第26話 ミニスカートの巴投げに抵抗がなくなった女子高生 ~竜族ゲット! レアちゃん以外は自力で山に帰ってください!!~

 賞金稼ぎは人として褒められた仕事ではない。

 だが、アンドゥーのオークション会場では奴隷の売買が認められており、この賞金稼ぎのグループもきちんとルールに則り、正規の手順で商品を競売にかけているので、法的に違反をしたわけではなくツクターン自治領の司法で裁かれる事もない。


 好む、好まざるの問題であり、現在正規のオークション会場で大暴れを始めたオペペペラのクルーは裁かれるカウントダウンを一気に消化中。


「フハハハハハ! 私の名はルッツリンド・リリンソン!! リリンソン皇国が第一皇子にして、ルワイフルを平定した覇者の名よ!! 喰らえぃ、狼藉者ども!! 『リリンソン・ワンダフル・ビーム』!!」


 なお、ルッツランドがいつものように名乗ったため、「オークション会場の襲撃犯はルッツリンド・リリンソン」と言う事実が秒で構築された。

 硬そうな資材で造られているので、これは多分もう壊れない。


「みんな! リリンソンのバカが罪を背負った!! これで私たちが何をしてもあのバカの責任になるぞ!!」

「ルッツくん!! 偉い!! バカな男の子だけど、ちゃんと責任感あるんだねぇ! 合唱コンクールで男女が揉め始めたら、最初に歌い始めるタイプの子だ!! あとで膝枕してあげちゃう予定だったけど、耳かきもしてあげようかな!! わたしね、耳かきリフレのバイトしてたから!!」


「なんだと!? 紗希! 私は!?」

「え? あー。んー。ラミーさんは、ちょっとゲスいこと言ってたかなーって。うん! 良いと思う!!」



「くっ! 殺せ!! あとお前らのせいだ!! 殺す! 吹き飛べ!! 手鏡アタック!!」


 ラミーは紗希の好感度を下げたショックで、手鏡の角でその辺の敵を殴る。

 鏡魔法という個性を自分で捨てていく物理戦闘スタイル。



「あぅぅぅ。ルビーの魔法を使ったら、紗希様にまたドン引きされますぅ! 罵られるのは良いけど、ドン引きはまだルビーには早いですぅ!! ど、どうしたら!!」

「このクソガキが! 邪魔なんだよ!! 帰ってママのおっぱいでもしゃぶってろ!!」


「……全然ルビーの心に響きません!! なんですかぁ、その恫喝は!! あなたこそ、お母さんと相談してちゃんとした恫喝を覚えて来てくださぁい!! 溶岩パンチ!!」

「ごふっ……」


 ルビーも魔法を使わず、手を溶岩に変質させて賞金稼ぎを殴った。

 なお、溶岩の温度は語るまでもなく極めて高温であり、そんなもので殴られたら人間の腹には穴が空く。


「あー! ワンピースの名シーンだ!! って、そうじゃない!! ルッツくん!! 人命救助!! さすがに殺人はダメだよ!! わたし、スローライフ満喫できなくなっちゃう!! ルビーちゃんは攻撃もうしないで!! その見た目で一撃必殺とかヤダぁ!! リアクション可愛いのに、やってる事は惨劇だよ!! そこで座ってて!! 体育座り!! ちょっと足広げて! うん! そう!! 最高!! そのままキープね!!」


 ルビーはプリーツスカートで体育座りを強いられる。

 紗希が満足気な顔を浮かべており、炎髪少女も「あー! なんでしょう! よく分からないけど、ルビー! いじめられてますね、今!!」と恍惚の表情を浮かべた。


 ルッツリンドは死にそうな賞金稼ぎの蘇生措置へ。

 1人だけダメージが深刻過ぎて、とても正視に耐えない。


「フハハハハハ!! あ。これほぼ死んでるな。私がいて良かったな、お前。私には精霊王から授かった瀕死でも生きてさえいれば蘇らせることが可能な究極の魔法」

「ルッツくん! 早くして! 死んじゃうから!! 締め技してから投げるよ!!」


「フハハハハハ! かしこまり!! 締め技!! 紗希、先に締め技を所望したい! あ、すみません!!」


 ルッツリンドがルビーの言う「気持ち良さ」を少しだけ理解した瞬間であった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 なお、会話に加わるタイミングを逸したラミーによって、賞金稼ぎたちの大半が倒されている。

 手鏡による殴打なので、当たりどころがよほど悪くない限りは多分生きてる。


「ちくしょうが!! おめぇら! 何の恨みがあるってんだよぉ! オレらにだって家族がいるんだぞ、こんにゃろうが!!」

「うあああっ! なんか正論が飛んで来た!! そうだよね……。ちゃんと認められてる仕事なんだから、別に咎められる事じゃないもんね。うん。すごく申し訳ない気持ちはあるんだよ? わたしもさ、お金なくてたくさん働いてたから、ご飯を食べる大変さとか」


