度が違うヤツが同時に5発くらい飛んで来てる。こんなもの、鏡出しても割れるだけだ。……1度で良いから、紗希の色んなところを覗きたかった!! くそっ!! お風呂と事故のチラ見えは違うんだぁぁぁ!!」


 断末魔はそれで良いのかと確認したいが、魂が叫んだラミーの前に雪の壁が現れる。

 ラミーは振り向くが、誰もいない。


 上の方から声がした。


「ねぇ、ちょっと! あんた! うちに山ほどブラウス忘れて行ったでしょ。寒い寒いって10枚くらい重ね着してたヤツ。ここまでダイナミックに忘れ物されると届けなくちゃってなるじゃない!! 面倒なんだからっ!! で、何してんのよ?」


 雪の妖精クリスタ、忘れ物を届けるために参上。

 全然援軍の予定はなかったのだが、世話焼きツンデレ妖精は目の前で死にそうになっている精霊がいると無視できない。


 ラミーは涙目で答えた。


「……これが!! 不意に見えるパンツか!! 確かに良いものだ!!」

「……ねぇ。帰るわよ、私。命の恩人に対して、とりあえず下着覗くってさ、頭おかしいんじゃないの? 感想言うな!!」


 ここで格納庫の処理を終えたミリアも通信回線でラミーの援護へ。

 確実に手遅れな流れだったが、まあ生きているのでセーフとしよう。


『ラミー様ぁ! 何故かシシシリアの攻撃方法が変わりそうです! 熱線が来ます!! どうしてでしょう!!』

「あら! ミリアじゃない! へぇー! 普段はオペペペラの仕事を全部1人でやってるってホントだったんだ! あんたもコート忘れて行ったでしょ? 届けに来てあげたわよ! 感謝しなさい!!」


『ほわわわわわわ! クリスタ様! ありがとうございます!! けどけど! クリスタ様に向かってシシシリアの熱線兵器が! あっ! 今、放たれました!!』

「くっ! 熱線とか、ワンチャン活躍できるかと思ったけど! すっごく熱そう!! これ、絶対に魔鏡溶かされて終わる!! けども! 私を助けてくれたクリスタを死なせるわけにはいかない!! 下がっているんだ、クリス……タ。ええ……」


 小さな右手が熱線を受け止めており、雪の妖精は「ふふんっ」と笑った。

 シシシリアを見下ろすために羽を広げて、わざわざ高度を上げる辺りにこだわりを感じる。


「何とか要塞だか知らないけどさ。私、雪の妖精のリーダーなんだけど? こんな熱線で焼けると思ってんの? 言っとくけど、私たちルワイフルの中でもちょー強いのよ? 全力で撃って来なさいよ! 出し惜しみしてる攻撃なんて、全然平気なんだから!! ……ぎゃぁぁっ!! なによ、目ぇ怖い!! こっち見んなぁ!!」


 悲鳴を上げた彼女の視線の先には、首を無理やり曲がらない角度まで折って、クリスタを見上げながら目をギンッと開いているラミーがいた。

 彼女はついに、紗希と同じ感性を得るに至ったのだ。


「なるほどなぁ。確かに、40センチしかない妖精がドレス着てたら、うん。色々見えるな! 結構可愛い系なんだな! それ、やっぱり妖精郷で作ってるのか? 素材教えてくれる? あとで紗希に報告するから!!」

「マジで帰ろうかしら!! もうさ、こいつら全員変態じゃん! なんか私が体張って、下着覗かれながら頑張るのって間違ってない!?」


 そんな時は彼女の出番。

 このロリっ子が何か言うと、だいたい解決する。


『ほわわわわわわ!! クリスタ様ぁ! お願いです! お力を貸してください!! お礼はなんでもします!! あたし、奴隷ですので!! あのあの! 他の奴隷と一緒にご奉仕します!! ご命令ならどんなことでもできます!!』

「えっ!?」


 クリスタは小さな両手を合わせて自分の体の100倍サイズはあろうかという雪玉を作り出すと、勢いよくシシシリアに向かって撃ち込んだ。

 ゴシャッと音がしたかと思えば、次の瞬間には破壊要塞の外壁が豪快にへこんでいる。


「そこまで言うなら、助けてやってもいいわよ! あのさ、ミリア?」

『ほわわわわわわ!』


「私たちって雪で体ができてるからさ。熱があるとダメなの。で、クルミって温かいって言うじゃない? 知らないんだけど。私たち、基本的にみんなぺったんこで生まれて来るから。……あんたのクルミ、触らせなさいよ!! い、いい!? ダメなら」

「か、帰るのか!? クリスタぁ!!」



「は? いや、さすがにこの状態で帰らないわよ!? 私を何だと思ってんの!? ブラウスの精霊のあんたなんか、すぐ死んじゃうじゃない!!」

「……お前、ガチでいい子とか、ヤメてくれ。もう私、何も敵わないじゃないか。散々パンツ見たってはしゃいでた自分が情けないんだが。ミリアの乳なら好きにしていいから、助けてくれ。あと、肌が白いから黒なんだな! 見せていいヤツではないデザインだし、間違いないぞこれぇ!! やったぁ!! とか、考察してすまなかった」


 鏡の精霊ラミーがブラウスの精霊になった。アパレル関係の精霊爆誕。

 そして増援により第1フェーズが完了。



 しばらく熱線やレーザーなどを浴びせられていたが、クリスタが「ウザいわね!!」と砲門を1つずつ雪玉で潰していくと、砲撃の勢いは次第に弱まっていった。

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