第7話 座学の時間
プリシオンへ向けて出発した鳥車は、
最初のほうこそ左右に曲がったり、
急にスピードを出したり、
止まったりとしていたが、
やがて安定して走りだした。
なかなかのスピードが出ている。
「さっそくなんだが、座学の時間だ。」
鳥車に乗って一息ついたセレスとフランに、ミリアが言った。
「お前達はエステバン高等学院で
十日間程度しか勉強できていないからな。」
エステバン高等学院のカリキュラムでは、一年の内、
春から夏を前期、
秋から冬を後期、
と二つに分けており、
その前期と後期それぞれに、
講義や実習が行われる期間と、
単位認定のための試験が行われる期間が存在する。
そして、全ての生徒が受講可能な
具体的には、
などであり、
などである。
個人差がある。
各国には、その時期に合わせたカリキュラムを組んだ高等学院と、
それより下の
高等学院では、
前期または後期が始まる時に
セレスとフランは特例として、
前期の
前期前半の数回分の講義や実習については、欠席した
つまり、
全部で十時間やる授業の内、
前半の五時間に参加できていないうえに、
後半の最初の一、二時間しか参加しなかったような状態である。
「ああ。セレスは、領主の仕事もやってた割に、
かなり教科書や専門書を読み
教師
メインはフランに向けてだ。
セレスは、分からない話題だったら聞いててくれ。」
とミリアが付け加える。
「(よく見ている…!)」
セレスは
セレスはこの十日の間、
領主としての仕事、
旅の準備、
アイザック先生との
学院生の本分である勉強、
ミリアの補習、
自主的な
というハードなスケジュールを
ヴェイカ―が仕事や旅の準備を手伝ってくれていなかったら
フランも
「はい!ミリア先生、よろしくお願いします!」
とフランは乗り気だ。
ミリアもうなずく。
「では、最初の質問だ。
ミリアが
フランは、
「えーと…、空気の中の
代わりに出来るエネルギーみたいなもの?」
と答えた。
するとミリアは、
「ん。大体合ってるな。
例えるなら、食べ物を食べると生きるためのエネルギーに変わるようなものだ。」
とうなずき、
「ただし、
水の中とか土の中とかにもな。」
と付け加えた。
「では、
続けてミリアが
フランは、
「えーと…、
出力した
その人が思った通りに物体を動かしたり変化させたりする感じ。」
と答えた。
ミリアは、
「そうだな。
実は
その
属性のある
つまり、
あるいは手のひらや口から出力した
その
この二つが重要だ。」
と
「もっとも、操るタイプの
例えば火の
実際には燃えるものなんか無いのに、火が出るなんて
出したそばから燃やすようなイメージだと、簡単に自分まで燃えてしまう。
意外と
と指先からシュボッと火を出した。
「ん?
と、フランが
「おや?フランは知らないのか。
それなりに知能があると、
そいつがその気になれば、
とミリアが説明し、
「もっとも、人族や
せいぜい身体能力が他より高くなる程度さ。
一方で、人族や
『
自分を燃やさずに火を
風を
だから、
個体によって
と補足した。
「それが
フランがしきりにうなずく。
「では、次の質問だ。
四大属性と呼ばれているものが何か知っているかい?」
ミリアが
「それは知ってる。
火でしょ。風でしょ。あとは水と土。
ミリアさんが火の属性で、ティナさんは風の属性。」
と指を折りながら答えた。
「そうだな。
自然界における四大要素とされているものが、そのまま四大属性と呼ばれている。
トレトス教の神で言うと、
火は
ミリアも指を折り、
「ちなみに、四大属性の
と補足する。
「はい、先生。
ミリアさんやティナさんは
あれには何か意味があるの?」
フランが挙手して質問した。
「いい質問だ。」
ミリアがニコリと
「
言いながらミリアが右手で自分の杖を持ち上げると、
「さっき説明したように
だから木製の
そして
本当に
ちょうど、川や水路を通る水のようなイメージだな。
手のひら全体から出力すると広すぎたり、多すぎたりするし、
かといって指先から出力すると
自分がよく使う技にちょうどいい
と
「
そういう意味では、セレスはよく
と続けた。
「へー。そうなんだ。
私も将来は
フランがうなずく。
「では、次の質問。
ミリアが
「えーと…、肺?」
とフランが答えると、ミリアがジロリと無言でフランを見つめた。
「うぅ…。分かりません。」
フランが言うと、
「そう。実はよく分かっていないんだ。」
とミリアが言う。
『えぇ…。』
という顔で今度はフランがミリアを見つめるが、ミリアはそれに構わず、
「現在の科学では、
生物のどこで
よく分かっていない。
息を止めていても
おそらくは肉体全体がその機能を持っているか、
と言い、
「三百年前の人族と
身体から臓器をそれぞれ
どの臓器が
なんて人体実験さ。」
と、両手で胸や腹のあちこちを
「ひっ…。」
フランが悲鳴を
「『どこで
と考えたんだろうね。
だが結局のところ、人族でも
どの臓器を
その実験の記録では、
『
と結論付けていたようだね。
私は絶対に
ミリアがフゥーと大げさにため息をついてみせる。
「では、
ミリアが続いての質問をすると、フランは、
「えー…?