「おらぁぁぁぁい! たまぁもらったぁぁぁぁぁ!!」

「なんでさぁ!? ここの人はすぐに女子のおっぱい狙うの!? あー! もぉ! 知らない!! おっぱい狙ったからもー全部知らないっ!! でぇぇぇい!!」



 紗希さん。舌の根の乾かぬ内に、敵と一緒に慈悲と理解も投げ飛ばした。



 残るはあと1人。


「よし! 最後を飾れば目立つ!!」

「フハハハハハ!! 私の手が空いた!! トドメをキメるのは、このルッツリンド・リリンソン!! リリンソン皇国が」

「あ! 紗希様がこっち見てる! あの人に溶岩パンチしたら、罵られそうですぅ!!」


 気の毒過ぎる集団に囲まれていた。


 どれを選んでもだいたい致命傷、3分の1のジョーカーを引くとガチで死ぬ。

 巨漢の賞金稼ぎは少しだけ迷うと、その迷いを捨てて紗希に向かい突進した。


「うわあぁぁぁぁぁ!! こいつが1番まともだぁぁぁぁぁぁ!!」

「大きい体だからってぇ!! 柔よく剛を制す!! とりゃあぁぁぁぁぁ!!」


 巴投げがさく裂した。

 当然だが、ミニスカートである。


「フハハハハハ!! 『リリンソン・ワクテカ・スモーク』!!!」

「でかした! リリンソン! 今度は私が見る!! あだっ!! おま、リリンソン!! 足を離せ!! ズルいぞ! お前さっき見ただろうが!! ピンクなんだろう!! 私も!!」


「……ね。何してるのさ、2人とも。女の子にそーゆう目を向ける時は、バレないようにした方が良いよ。わたしも見るから怒らないけどね。うん」

「あぅぅぅぅ! すっごく冷たい視線が!! 羨ましい!! いいなぁ、ラミーさん!!」


 こうして大乱闘は終了する。

 賞金稼ぎたちは全滅。


 こののちミリアの父が奴隷商会に口利きをしてあげたので、この集団は明日から過酷な奴隷商人の研修を1年間受けたのち、真っ当な奴隷商人として生きていくことになるのだが、そんなところまで描写する必要はないと我らが紗希艦長は言っておられる。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 竜族が4人。

 無事に回収された。


 お金を支払っていないので、実質窃盗なのだがそこはオペペペラ。

 畑中によって1千万ニップルプルがオークション会場に振り込まれた。

 迷惑料と、賞金稼ぎたちの1年間分の生活費と、損害賠償金らしい。



 なんでもありかよと聞かれると、なんでもありですと答えるのが無敵要塞。



「おおー!! おっきいねー!! レアちゃんも大きいけど、他のご家族はみんな大きいのスケールが違うねぇ!」


 竜族が成体まで育つと、個体差はあるもののだいたい3メートルから4メートルほどの巨体になる。

 オペペペラも巨大な要塞だが、3メートルを超える無差別級にウロウロされるとなんだか目障り、失礼、絵面が良くない。


「よし! 皆さん、自分で山に帰れますか? あ、ミリアちゃんかレアちゃん! 通訳お願い!!」

「あのあの! 皆様リスニングはできておられますので! ふむふむ! あ、はい。帰ります。なんか色々お世話になりました。サンキューでぇーす!! とのことです!!」


 竜族たちは翼を広げると空に飛びあがっていく。


「なあ。どうしてあいつら、人間に捕まったんだ? 絶対に無理だろう。あのサイズでしかも空が飛べるとか。なあ。……あれ? 私、何か間違ったこと言ったか?」


 間違ってはいませんが、無粋なツッコミがありました。


「レアちゃん! オペペペラに乗って行く?」

「はい。紗希さんには助けて頂きましたし。恩人の紗希さんがそう言われるのならば。竜族の寿命は長いので、人間の寿命にお付き合いしたところでひと夏のパーリーナイッですし。よろしくでぇーす!!」


「畑中さん。早く翻訳機作ってくれないかな。……あ、あれ!? レアちゃんどこ行ったの!?」

「フハハハハハ!! 見よ! 屋台に突撃して行って、たった今3つほど店を破壊した!! 腹が減っていたのだろう!! 欲求に逆らえないところは実に見事よ!!」


 竜族が簡単に捕まった理由も分かったところで、オペペペラのクルーがまた増えた。

 被害の出た屋台には、ラミーが謝罪をして回りました。


 その後ミリアがニップルプルをクルミプルプルさせながら山ほど支払ったため、ラミーの行動は屋台のおやっさんたちの記憶からも消えました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る