無敵要塞オペペペラ ~別の異世界から転移してきた人がやりたい放題したあとに転移してきた女子高生は理想のスローライフを目指す!!~
第20話 お風呂回が済めば、お買い物回もしたくなるのが人情では! ~ツクターン自治領へ行こう!!~
第20話 お風呂回が済めば、お買い物回もしたくなるのが人情では! ~ツクターン自治領へ行こう!!~
引き続きお風呂回。
「お風呂回で区切るのは当然だよ? むしろ、区切らない理由が聞きたいよ?」とは、来海紗希艦長のありがたいお言葉。
既にミリアのクルミを堪能した紗希は、一緒に背中を流し合いっこしている。
大変楽しそうで結構なのだが、いい加減脱衣所に立てこもっている2人を呼んで欲しい。
「ルビー! 先に行くといいよ!!」
「ラミー様の方が年長者ですよ。ルビーは最後に行きますので」
「最後は私に行かせてくれ!! せめて登場を遅らせることで目立ちたい!! 私はさっき、また気付いたんだ! ルビー! お前と私の名前、音が似ている!! しかも一人称で自分の名前を呼ぶだろう、ルビーは!! これ、必然的にどんどん私の名前が存在感を失っていくんだ!!」
「えーと。ちょっとおっしゃっている意味がルビーには分かりません。すみません、ルビー子供で。しかもルビーは精霊郷から出た事のない世間知らずなので」
「おま、おまぁぁぁ!! たった1つのセリフで3度も名前を連呼するな!! 私を脱衣所で亡き者にする気だな!?」
「ふふふっ。ラミーさんは面白い方ですね。ルビーも頑張ります」
「頑張るな! あと、私の名前を呼んでから追いルビーで塗りつぶすな!! くそっ! 殺せ!!」と叫んで、ラミーは浴場へ走って行った。涙目で。
残されたルビーは胸を押さえる。
大きなため息を吐いてから今度は視認する。
ちゃんと控え目なものが2つ、そこにはあった。
「うぅ……。皆さん、レディの体つきをしておられます……。ルビーは今まで気にしていませんでしたが、これは劣等種の証なのでは。さすがに興奮できません。恥ずかしくて中にも入れません。お部屋に戻りましょう」
脱いだ服を手に取ったルビー。
次の瞬間、脱衣所のドアが勢いよく開いた。
そこには息を荒げた紗希が立っており、彼女は早口でまくし立てる。
「話は聞かせてもらったよ! ルビーちゃん!! あのね、もうわたしの住んでた世界では議論され尽くして結論が出てるの!! 貧乳、素晴らしい!! わたしみたいに中途半端なのが1番ダメなの!! ミリアちゃんみたいにバインバインか、ルビーちゃんみたいにぺったんか!! もうどっちかに振り切れてた方が魅力値大幅アップなの!! しかも、それを恥ずかしがって、気にしてしょんぼりするとかぁ!! ルビーちゃん!!」
「は、はい!?」
「合格です!! さあ、わたしが体を洗ってあげるから!! さあさあ!!」
「え、ええ、あの!? 合格ってなんですか!? ルビーはなにをされるんですか!?」
すごくいい顔で親指を立てた紗希によって、ルビーも大浴場デビューを果たす。
なお、「ルビーちゃんって体が高温でお風呂に入ったら一瞬で熱湯になったりしないんだね?」と何故かがっかりされた結果、閻帝の娘は「あ! 失望されてますね!! これは安心して寝る前に絶頂できそうですー!!」と笑顔になったという。
ラミーは静かに体を洗って、湯船に浸かり温まった。
特に何もなかったとの事。
◆◇◆◇◆◇◆◇
かなり長湯になったお風呂を終えた乙女たちは、ほどよい疲労感でぐっすりと眠りについた。
翌日、ミリア以外は誰も起きてこなかったのでルッツリンドが艦橋を預かっていると、紗希が背伸びをしながら登場。
「おはよー」
「フハハハハハ!! さすがの紗希も疲れが見えるか! ルワイフルに転移して来て今日で4日!! 疲労も蓄積されているだろう! どうだ、しばらく私が艦長を務め」
「あ、平気! むしろね、住んでたアパートの100倍快適でなんか気が緩んでただけ! ルッツくん案外レディファーストじゃん! 気持ちだけもらっとくねー!!」
「左様でしたか。……フハハハハハ! 艦長の座くらいは取り戻そうと思ったが、なんか褒められたから良しとしよう!! フハハハハハ!!」
ラミーとルビーが並んで艦橋へ来たところで、朝食を取ることになった。
なお、名前の音が似た精霊コンビは普通に慣れない生活でちょっと疲れが溜まり始めている。
紗希の適応力が異常なだけなのだが、異常じゃなければ異世界に来て初日に戦艦を住居にしようとは思わないので、彼女が異常で大変助かる。
「ねね、ルッツくん! わたしたち、お洋服が欲しい!! どこかお店がいっぱいある街を教えてよ!」
