第27話 ポギール王国で暴動発生!! ~そんなことより妖精とお話したい紗希艦長~

 オペペペラがアンドゥーを発ってから今日で2週間。

 ツクターン自治領を観光しながら、レアの服を揃えたりしていた。


 なにせ彼女は170センチを超える高身長。

 むっちりした太もも、二の腕もガッチリな格闘タイプ体型。

 ついでにクルミが大変クルミで、ついにミリアのクルミを超えるクルミが登場したのだ。


 それまでは賞金稼ぎの装備を着ていたが、仮にもお姫様にそんな恰好をさせているわけにもいかない。

 紗希艦長の強い意向によって、よりゴージャスな賞金稼ぎの装備を購入した。



 「だって! 好きなんだよぉ!! 女ハンターの衣装がさ!!」とは、紗希艦長の供述。



 その後も観光を楽しんでいたところ、最長老の樹から新しい翻訳機が送られて来た。

 待ってましたとレアに取り付ける紗希。

 なにやらクンカクンカしているが、もう誰もツッコミはしない。


「ふぃー!! これでレアちゃんと普通のおしゃべりができる!! あとね、みんな! 竜族の女の子の髪ってね、すっごくいい匂いするの!! ね、知ってた!? ねねっ!!」

『来海さん。テストお願いできますか? 頑張って作ったので』


「あ、はーい! はっ!! 待って!! 畑中さん!!」

『あ。はい。分かりました』


 畑中、通信回線を切る。

 数秒後、ミリアの胸がぶるぶると震えた。


「ほわわわわわわ!!」

「キタコレ!! んー!! なんて素晴らしいシステム!! 携帯のバイブ機能考えた人には何か賞をあげるべきだよ!!」


『……来海さん。テストを』

「はーい!! ごめんなーさい!! レアちゃん! お喋りしよう!!」


 レアは「こほん」と咳ばらいをした。

 彼女の声は癒し系の優しいボイス。


 聞いているだけで心が穏やかになると、紗希はとっくに高評価を出している。


「オラこんな船さ乗れたの初めてでなぁ! んだべ、こったらことなら、おっとうに電報送れば良かっただすよぉ!! 紗希さぁん! 今日もめんこいだすなぁ!!」

「うん。ごめんね、レアちゃん。前のヤツに戻そう。畑中さん」


『はははっ! 勉三さんみたいな喋り方になりましたね!! いやー! 難しいなぁ!!』

「レアちゃんの声で今の衝撃はね、わたし良くないと思う。次にやったら、投げますから」


 「ノリーオも頑張って作ってるのに大変だな」とラミーは思った。

 「ノリーオさん、わざと紗希様の怒りを買って! ずるい!!」とルビーは思った。


 真相は分からないが、翻訳機はリテイク処理となる。


 ルビーが「ちょっと汗を流して来ますぅ」と言って艦橋を抜け、代わりにルッツリンドがクルミのマフィンを持ってやって来た。

 誰も反応しないので、「抜かしおる」と自分で食べる。


「ところで紗希さん、妖精に会いたいって昨日お風呂パーリーで言ってましたよね?」

「うん、もうレアちゃんはこれでいいや! そうそう! みんなで入るお風呂最高だよね!! 妖精さん、是非見たい!! そして乗せたい! オペペペラに!!」


 緊急会議が後方では開かれる。


「おい! 冗談じゃないぞ! もう絶対に定員オーバーだ!! 私のセリフ、下手するとなくなるだろ、これぇ!!」

「ほわわわわわわ! あたしもきっとただの操舵手になりますね!!」


「……ミリア。頼む。過度な謙遜はもうただの煽りなんだ。私はお前に指を引き金にかけた銃口を向けたくない。ヤメろ!!」

「ほわわわわわわ!! なんだかよく分からないど、すみません、すみません!!」


 出番格差、さらに拡大の恐れ。

 だが、その前にアラートが鳴りモニターに黒いポイントが表示される。


「フハハハハハ! 騒乱の合図だな!! この私! ルッツリンド・リリンソン! リリンソン皇国が」

「これってどこ? なんかすっごく左の端だね? ミリアちゃん」


「くっ! 殺せ!! 言ってる傍から発言権を!! くっ!! 殺せェ!!」

「ルッツさんとラミーさんはジャズってますねぇー!! 仲良しさんですかー。パーリーピーポーですねぇー!!」


 窓際族コンビ、レアがパリピな言葉を使うだけの割と普通の乙女だった上に、117歳というロリババアじゃない、お姉さんババアと言う特殊なポジションをゲットした影響で、ついに出番が1セットに纏められ始めた。


