第5話 ロリっ子奴隷商人・ミリアちゃん
オペペペラの居住区は、ちょっとだけ沈んでいた紗希のテンションをぶち上げる条件が揃っていた。
ボタン1つで色々と自動処理してくれる、メカメカした未来感が溢れ出して震える個室が地球人をお出迎え。
デザイン性を重視したのか、利便性が込められているのかよく分からない楕円形が基調となった見た目は、SFも嗜む紗希の中では高評価。
「ジョージ・ルーカス作品に出て来そう!!」と彼女に笑顔を再臨させる。
なにより紗希が気に入ったのは、バスルーム。
「ちょっと!! 洋式トイレじゃん!! ちゃんと水洗だし、ウォシュレットまで付いてる!! えー!! これは嬉しい!! ミリアちゃん! ルワイフルってすごいね!! 異世界好きとしてはちょっと喜んで良いのか微妙だけど、日本の現代っ子としては超うれしー!!」
「あ、いえいえ! ルワイフルでは穴掘って用を足しているところも多いです!」
「え。そうなの? わー。ザ・未開の異世界って感じなんだ。ん? じゃあなんでこんなオーバーテクノロジーが? あっ!! ルッツくん!! 君!!」
「フハハハハハ!! リリンソン皇国では生活において衛生面を重視するのだ!!」
紗希は親指を立てて、ルッツリンドの功績を称えた。
「グッジョブ!! ヘモーニャとか言うクソ要素のこと忘れてあげてもいいくらいに良い仕事したね!!」
「はっ! ありがたき幸せ!!」
ルッツリンド・リリンソン。評価が少しずつ上昇中。
ミリアも会話に加わりたかったらしく、小柄な体でぴょんぴょん跳ねて発言権を求める。
「ややっ! ミリアちゃんもルッツくんの恩恵を受けた感じ? やっぱり女の子は清潔でいたいもんね!」
「はい! あのあの! あたしは奴隷だったので! 体を清められるだけでもルッツリンド様の偉業を称えたいです!!」
なんだか急に触れてはならないものに遭遇してしまった来海紗希。
これには彼女も目を伏せた。
「うああああ!! ロリ巨乳の奴隷っ子!! 分かってるなー! ルワイフル!! 売られちゃったの!? ね、ミリアちゃん!! うああああ!! わたしが買いたかったぁ!!」
目を伏せたのは助走であり、結構な勢いで不謹慎な喜びを爆発させた。
ミリアは控え目に首を振った。
「えとえと、あたしは奴隷商人でした! 世襲制で、お父様から引き継いで! 活きの良い奴隷を売りさばくのが代々続く家業なのです!」
「えっ!? 売ってる方なの!? えー。それはー。んー。……要審議! 詳しいお話聞かせてー!!」
ミリアの艱難辛苦な身の上話が始まろうとしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あたしの家では、主に獣人さんとエルフさんを卸売市場で買い付けて来て、それを良い感じに育ててから貴族や富裕層に売りつけるのが生業でした!」
「うん。わたしが思ってたよりもずっと鬱なヤツだったよ。ええ……。人身売買の市場が確立されてるの? なんか急にハードになってきたなぁ」
ミリアは続ける。
「仕入れた奴隷は三食栄養のあるものを食べてもらい、1日のうち2時間は個人に合わせた運動プログラムを強制して、悲鳴を聞きながら汗を流させるのです! ふっふっふ!! さらに奴隷は識字率が低いので、ルワイフルでポピュラーな大陸語を無理やり学ばせます! 日が暮れるとヤメようとするので、照明をこれでもかと浴びせて、視力の低下を防ぎながら参考書のキリの良いところに到達するまでは絶対に許しません。一族総出で応援して、眠らせないのです!! ふっふっふ!!」
「ごめん。わたしが思ってたのとまったく一致しないよ。それって奴隷なの?」
「ふっふっふ! ミリアの一族は奴隷に人権など与えないのです!!」
「人権はもちろん、他にも色々与えてるよ?」
「奴隷には子供も多いので、寂しがったりぐずって泣き出すと、あたしのクルミを押し付けて黙らせてやるのです!! ふっふっふ!!」