「フハハハハハ! 私はこの覇者のシャツのスペアが200枚ほどあるゆえ、服を買おうと考えた事などないが!!」
「あ。じゃあいいや。ミリアちゃんなら知ってるよね?」
最近のルッツリンドは自分で出番を減らす傾向にある。
現状、オペペペラのクルーで唯一の男の彼をどう扱うのが正解なのか分からないため、その自重するスタイルは評価に値する。そのままの君でいて欲しい。
「えとえと! モコン界は人間のコミュニティ自体がかなり少ないので、とりあえず西へ向かうべきだと思います!」
「そっか! んー。じゃあ、どうしよ。近くがいいよね」
紗希は端末のボタンを押して、分析官に呼びかける。
「畑中さーん! 起きてますかー?」
20秒ほどの間ののち、応答があった。
『はい。おはようございます。朝ごはん用のイモを掘ってました。味噌汁に入れようと思って! ご用ですか?』
「あらら。ご飯食べてからで平気ですよー?」
『いえいえ。どうせ1日中ずっと引きこもりですから。食事の時間なんて適当で良いんですよ。先代にはもう魚の干物焼いたヤツをドアの前に置いてきました』
意外と快適そうな最長老の樹。
オペペペラと同じ農業プラントシステムがあり、牧畜まで大樹の中で行われているため真なる引きこもりとして一歩たりとも外に出なくても生活が成り立つ。
敵は話し相手がいない事くらい。
つまり、紗希に呼ばれると会話が生まれるので畑中も嬉しいという、みんながハッピーなオペペペラの役割分担。
『なるほど。服ですか。でしたら、ポギール王国は人間の生活圏なのでそちらですと確実ですが、移動時間がかかりますね。ツクターン自治領にも商業都市がいくつかありますので、そちらへ向かわれるのはいかがかと』
「人間も魔族も獣人も誰でもウェルカムな中立地帯でしたっけ?」
『いかにもその通りです。現在地からですと、東部にあるアンドゥーが近いですね。座標を送りますので、ミリアさんに入力をお任せします』
デザートの乳製品。
地球で言うところのヨーグルトを食べていたミリアが慌てて端末の前にやって来る。
ほっぺたにヨーグルトが付いていて、紗希はとても幸せな気分になったという。
「座標入力完了です! オペペペラ、発進しても構いませんか! 紗希様!!」
「もちろんですともー!! 目指せ、可愛い服!! しゅっぱーつ!!」
次なる目的地はツクターン自治領。
紗希にとってルワイフル初の大都市。アンドゥーである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
道中、ラミーが何気なく呟いた。
「しかし、紗希の制服も見納めか。よく似合っていたから残念だな」
「はい! ラミーさん! 減点!!」
「なんで!?」
「あのですね! 例えば魔王軍と戦っているならですよ? 装備の定期的な新調はむしろ推奨されるべきです! がっ!! わたしたちは今、騒動が起きていたら鎮圧しつつも観光をメインにしているわけです! そういう趣の中で服をコロコロ変えるのはダメっ!! わたしは制服にマント! ルッツくんは趣味の悪いラメが光るシャツ! ミリアちゃんはフリフリ! ルビーちゃんはプリーツスカート!! これを変えるなんてとんでもない!!」
「そ、そうなのか?」
「そうなのですっ!! もう初期装備がわたしたちのキャラを立てる要素の1つなので! 今回買うのはあくまでもオフに着る服!! フォーマルな服は固定するのが定石!!」
「な、なるほど。紗希が言うなら、そうなんだな」
「あれ。そういえば、ラミーさんって着てる服、毎日違いますね? 昨日はなんかジーンズっぽいヤツだったのに、今日はショートパンツになってる」
ラミーは普通の胸を張った。
「ああ! できるだけ色々な服で過ごせば、目立つかと思ってな!!」
「目立ちはしないと思いますよ? 精霊郷で着てた民族衣装みたいなヤツで固定した方が絶対良いですってば。だって、ラミーさん。一昨日のお昼ご飯、何だったかすぐに言えます?」
「え。…………?」
「ね? こんな感じで、最終的にはですよ。あいつって何着てたっけ? とか言われるんです! はい! 着替えて来てください!! って言うか、モノクルは!? 物知りお姉さんの必須アイテム!!」
ラミーは気まずそうに答える。
「全部、精霊郷に置いてきたんだけど」
「……あー。……うん! 1人くらい服装が安定しない子、いても良いと思います!! はい!!」
アンドゥーの上空に到達する頃には、ラミーの個性がまた1つ消滅していた。
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