第4話 もう一人の
早朝のブランパーダ家の
今日は学院は休みである。
いよいよ明日は、ナルグーシスへ出発する日だ。
『火の
ナルグーシスまでクーデターの
その情報は、
ソリアード国の公報にも見出し付きで
セレスはというと、
父が
「いい仕上がりだ。まだまだ
とアイザックがニヤリと笑い、最後の練習が終わった。
「こちらの都合で急にクビにする形になって申し訳ありません。
と
「なあに。元々、拾ってもらった身だからな。
元通りに
とアイザックが答え、
「本当は付いて行ってやりたいが…、この国が暮らしやすくてな。
無事に帰ってこいよ。」
とセレスの
アイザックが
ある
「
とヴェイカ―が
その
それを見ていた父が、
「不在がちな自分に代わって、ぜひとも息子の
とアイザックに金を積んで
どこかの国の軍にでも所属していたのか、
「自分より弱いやつにアゴで使われるのが
何もかも放り出して
と最初は
次第に表情豊かになっていったのが、子供心に印象に残っている。
もしかしたら、その国が東のほうにあるのかもしれない。
アイザックは、人体の筋肉や骨の構造に精通していて、
かなり理論的に
セレスの
フランの『チュ~』
また、息子のためと
父自身も練習台としてたびたびアイザックと
二人は良い友人でもあった。
「働き口のアテがなければヴェイカ―を
とセレスが言うと、アイザックは首を横に
「実はイルシダのほうで
金は余ってるしな。
お前みたいな
そういうやつの根性を
と語り、
「お前が勇者として名を残す時が来たら、
『親子二代の勇者に認められた
とでも看板に書くことにするよ。
ハッハッハッ…。」
と笑った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
昼食を食べ終わった
王宮で最高級品を用意してくれるという申し出を丁重にお断りし、
イルシダにあるブランパーダ家
セレスとフランの旅装束を急ぎオーダーメイドしたのだ。
「どうかご無事で。」
届いた荷物には、店主の直筆であろう短い手紙が
店へと出かけ、身体のサイズを測ってもらっているとき、
セレスとフランが何も言っていないのに、
両親と
何かを察してくれたのだろう。
「お父上様に
『デュレオム』
を背負ったセレスに、
ヴェイカ―が
「そうだ。ヴェイカ―。
ちょっと大変だと思うけど、これを今日中に届けられるかい?」
セレスはヴェイカ―に三通の手紙を差し出した。
「…これは?」
ヴェイカ―が
「こっちの分厚い一通は、イルシダの町長、トマス家へ
ヴェイカ―と協力して領主代行を務めてもらう件は、
直接あちらの
改めてそのお願いと、
領地運営に関する各種書類の原本や写しを
セレスが言い、続けて
「そして、こっちの二通は、ティナとレイの、
ブランパーダ家の領地と
ジューヴェルデ家とゴルディネロ家へ
もし、僕とフランが帰らなかったときは、
国王やトマス家を交えて、領主不在になったこの領地について
どうするのか協議するようにお願いしておこうと思ってね。」
と言うと、
「それは…。」
ヴェイカ―が
「セレスティアーノ様…。ご立派になられて…。」
と
「だが、安心してくれ。
フランやミリア、他の仲間もいるんだ。
無事に帰ってくるつもりさ。」
ヴェイカ―の
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そろそろのはずなんだが。」
ゴーン…、ゴーン…。
と教会のほうから
季節は初夏に差しかかろうというところであるが、
朝日も
「この場所、この時間帯に、
旅のための
ミリアが、鳥舎がある王宮の西側を見つめながら言う。
ソリアード国の王宮正門にほど近い鳥車止めには、五人の男女が立っていた。
一人はセレス、一人はフラン、一人はミリア。
そして、近衛兵のステファン・サバスエロ。
身長はセレスよりやや低いが、
黒い
身長と同じくらいの
重そうな
(今は
ステファンは、
その能力は
王から旅への同行を命じられたステファンも、
近衛兵としての仕事の合間にミリアの補習にたびたび参加しており、
アイザック先生のようなフェイント等のテクニックはあまり使わない、
正統派な
その実力は折り紙付きで、
セレスを
そのたびにフランがキャーキャー悲鳴を上げてケガを治し、
というのが定番になっていた。
「まだまだ
パワーとスピードを同時に上げることはできないんです。」
と本人は言っている。
もう一人は、ジューヴェルデ家の領地で、
トレトス教の司祭を務めているという、アンネ・ナスルーナだ。
白を基調としたトレトス教のマークが付いた法衣とストールを身に着けていて、
後頭部できっちり結んだブロンドヘアの上には、
