第3話 ミニスカート女子高生は投げる! さらに投げる!! ~ルワイフルの暫定王座戦、早くも決着~

 オペペペラと言う名の要塞のゲートでは、ロリロリした少女が見守っていた。

 が、あろうことかルワイフルの覇者が見慣れない恰好の女子にぶん投げられたので、堪らず少女は主であるルッツリンドに駆け寄った。


「ほわわわわ! ルッツリンド様ぁ!! お気を確かにぃ!!」

「あ! 可愛い子が来た!! そう、こういうの! 異世界っぽい!! こんにちはー!!」


「ぴぃぃぃ!? すみません! すみません!!」

「あああ……!! なんか怖がられてる……!! あ、あの、わたし悪い転移者じゃないよー? 落ち着いてー? ……これって普通現地の人が言うんじゃないの!?」


 それから紗希は、少女が落ち着くまで辛抱強く待った。

 敵意がない証拠として両手を上に。

 それでもプルプルしているので、ポケットの中身を取り出す。


 いよいよ制服を脱ぐしかないかと思い始めたところで、少女が恐る恐る紗希とコンタクトを試みた。


「あのあの、あなたは悪鬼羅刹の類ですか!?」

「ううん? ただの女子高生だよ? って言っても分からないよねー。はぁぁ! 今、わたし異世界にいるっ!! このやり取り、すっごい異世界感ある!! あとなんか悪鬼羅刹認定された!!」


 ちょっとテンションの上がる紗希。

 第一異世界人が変態だったので、その後で出て来たのが可愛いロリっ子だった事実は大幅加点となっていた。


「あのあの……」

「あ、ごめん! わたしは紗希! 特に何もできないただの女子だよ!」


「でもでも! ルワイフルで最強のルッツリンド様が!!」

「最強……? それは、その要塞込みでだよね?」


「いえいえ! ルッツリンド様は剣術でも格闘技でも、誰にも負けた事がないお方です!! ヘモーニャもこの世界で唯一の保持者であられますし!!」

「あっ! 絶対に戦力値指数みたいなヤツだ、ヘモーニャって! くぅぅぅ! ナビキャラがこういう時に解説してくれるはずなのに!! なんでわたし、自分で解決してるの!? せっかく異世界に来たんだったら、スタンダードなルートが良かったのに!!」


 またしても興奮して会話の腰を折ってしまう紗希。

 彼女は「はっ! ダメだ!!」と反省して、「とりあえずこの会話パートが終わるまでは興奮するのヤメよう」と誓った。


「んと、ヘモーニャを測った事がないから分からないけど、それがあるとどうなるの?」

「えとえと、ヘモーニャは命の力です! 例えばですね、対象を殺害するためには相手の息の根を止めるしかありませんが、ヘモーニャ使えば一瞬です!! すぐ殺せます!!」


「……思ったよりエグいな、ヘモーニャ。あと、このロリっ子ちゃんの例も殺伐としてるよ。つまり、わたしにも変態、じゃなくて覇者さんみたいにヘモーニャがあるってこと?」

「分かりません! ですが、ルッツリンド様はヘモーニャ全開でしたので、あなたが敵意を持って触れた時点で両腕くらいは失っているはずです!!」



「いや! その要素、マジでエグすぎじゃない!?」

「ぴぃぃぃっ!?」


 これはツッコミせざるを得なかった紗希ちゃん。



「ああ! ごめん! ごめんね!! いや、ヘモーニャが余りにもアレだったから! 大変だね、ルワイフルの人って。そんなのが日常的に存在してるとか」

「いえいえ! ヘモーニャはルッツリンド様がお創りになられた、新しい魔素です!!」


「ん?」

「オペペペラには魔素具現化装置が付いていまして、ルワイフル全域に干渉できる魔素を創り出すことができるのです!」


 顎に手を当てて数十秒。

 だいたい全てを理解した紗希。


「この変態さんの仕業かぁぁぁ!! 何してんの、この人!? やりたい放題か!! 要するに、ぼくがかんがえたさいきょうのパワーじゃん!! 自分がこの世界で常にマウント取るためのルール作ってるじゃん!! そんな魔改造が終わったあとの異世界ヤダよー!!」


