第二章
第69話 名無し
私には名前がなかった。
親も知らない。
生まれた場所も知らない。
あるのは強烈な空腹感と孤独だけ。
人の温もりを知らず。
愛の何たるかも知らず。
ただそこにあるだけの存在だった。
このまま何も知らず。
このまま誰にも知られず。
ただ死を待つだけの人生。
それが私に与えられたもののはずだった。
そう。
あの日貴方に出会わなければ。
貴方に見つけてもらったあの日から。
私の運命は変わった。
伝説の勇者様の子孫。
誰よりも努力家で。
誰よりも優しくて。
誰よりもかっこいい。
そんな貴方が私を見つけてくれた。
初めて貴方に出会った日から、白黒の世界が色付いた。
ただ死を待つだけの毎日が、輝かしい日々に変わった。
貴方の瞳。
貴方の手。
貴方の横顔。
ただ貴方を見ているだけで、私は温かな気持ちになれた。
王族である貴方。
身元も分からない浮浪児の私。
釣り合わない身分でも貴方は気にしなかった。
対等な人間として接してくれた。
貴方がいなければ私はない。
貴方がいない世界なんて考えられない。
ずっと貴方と一緒にいたい。
それが私の願い。
貴方の役に立ちたい。
それが私の生きる目的。
貴方が私を人にしてくれた。
貴方が私に愛を教えてくれた。
ただ貴方といるだけで、私は笑顔になれた。
ただ貴方が微笑んでくれるだけで、私は幸せになれた。
何もない私だけど。
貴方とは全く釣り合っていないけれど。
それでも私は貴方と一緒にいたい。
死んでも。
生まれ変わっても。
貴方のそばにいたい。
貴方のことが好き。
世界で一番好き。
貴方は私の全て。
愛してます、ルークさん。
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