第23話 賞金稼ぎに結局捕まった竜姫・レア ~そう言えばうち、奴隷商人のロリっ子がいたね!~

 ミリアがルッツリンドとラミーに事情を説明すると、「フハハハハハ!! いだい! 背中痛い!! フハハハハハげっふ、げほっ!! これを使うが良い!!」と苦しそうに高笑いしながら、インカムのようなものを取り出した。


「なにそれ。言っとくけど、わたしの胸触ろうとして、挙句パンツまで見ようとした事実を大変重く受け止めてるからね。ちょっとやそっとじゃ許さないから」


 「どっちも紗希の勘違いじゃないか」とラミーは思ったが、敵には塩を送らない。


「そうだな! リリンソン! お前が全部悪い!! で、あれはなんだ!!」

「フハハハハハ! ……ルワイフルの全種族に対応した翻訳機ですが。いりませんよね。捨てて来ます」


「出たぁ! チートアイテム!! どこかの王族とかから貰ったんだ!!」

「フハハハハハ!! いえ、モコン界の最長老に。ログインセットとか言ってもらったものの中で特に使わなかったヤツです。普段は私の肩にアクセサリーとして付けてました」


「あー! 確かに! なんか付いてた! そうなんだ! これってそんな便利なものなんだねー!! よし、君の罪を許そう! ルッツくん!!」


 当たり判定が緩い紗希。

 おっぱいタッチ未遂とパンツガン見は便利アイテムで相殺された。


「フハハハハハ! ありがたき幸せ!!」

「お前! じゃあ紗希の下着を見ただけ得じゃないか!! くそ! 私も見たかった!!」


「鏡の精霊ラミーよ! お前は風呂で見ているだろうが!!」

「バカなんですかぁー! 自分から脱いで下着姿になるのと、見せる気のない下着とでは価値が違うって紗希が言ってましたぁー!!」


「そんなの知ってますぅー!! さっき私が見たパンツは大変良いものでしたぁー!!」

「ふざけるな!! 眼球寄越せ!! 鏡魔法で映像を再生する!!」


 レアにインカムを付けてあげた紗希は、2人に向かってにっこり微笑んだ。


「ルッツくん。うるさい。ラミーさん! またルッツくんとセリフの聞き取りが難しくなってるから、個性出して!!」

「くっ! 殺せぇ!!」


 ラミー、遺憾の意を表明。


「あ。ああー。あっ! アタシの言葉、通じてます!?」

「おおおー!! レアちゃんが喋ったぁ!! 声、可愛い!!」

「ひぅぅっ! ルビーの存在感が薄くなって、紗希様にスルーされています!! ふへへっ。これ、結構気持ちいいです!!」


 竜族のお姫様。

 竜姫・レアちゃん。



 変態クルーガチャの結果が気になるところ。



「助けて頂いてありがとサンキューでぇーす!!」

「……ちょっと待ってね。わたしの想定してた11パターンじゃないヤツが来たから。整理するね。10秒ちょうだい!!」


 またしてもSSR変態かと思われたが、ミリアの胸からヴィーヴィーと音が鳴る。

 ルワイフルの巨乳クルミは鳴くのだろうか。


 ミリアはブローチを手に取った。


「あのあの! こちらミリアです!!」

『先ほどから拝見していました。ノリーオです』


 最長老の樹はルワイフルでも1番の高性能基地であり、大陸全土を監視できるナチュラルボーン・ストーカーシステムでもある。


 余りにも自然にミリアの胸についていたブローチ。

 どうやら通信機だった模様。


 畑中は続けた。


『その来海さんがレアさんにお渡ししたインカム、付け方が反対ですね。耳と口が。そのせいで、きちんと起動していません』

「そうなんですか!? 良かったー! 急にパリピみたいな口調になったから、とにかく明るい変態さんかと思いましたよー! ルワイフルの変態さん率、8割超えてますから!」


 ミリア以外の全員が「自分以外のヤツだな!!」と頷いたが、頷いていないロリっ子以外のヤツ全員が8割の方である。

 有能なロリっ子がインカムを付け直すと、レアは頭を下げた。


「あ。すみません。アタシ、聞き取りはできるのでお話は理解していました。こんな素晴らしい魔具をお借りして、それから助けて頂いてサンキューでぇーす!!」



「畑中さん。今度、最長老の樹にお邪魔した時。投げますから」

『僕のせいですか!? それ、レアさんの地のセリフですよ!? ヤメてください!! 唯一の同郷仲間に嫌われるとか、泣きそうです!!』


 竜族はパリピだった。



 厳密に言うと、ルワイフルの公用語に翻訳される過程でパリピっぽくなるだけで、竜族がパリピではないのだが、それを知るのは畑中紀夫だけであり、彼はもう余計なことを言わない構えなので真相は永久に闇の中へ。