司祭であることを示す帽子が乗っているのだが、
なぜか目がすっかり隠れてしまうほど前髪が長く、
その表情はほとんど読み取れない。
アンネは、
活性
ソリアード国内の
「ナルグーシスまでの旅へ同行できる適任者を
と国王の
「我々にお任せください。」
とトレトス教の総本部が
半ば強引にアンネのことを
「どうも。アンネ・ナスルーナと申します。
『アン』
と呼ばれるのは
『アンネ』
とお呼びください。」
と最初にボソボソと自己
あまりしゃべらない人物なのかもしれない。
また、その荷物はどうも、ほとんどがポーションか何かが入ったビンのようだ。
活性
用心深い人物なのかもしれないというのも付け加えておこう。
ちなみに、父であるルザリーノと母であるエストレアもそうだったが、
セレスとフランが正式に勇者と聖女になった
トレトス教の司教の地位に就くことになる。
つまりセレスとフランに対するアンネは、
将来は上司に対する部下の関係になるかもしれないのだ。
「鳥車の担当者が
ステファンの言葉に、業を
「
言いながらミリアが鳥舎のほうへ歩き出そうとした。
と、
正門からガタガタと四頭の
「こんな早朝に王宮に客人かな?」
ミリアがこう言っているということは、あの鳥車は目的の鳥車ではないのだろう。
「(ん?見覚えのあるあの
セレスが目を
バタン!
と鳥車のドアが運転手により開かれ、
「やあやあ
と一人の人物が降りたった。
「えっ?」
とアンネを除いた全員が言った。
旅の準備を整えたレイだった。
ステファンほどではないが、金色を基調としたしっかりとした
「レイ、どうして…?」
とセレスが言うと、レイは、
「
とセレスの
手紙には確かに、父と母が亡くなったことと、
ナルグーシスへ旅に出ることも書いた。
が、そんなつもりではなかった。
「しかし…。」
とセレスが口ごもっていると、ミリアが
「いいじゃないか、足手まといにはならなそうだ。」
と言いながらレイに歩み寄り、
「命を投げ出す
と少しドスの効いた声で言った。
「そんな
さらりとレイが言う。
「は…?」
ミリアが
「
『フランを全力で守る。』
という
そうすればきっと、
とレイがミリアにニコニコと笑いかけた。
「…なるほど、ごもっともだ。」
ミリアもうなずいてニコリとする。
「では行くか。
実は鳥車が
ミリアが言うと、
「お供します。
さあ、フラン。行こう。」
とレイはセレスのほうにウィンクしつつ、フランをエスコートしだした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ようやく朝日が
王宮の大きな建物の
木造の大きな建物、
『
その近くには大小さまざまな鳥車も並んでいる。
羽ばたいて跳び上がったりはするものの、空を飛ぶことはできない。
どちらかというとその大きな二本の脚で走るのが得意な鳥である。
一口に
身分の高い人の移動用としてよく見かける白、軍用によく用いられる黒の他、
灰色や茶色のものもいるし、
それらの雑種であるブチやシマ模様の羽色を持つものも多い。
また、食肉用、移動用、あるいはレース用といった品種の
セレスは、
円形に近い
国によっては行われている。
そのレースの結果を使った
場合によっては
鳥車を引きながらの移動となると、パワーのある移動用の品種に分があるが、
単に速く走ったり、長
身軽なレース用の品種に軍配が上がるといった具合である。
そしてその両方、すなわち、
鳥車を引き、かつ長
はっきり言って困難を極めるらしい。
西側諸国の流通の中心でもあるソリアード国といえど、
そんな能力を備えているのは、
王宮で専門に管理されている中でも
その
「キュー!キュー!…!」
と何だか
たいまつを持った一人の兵士が、あわてふためき、
しきりに周囲を気にしているようだ。
「おーい!私だ!ミリア・マロジョテスだ!」
と呼びかける。
と、
その兵士はビクッと体を
「お逃げください!
「なっ!?」
と、
一同が身構えるのと『それ』が姿を現したのは同時だった。
鳥舎のドアの
その兵士にまとわりついた。
「うっ!?うわああああっ!」
兵士が
口から体内へ入っていくのだ。
兵士は
「ヒッ…。いやだ…死にたくない…。たずげっ…!」
言い終わる前に兵士の
次の
ボトボトボト…と
兵士の胸から男の、
兵士のあばら骨をメキメキと
右手には大きなダガーを持っている。
「
とボヤくように
バタン!と兵士が仰向けに倒れると、
「そうすりゃ、お
と左ヒジを地面につき、その左手に頭を乗せながら話し続けた。
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