 ゲスな事実が判明したところで、覇者がよろよろと立ち上がった。

 マントを翻して彼は紗希ににじり寄る。


「ふ、フハハハハハ! 不覚を取ったわ!! だが、娘! 偶然は2度ない事を教えてやろう!! ディスティニーと言う名のアカシックレコードによってな!」


 迷いなく紗希の胸に手を伸ばすルッツリンド。

 女子のそこを狙った時点で、紗希も迷いはない。


「何してんだぁ! この女の敵ぃ!! せぇい!!」

「おべぇあっ!? ひ、ひぃあ!! ごっほ、ごほ、ヴォエ……びゃああ、ぅぅん!!」


「……のたうち回り方が醜いよ、変態覇者さん。わたし今のあなたが1番怖いもん」

「む、娘ぇ! 貴様、何をしたぁ!?」



「いや、普通の大外刈りですけど?」


 紗希は6年ほど柔道を習っていました。



「よ、よし! 真名を聞いたぞ!! このルワイフルでは、真名に直接ヘモーニャを付与する事ができ」

「あー! もぉ! 何言ってんのかさすがのわたしも分かんない!! でぇい!!」


「えべぇっす」

「先に言っとくと、今のは内股です。あと10種類くらい投げ技できますけど? まだやります?」



「あ。すみません。もう結構です。あの、勘弁してください」

「この人、キャラ作ってた……!! ああ!! もぉぉぉ!! わたしの理想の異世界像がどんどん崩れて行く!!」



 今度はルッツリンドの呼吸が整うまで、20分ほど待つことになった紗希である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 事情聴取を終えて、異世界通の女子高生は結論に最短距離でたどり着いた。


「分かっちゃったよ。イレギュラーに転移して来たから、この世界のよく分からない縛りがわたしに対してまったく機能してないんだ」

「あ。はい。何言ってんのか全然分かりませんが、よかったですね。分かっちゃって」


 正座しているルッツリンド。

 隣ではロリっ子も一緒に正座している。


 変態を隣に置くだけでまだ名も知らぬロリっ子の価値が上昇する事実は、ちょっとだけ紗希の心をほっこりさせた。


「とにかく! ダメだよ! 世界救ったのは偉いけど! その後で圧政とか! あなた、いい年して恥ずかしくないの!?」

「私、17なんですが」


「嘘だよ! わたしとタメ!? どう見てもアラサーじゃん!!」

「リリンソン皇国では一般的な10代後半の男子はみんなこんな感じです」


「ごめんね? よそ様の故郷を悪く言うのって酷いよね? けどさ! ……リリンソン皇国って絶対行きたくないな!!」

「あ。はい。すみません」


 何度目か分からないシンキングタイムの紗希さん。

 彼女は頭の回転が極めて速いので、1分もあれば考えが纏まる。


「とりあえず、わたし行くとこないからさ。オペペペラに乗せてくれない?」

「え゛っ!?」


「やー。だって、食べ物ないし。飲み物もないし。こんなとこに置き去りにされたら、か弱い女子は死んじゃうじゃん?」


 飲食物については自分で食べたのが悪いのではないだろうか。


「ルッツリンド様ぁ! あたしはこちらの方に逆らうの、良くないと思います!!」

「う、うむ! 良かろう! 我が無敵要塞オペペペラへの乗艦を許可してやる!! フハハハハハ!! ……あ。すみません」


「ああ、いいよ! わたしが居候させてもらうんだし! ルッツくんの好きなキャラ演じてて! わたし、来海紗希! よろしくね!!」

「あたしはミリアです! よろしくお願いいたします! 紗希様!!」

「フハハハハハ!! ……ご案内しますので、あの、中へ。はい。フハハハハハ!!」


 無敵要塞オペペペラが紗希の仮住まいになった。

 これから苦楽を共にする要塞との記念すべきファーストコンタクトである。




~~~~~~~~~

 本日も2話更新!

 次話は18時に更新です!


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