「もうそれご褒美じゃん!! あとさ、普通におっぱいって言おう? なんかわたし、自分の苗字呼ばれる度に卑屈になるんだけど。ミリアちゃん、すっごい大きいよね。わたしの見立てだと、E……いや、下手するとFはあるよ」
「ほわわわわわ! 紗希様の世界にもホルファベットが存在するのですね!!」
「なんか惜しい! アルファベットなんだけどね。英数字とかアルファベットは異世界でも割と見かけるから、ここはスルーでいいよ。けど! ロリっ子のFカップ押し付けられるのはいいなー!!」
ミリアが首をかしげた。
大変可愛らしかったので、紗希は「何を聞かれても答えてあげちゃう!」と決めた。
「その、カップと言うのがクル……じゃなかった。おっぱいのランクなのですか? 紗希様はどれなのですか? Fは強いのですか?」
紗希は数秒前の自分の決断を後悔した。
「わたしはその、ええと、Cだけどさ。けどね! 限りなくDに近いCだから!! というか、わたしの世界ではこの年頃の女子ってみんなこんなもんだから!! ミリアちゃんのFは強いかって? 最強だよ!! 身長150センチくらいしかないのにFとか!! 無敵だよ!! ……くすん」
「えとえと! どうして紗希様は泣いているのですか!?」
「泣いてないし!? ……一応聞いとくね? ミリアちゃんって何歳?」
「ほわわわわわ! 失礼しました! あたしは14です!!」
「……そう。……わたし17だったっけ」
「紗希様。こちらを」
涙を拭いてください。
ルッツリンドがハンカチを差し出しています。
「そうして仕上がった奴隷をお金持ちに売りつけるのです!! もちろん、生活環境は三重チェックが基本! 怪我や病気をした場合に適切な治療を受けさせない場合は回収します!! 万が一にも死なせたら、一族総出でお金持ちを滅ぼします!!」
「ものすごくアフターサービスが充実してる。これ、売られない方が良いまであるね」
そこでミリアは下を向いて、絞り出すように悲しい結末を告げる。
「気付いたら、何故かあたしの家は廃業に追い込まれていました……!! 仕方がないので、あたしを含めてお父様やお母様も奴隷として売ることに……!!」
「そうだろうね。今のところ、ミリアちゃんの家って金銭を得てないじゃん」
今回はずっと空気を読んで静かだったルッツリンドが話を纏める。
この男はリリンソン皇国の第一皇子。
「女の体の話に首を突っ込むと斬首刑に処される……!」と知っているのだ。
首の安全が確保されたので、やっと喋る機会を得る。
「フハハハハハ!! そこに私がたまたま立ち寄ってだな! ミリアの一族を買ったのだ!! 質の良い奴隷たちだ!!」
「ん? じゃあ、ミリアちゃんの奴隷とご家族って?」
「あ、はい! オペペペラで働かせてもらっています!!」
「フハハハハハ!! ミリアの一族に奴隷の運用は任せておる!! 精々、私の覇道のために働くと良いと申したのだ!!」
紗希の中で、時間をかけて株を上げて来るルッツリンド。
とりあえず彼女は所見を述べてこの話題にピリオドを打つことにした。
「ミリアちゃん」
「ほわわわわわ?」
「それはね、奴隷商人じゃないよ? わたしの世界ではミリアちゃんの家を福祉施設って言うの。尊敬されるお仕事だよ」
「ほわわわわわ? けど、ルワイフルでは奴隷商人は蛇蝎の如く嫌われていますよ? 事実、ミリアの一族は他の奴隷商人から嫌がらせ受けてましたし!!」
「うん。だって、ミリアちゃんの家があったら商売にならないもん。奴隷さんたち、みんなミリアちゃんの家が買ってなかった?」
「はわはわ! すごいです、紗希様!! さすがは研究者様!!」
「ルワイフルの人ってもしかして、バカなのかな?」と、ちょっと失礼な偏見を抱いた紗希である。
~~~~~~~~~
本日まで2話更新!
次話をホカホカに仕上げて18時に待ちしております!!
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