第22話 ついにミニスカートで巴投げをした女子高生 ~優秀なクルーVSチラリズム~

 追われる女子の保護ミッションに成功した来海紗希の率いるオペペペラ一味。

 息を切らせ苦しそうな女子には駆け寄るのがマナー。


「大丈夫ですか!? ちょっとこっちのベンチに腰かけましょう!! ルッツくん!!」

「フハハハハハ!! こちら、お水です」


 謎の女子は水をグビグビと一息で飲み干して、大きく息を吐いた。

 結構な距離を逃走して来たのかもしれない。


「落ち着きましたか?」


 女子は喋った。

 が、何を言っているのか紗希には聞き取れない。


 すぐに彼女の異世界脳が回転を始め、テンポよく答えを弾き出した。


「これは……!! 気付いたら誰とでも公用語で意思疎通できる異世界で、何言ってるのか分からない子!! 絶対に希少種族の子だぁ!! もう間違いない!! ルッツくん! 通訳!!」

「フハハハハハ! 分からぬ!!」


「あ。そうなんだ。ラミーさーん!!」


 新キャラが出てきたら、古参のキャラは発言権を失くす。

 これはもう、そういうルールなのだ。


 理屈ではない。それがルール。


 ヒヤリングをした鏡の精霊ラミー。

 彼女はしっかりと断言した。


「これは竜族の言葉だね。竜族は発声器官が特殊だから、扱う言葉も極めて珍しい」

「おおー!! 出たー!! 博識なお姉さん!! それで、何て言ってるんですか? この子!」


「え? それはちょっと分からないけど?」

「あ、そうなんですか。あの、お向かいのお店に謝って来てもらえます? もしかしたらさっきの炎でご迷惑かけてるかもですし。ルッツくんと一緒に」


「え゛っ!? ま、待て! 紗希!! 私、頑張って聞き取るから! それを紙に書いて、筆談すればどうにか!!」


 忍び寄るロリっ子の影。

 ミリアがぴょこんと顔を出してから言った。


「あのあの! あたし、竜族さんと日常会話くらいならできます!!」

「あっ! そっか!! 奴隷商人だもんね、ミリアちゃん!」


「ほわわわわわ! なんで抱きしめるんですか!! けど、紗希様のおっしゃる通りです! 竜族は高値で売れるので、あたしの家ではストレスのないように竜族の言葉を全員が覚えていましたし、好きなもの嫌いなものは熟知してました! ふっふっふ! 牙があるので、特注の歯ブラシを使って無理やり磨いてやるのです! ふっふっふ!!」



 悪い顔のロリっ子奴隷商人。

 出番消失の旨を察知したラミーとルッツリンドは向かいのお店に行きました。



「ふむふむ! むむむむ! なんと、そうなのですか!!」


 竜族の女子とコミュニケーション開始。

 紗希はルビーと買った戦利品の見せ合いっこをして時間を潰す。


「紗希様は袖がない服や、丈の短いものばかりですね」

「そうだよー! 部屋着なんてとりあえず最低限隠れてればオッケー!! 着心地重視!! あと、下着もいっぱい買っちった! やー! なにせこっちに来てから、パンツとかブラ洗ったら乾くまでお部屋で全裸待機だったからさー!」


「なんて豪快……! ルビーも見習いますぅ!」

「ルビーちゃんは何買ったの? おー!! ミニスカだ!! しかも今のプリーツスカートよりさらに短い!! なんでなんで!? オペペペラの中でそんなサービスしてくれるの!?」


「あ、はい。それで、その。よろしければ、そんなルビーを見てですね。恥ずかしくないのか、この発情期め! そんなに短い丈ならば、捲っても構わんな? とか! 言ってもらえたらなって! よろしければ!!」



「んーん。よろしくないよ? わたしもかなり欲望のままに動くタイプだけどさ。ルビーちゃんの欲望はもう、何て言うか犯罪に近いんだよね」

「あぅ!! 蔑まれてしましました!! くぅぅぅぅ!!」


 故郷から飛び出して約2日。楽しそうなルビーである。



 紗希が「うぅー! 目がキラキラしてて可愛いのが困るんだよぉ! ……そのうちわたし、罵ってあげちゃいそうで怖い!!」と謎の葛藤をしながらクネクネしていたところ、働き者のロリっ子がトテトテとやって来た。


「紗希様! だいたいお話を伺い終わりました!!」

「おおー! ミリアちゃん、さすがぁ! それでそれで?」


 相変わらず、明らかに困っている女子を前にして興奮気味の紗希。

 ロリっ子以外にまともな感性のクルーがいないのでは疑惑が持ち上がるオペペペラ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「こちらは竜族のお姫様だそうです! お名前はレア様!!」