「ほわわわわわわ!! ポギール王国です!! けど、ポギール王国は基本的に人間だけのコロニーですし、争いと言っても戦乱のような規模には……あっ」

「なるほどね! ルッツくんだなー!!」


「あのあの! ルッツリンド様がかつて、王位継承権を獲得されまして! そのまま3年間顔を出しておられないので! もしかすると、王位の争奪が!!」

「ルッツくーん! ちょっと来てー!!」



「フハハハハハ! なんだ紗希! 私と定期的に会話を求めるとは、可愛いヤツめごっすぅぅぅぅん」

「今のは地獄車!! はい! ポギール王国に行くよー!!」


 ついに非公式な技が飛び出したが、地獄車はぐるぐる回るのでミニスカートで使用するとアレがナニして、ルッツリンドは大変幸せそうである。



 それから地獄車に混ぜてもらえなかったラミーといつもの喧嘩が始まるのだが、全部カットされた。

 代わりにルビーがホカホカしながら艦橋へ戻る。


「お風呂気持ち良かったですぅー」

「ああー!! ルビーちゃんが超ミニスカ穿いてるぅ!! ちょっとジャンプして! ジャンプ!!」


「ひぅぅ! あの! よろしければ、飛べもしないのかこの雌ブタが! と言ってもらってもよろしいですか!?」

「えー。可愛い子にそんなこと言えないよ!! けど、それで跳んでくれるの!? ……と、飛べもしないのか」


 紗希がラインを超えそうになったところで、レアが呟いた。


「あ。このポイントのちょっと南東に、雪の妖精郷がありますよ?」

「なにそれ!! 絶対にツンツンした子がいるじゃん!! レアちゃん、行ったことあるの?」


「妖精郷の料理が美味しいので! 最高でぇーす!!」

「ミリアちゃん! ポギール王国の様子ってモニターに出せるんだっけ?」


「えとえと! 通信機と接続すれば、最長老の樹のモニターと同期できます!!」

「くぅぅ! ミリアちゃんのおっぱい振動機が……! けど仕方ない!! ……ん?」


 モニターにクルミを投げ合う人間たちが映し出された。

 銃で撃ち合う訳でも、剣で斬り合うわけでもなく、クルミを投げ合っている。


 紗希がちょっとだけ黙った。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 2時間後。

 ツクターン自治領を抜けて、ポギール王国領に入ったオペペペラ。


 目的地はポギール王国首都の南東にある、雪の精霊郷。


「あの、良いのか? 紗希。同じ人間が争っているのに、放置しておいても」

「……クルミ投げ合ってましたよね? あれ、ホントに放置してたらどうにかなるヤツじゃないですか? あと」


「な、なんだ?」

「わたしが行って、名乗るじゃないですか。来海紗希ですって。もうね、絶対、ぜーったい!! おっぱいの話してくるでしょ!? だって、クルミ投げてるんですよ!? もう絶対、おっぱいとクルミを愛する人間じゃないですかぁ!! というか、ルワイフルではおっぱいもクルミもおっぱいでしょ!! みんながクルミ食べたくなった時にどう口に出すのか疑問だよ!! お父さんとお母さんが夜遅くに、クルミ食べたいなぁって言って、出て来るクルミはどっち!? とりあえず、ルワイフルで私だけだよ、来海がおっぱいじゃないの!!」



「あ。うん。ごめんな」


 ラミーにはもう紗希が何を言ってるのか途中から分からなかったが、処理をする資格があるのは紗希と同じサイズのクルミではないクルミの持ち主の自分だと思った。



「畑中さん!!」

『はい! 僕はクルミさんも個性があって良いと思いますよ!!』


「発音が! おっぱいの方になってる!! 絶対投げますから!!」

『……。ポギール王国の監視はお任せださい。万が一、大きな争いになるようでしたらすぐにご連絡差し上げます。ミリアさんのクルミを揺らします。失礼します』


 ぼったくりセールスはリスクマネジメントが大事。

 踏み込み過ぎると失うものが多いため、危険を感じたら撤退がマスト。


 畑中紀夫、今のところギリギリ投げられるラインを超えずに生存中。


「では!! 全速前進!! 雪の精霊さんたちとキャッキャウフフします!! ご飯が美味しいらしいので、それも楽しみです!! オペペペラ、最短ルートで進めー!!」

「了解しました!!」


 オペペペラが次に向かうのは雪の妖精郷。

 道中「なあ、レア。どうしてお前、ブラウスを着ているんだ?」とラミーが質問し、「着回しが楽だとルビーさんに聞いたので! サンキューでぇーす!!」と、炎髪少女の裏切りによって、私服がクルミ上位互換のレアと被る事故に遭ったラミー。


 彼女が落ち込んでから立ち直るまで約2時間。

 そろそろ妖精郷が見えて来る空域に差し掛かっていた。

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