「アタシの家族や仲間がさらわれてしまいまして! どうにかここまで来られたのですが、気付いたらアタシもさらわれていました! テンアゲでぇーす!!」

「……コミュニケーションに難があるよ。テンサゲでしょ? 畑中さん。大至急、新しい翻訳機作ってくださいね」


 テンサゲでも真実に到達する速度はピカイチな紗希さん、今回も最短距離で行く。

 とりあえず、今はその翻訳で頑張ってください。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 レアは事情をさらに説明した。

 時々良くない翻訳が飛び出るものの話の本筋を阻害するほどではなく、シリアス感を追放する程度なので紗希は無視する。


「なるほどー。賞金稼ぎさんがレアちゃんの同族さんをどこかに捕まえてるのかー。んー! ベタだけど、これは燃える展開!! レアちゃんと共同戦線からの仲間入りのパターンだね!!」


「おい。誰か紗希の不謹慎な発言にツッコミをしろ。レアが気の毒だ。仲間が売られる寸前なのに、頼みの綱が嬉しそうとか」

「フハハハハハ! 自分でしろ、ラミー!! 投げられるぞ!!」


「ほわわわわわわ! ルビー様! どうしてヨダレ垂らしながら紗希様の元へ!?」

「ルビーは1度、紗希様に投げられておきたいのですよー! 段階を踏んでおかないと! 心の準備をしていても絶頂するはずです! 不意に投げられたら、今のルビーだと絶頂のあと仮死状態になります!!」


 ルビーの加入により、変態感が独占される。

 ルッツリンドが常識人寄りの男になり、女子にはロリっ子常識人のミリア既にいるので、ラミーはまた個性が薄くなった。


「みんな! 竜族さんを探すよー!! さて、レアちゃん! なんか鼻が利くとか、そーゆうので仲間の場所が……。いないね。レアちゃーん?」


 レアはかなりの速度で走り始めていた。

 彼女の視線の先には檻がある。


 そして、死角には刺客が潜んでおり、どうやらレアは竜族の特殊能力か何かで賞金稼ぎたちの気配を察知したらしかった。


「焼き鳥ー!! うぇーい!! お腹空いてましたー!! はっ!? た、助けてください! 紗希さん!! 紗希さんと愉快なパーリーのみなさぁん!!」

「よし! バカ姫が釣れた! 逃げるぞ!! あいつらはやべぇ!!」


 賞金稼ぎのグループは馬っぽいモンスターに鞭を打つと、猛スピードで走り去っていく。

 現場には、オペペペラの愉快なパーリーたちが残った。


「……自分から捕まったぞ、あの子」

「フハハハハハ!! 抜かしおる!!」


「ミリアさん! ルビーが絶頂を優先したせいでしょうか!?」

「いえいえ! 多分、いつものパターンです!!」


「口汚く罵ってもらえますか?」

「ほわわわわわわ!? え、えとえと! ば、ばかー!!」



「すみません。ミリアさん。真剣にやってもらえます? ルビーをバカにしてます?」

「ほわわわわわわ!! す、すみません! すみません!!」


 変態が増えたので、一時的に進行速度が低下しております。



 満を持して、紗希がマントを翻す。

 手を伸ばしてから叫んだ。


「ドジっ子の極み!! どんな属性でも、突き詰めるとだいたい可愛い!! おっきい体におっきい胸! 巨乳っ子に注文通りのドジっ子!! 推せます!! はい、みんな!! レアちゃんを助けに行きます!! 意見を出して!」


 ルビー以外の3人は「うむ」と満足気に頷いた。

 多分、ルビーも次の次くらいからは同じリアクションが取れるだろう。


「フハハハハハ! 紗希! 最長老に現状を確認させるのはどうだ!!」

「おっ! ルッツくん、冴えてる!! ご褒美にレアちゃんの髪の毛を1本あげよう! さっきね、インカム付ける時に何本か抜けたんだよね!!」


「フハハハハハ!! 全然嬉しくない!! ノリーオよ!! 聞こえているだろう!!」

『あ。はい。ところで、ルッツリンドさんでしたっけ? 僕と面識ないのに、そんなグイグイ来るのヤメてもらえます? なんか嫌いな上司がそんなノリだったので、心が痛いです』


「畑中さんのメンタル保持! ラミーさん! ルッツくんを羽交い絞めにしといて!!」

「よし! 分かった! ……こうやって私は、ただの雑用キャラになっていくのでは!?」


 ラミーがルッツリンドとドッキングしたので、会話を続行。


『あのですね。申し上げにくいのですが。レアさんのご家族4人、既に競売にかけられる寸前ですね。西へ3キロと少しのところにオークション会場がありますが。砲撃でもします?』

「ええー。そんな差し迫ってるんですか!? どうしよー。あっ!!」


 紗希は抱き心地満点のロリっ子を捕まえた。

 「ほわわわわわわ」と鳴くミリアを抱えて、紗希は言う。


「うちも奴隷商人いたよー!! 競売で、レアちゃん一族を全部買おう!!」


 来海紗希の倫理観が、人身売買を是とした瞬間であった。

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