 レアは帽子を取って頭を下げた。

 角が2つ生えており、「おおー!!」といつも通りの歓声を上げる紗希。


「レアちゃん! 既に名前が可愛い!! で、何しに来たの? お忍びで観光? さっきの追手は家臣の人たちだったってパターン!?」

「いえいえ! レアはご家族がまるごと賞金稼ぎにさらわれまして! 助けに来られたらしいです!!」


「そうなんだぁ!!」

「……紗希様、どうしてそんなに楽しそうに。ルビーはやっぱり、紗希様からはドSのオーラを感じますぅ!!」


 レアは117歳。

 長寿の竜族ではまだまだ子供だとの事。


 恐らく170センチ近くありそうな長身と、胸当てでも隠し切れない立派なクルミが存在感を放つ。

 何かを喋る度に牙がちらりと見えて、その仕草は紗希を虜にした。


「よし! オペペペラに乗ってもらおう!!」

「えとえと! 紗希様! レア様はご家族の奪還に来られたので!!」


「あ、そうだった! けど、なんでそんな恰好なの? 竜族の間では賞金稼ぎファッションが流行してるのかな?」

「それはですね! 賞金稼ぎの馬車に忍び込んでお住いの山から下りて来られたらしいのですが! 点呼の際、普通に身バレされたそうです!!」



「わー!! ドジっ子キター!! 待ってた! マジメに考えたのに作戦がポンコツなお姫様!! 間違いを全部指摘するから、赤面して欲しいっ!!」

「……紗希様。絶対にドSじゃありませんか。ルビーにもご慈悲を!!」



 主に紗希が大声ではしゃぐものだから、人通りの多い商店街で衆目を集め、その結果先ほどの賞金稼ぎたちが仲間をわんさか連れて戻ってきた。

 慌てるレアだが、紗希はにっこりと笑う。


「ミリアちゃん。レアちゃんに安心してって伝えてくれる? わたしたちが守るからって」

「ほわわわわわ! さすがです、紗希様!!」


「うんっ! だって竜姫でしょ!? レアちゃん、レアキャラでしょ!? 絶対にオペペペラに乗ってもらうんだ! とりあえずパパっと家族を取り戻して!!」


 賞金稼ぎよりもやり方は穏やかだが、目的が類似している可能性の浮上を確認。


「どけぇ! クソガキども!! 容赦しねぇぞ!!」


「なんかいっぱい来た!! ルッツくん!! 出番だよー!! って、いないし!!」

「ルッツリンド様なら、お手洗いに行かれました!!」


 ちなみにラミーもお手洗いに行っています。


「こ、ここはルビーに任せてください!!」

「おおー!! そう言えばルビーちゃんも精霊さんだった!! お願いっ!!」


「は、はい!! てぇぇぇい!! 『溶岩隕石マグマメテオ』!!」



 辺りに降り注ぐ、マグマの塊。商店が7棟被害に遭った。



「んーと。ルビーちゃん?」

「ひぅ!? ご、ごめんなさい……! ルビー、間違えちゃいましたか!?」


 大きな瞳に涙を浮かべて狼狽える炎髪少女。

 普段は「さあ、いじめてください!!」と言っているのに、大きなミスをすると普通にオロオロしてしまう彼女を見て、紗希は思った。


 「ありだね!! むしろ、最高だね!!」と。


 なお、最接近していた男が2人ほど残存しているだけで、他は身の危険を感じて撤退済みである。


「こいつら人間じゃねぇ!! やっちまえ!!」

「おうよ!!」


 男たちはナイフを取り出し、迷わずルビーの胸を突き刺そうと駆け寄る。


「なぁにしてるんですかぁ!! ルワイフルの男の人、女子の胸触ろうとし過ぎ!! でぇい!!」

「げぇああ!!」


 さく裂する一本背負い。

 しかし、紗希にも不幸が襲い掛かる。


「ふぎゃっ!! いたた……。マント踏んじゃったよ……」


 尻もちをつく紗希。

 これ幸いと、男がナイフを持って襲い掛かる。


 10代の女子に対して容赦がなさ過ぎるのは職業柄なのか。


「こんのぉ!! わたしの胸まで!!」


 彼らが狙っているのは心臓です。


「たぁぁぁぁぁぁ! ふんっ!!」

「え゛ぁっ!? いぎぃぃぃぃっ!!」


 来海紗希、巴投げをキメる。


 彼女は制服であり、スカートを折っているため丈が短い。

 巴投げの性質上、これはもうチラリズムではなくモロリズム。


「フハハハハハ!! 『リリンソン・ワンダフル・スモーク』!!」

「よくやった、バカ覇者!! 『鏡の世界ミラーハウス』!!」


 トイレから戻って来た役立たずコンビがお役立ちコンビに昇格。

 ルッツリンドが煙幕を起こし、ラミーが紗希の周りを姿見で囲む。


 完璧なパンチラ防衛ラインが完成していた。


「うぇぇ!? なに!? どうしたの!?」

「フハハハハハ!! 紗希! 下着が全開になっている事に気付かぬとは!! 可愛いヤツめ!! フハハハハハあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ」


「ど、どこ見てるの!! このどすけべ!!」


 2度目の巴投げを喰らったのはルッツリンド。

 今回は完全に被害者だが、スカートの中を一瞬でも見る事ができたため、リリンソン皇国の第一皇子は幸せそうに息を引き取った。


 何のことかは分からないが「ピンクとは。抜かしおる」との事です。

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