と頭をひねる。
「そうだね。おそらく、その認識で
とミリアがうなずく。
「だが、考えてみてほしい。
なら、どうして
上限というのは文字通りの上限じゃない。
やり過ぎると意識が遠のいたりする、あの
とミリアが片手で頭を
セレスは、フランが父の
「タルに上から注ぐ水より底から
いずれ無くなるのは当然だし、
それで
だが、そうじゃない。
生命活動には不要な、ただ生きるだけなら必要ないはずの
無くなると実際は意識を失ってしまうんだ。
それを
そして、何日も
出力できる
息をするように生成されているはずの
グラスに注ぐ水のように、一定量に達するとどこかへこぼれていくんだ。」
とミリアが語気を強め、
「結論を言うと、
と
「
セレスが口を
セレスが読んだ本では、
「
という理論しか書いていなかったからだ。
「私の持論だがね。
だが、しっくりこないかい?」
ミリアがニコリとする。
「(たしかに。)」
エステバン高等学院でのミリアの補習で、
とにかく長い時間
反対に
自分の肉体が自分でなくなるというか、
自分の存在が
あれが
フランは、うつむいて、
「
と
気づくと鳥車の外が
ザーザー…と音がし始めた。
雨が降り出したらしい。
「話を続けるぞ。
だが、
私の持論では説明がつかないものもあるんだ。
それが
と、ミリアが座学を再開した。
「
フランが考え
「あっ!そうか!」
と
「そうなんだ。」
ミリアが言った。
「
『
だ。
だから、例えば風の
火属性の
風を操れる。」
ミリアが荷物から小さな緑色の風の
実際に鳥車の中で、そよそよと風を起こす。
「もっとも、こんな小型の
せいぜいこうやってそよ風を起こしたり、火を起こしたりできる程度だな。」
と
「
その動物が持つ
だが、
物質として出来上がるのはおかしいだろう?」
とミリアが言う。
「しかも、動物の体で
肺の中だ。
つまり、肺の位置で
とミリアが首を横に
「このことが、
フランがさっき言ったように、
肺で
ミリアが右手と左手を
「はい、先生。
動物の肺で
フランが再び挙手して質問する。
「いい質問だ。」
ミリアは言うと、
「実は人族でも
実際、私の
『肺の病気にかかった。』
と
外科手術をしたら小さな石が出てきたんだ。
火の
と
「その師匠が言うには、おそらく
その燃えカスが積もりに積もって
人族や
逆に動物は、知能が低いから
ミリアが片手の指で、燃える
「それから、生存率の
でも、
その中ではむしろ、生き残る人のほうが希だ。
だから、長い年月を生きた
人族や
と少し
おもむろにミリアが荷物から
一口飲み、ハーッと息をつく。
それから今度は、スーッと深呼吸したかと思うと、
両手を上に軽く
そして両手を下ろしながら再びハーッと息を
「…さて、戦争の話題が出たから、人族と
ミリアが言ったその時だった。
鳥車の運転席側の窓がガラッ!と開くと、
びしょ
「
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