第30話 征服
「征服は順調か?」
眼鏡をかけた長身で顔の整った男の問いかけに、若干童顔だが同じく整った顔の金髪の青年が答える。
「順調も何も失敗しょうがない」
金髪の青年はめんどくさそうに言葉を続ける。
「他人をすぐに信用して簡単に騙される。二千年の平和に慣れて戦争を知らない。そんな馬鹿な相手。それに加えて女神様から与えられた称号の力と、欲に釣られて集まってきた扱いやすい兵士。これでどうやって失敗すればいい?」
眼鏡をかけた男は、金髪の青年の言葉に苦笑した。
「小さな鬼の村を滅ぼすのに失敗した奴がいたからな。心配で念の為確認に来た」
眼鏡の男の言葉に、金髪の青年は不機嫌そうな顔をする。
「あんな馬鹿と一緒にするな。鬼神の強さはわかっていたはずだし、魔王軍の残党が邪魔をしてくる可能性は分かっていたはずだ。敵の戦力と増援の可能性も考慮できない馬鹿は、失敗して当然だ」
眼鏡の男は、金髪の青年の言葉を聞いて真面目な顔をする。
「それならお前は大丈夫なんだな?」
金髪の青年は当たり前だろ、という顔をする。
「当然だ。俺とアイツの称号の力で、王は堕落させ、エルフの二割はダークエルフに堕とし、こちらの戦力にした。一番の脅威は長老と呼ばれる個体だが、その個体に勝てる戦力も用意してある。この辺りにいる魔王軍の残党の力も、この間失敗した馬鹿のおかげ把握でき、それに対する備えも万全だ」
金髪の青年の言葉を聞いて、眼鏡の男が笑みを浮かべる。
「さすがだな。だが、それ以上に不測の事態が起きたら?」
眼鏡の男に対し、金髪の青年はまたもや当然とばかりに答える。
「予備戦力を用意するのは当たり前だ。戦闘に特化した称号持ちを複数人用意している。例え鬼神級の敵が追加で現れても対処できるだろう」
金髪の青年の言葉に、眼鏡の男が頷く。
「さすがだな。欲に目が眩んだ馬鹿ばかり相手にしていると、疑い深くなってしまってよくない。お前みたいな奴がいてくれて助かるよ」
眼鏡の男の言葉に、金髪の青年が頷く。
「さっさと亜人どもを根絶やしにして、女神様に願いを叶えてもらわなきゃならないからな。目先の欲に駆られて本来の目的を忘れる馬鹿たちと一緒にされては困る」
金髪の青年の言葉を聞いて、眼鏡の男はクククと笑う。
「その目先の欲が叶えたい目的の奴らも多いんだろう。女神様から特別な力をいただき、元の世界じゃ考えられないような美女を犯し放題犯して、金も地位も思いのまま。それで満足する輩ばかりなのはおかしくない。お前こそ、エルフという極上のメスに囲まれて、欲に駆られないのか?」
眼鏡の男の言葉に、金髪の青年はめんどくさそうに答える。
「目先の欲に駆られないよう、性欲所利用に何匹かは飼ってる。人間、欲に弱いのは間違いない。ただ、その欲に流されて本来の目的を忘れないよう、適度に発散させればいいだけだ。お前も欲しければ好きなだけ連れて行っていいぞ」
金髪の青年の言葉に、眼鏡の男は笑う。
「ありがたい話だが、お前も知ってる通り、わざわざもらわなくても、極上の女を飼ってるし、欲しければ自分で手に入れる」
眼鏡の男の言葉に、金髪の青年は笑みを浮かべる。
「そうだったな。余計なお世話か」
金髪の青年の言葉に、眼鏡の男はにいっと笑う。
「とはいえ、オスもメスも、エルフは性処理用に人気が高い。女神様の目的が亜人の根絶やしじゃなければ、生かして活用したいと思えるほどだ」
眼鏡の男の言葉に、金髪の青年は頷く。
「ああ。だからこそ、この何千年もの間、他の亜人と区別して、これまで放置してきたんだろうからな」
眼鏡の男も頷く。
「だかまあ、それも終わりだ。せいぜい、他の亜人を根絶やしにするまでの間、馬鹿な兵たちを操る道具として、有効活用した後、廃棄してやろう」
眼鏡の男の言葉に、金髪の青年は真顔で答える。
「エルフの味を覚えた味方から反発が起きそうだな。外見も、肌も、喘ぎ声も、締まりも。これほど性処理に優れた道具はない」
金髪の青年の言葉に、眼鏡の男は頭を掻く。
「それが悩ましいんだよな。誰かの称号の力で生殖能力を奪うことを条件に、道具として存続させられないか女神様と相談するか」
そんな眼鏡の男を見ながら金髪の青年は、部屋の窓から見えるエルフの城を眺める。
彼にとってはあまりにも簡単な仕事だった。
人を疑わない馬鹿な種族。
最も賢く力があると言われていたその王でさえ、簡単に騙され、もはや廃人となった。
称号の力を使い、オスメス問わず神国の兵士と交わらせ、こちらの戦力とした。
十分な戦力を用意し、死角はない。
所詮、魔力が高いだけの、世間も戦いもよく知らない種族。
将棋でいえば詰みの状態。
あとは、相手が負けるのを待つのみ。
つまらないな、と金髪の青年は思った。
元の世界でもこちらの世界でも、彼は本番での負けを知らない。
不測の事態まで考慮した万全の準備を行い、確実に勝利を掴む。
彼にとって、今回のエルフ征服は、あまりにも簡単な仕事だった。
だが、負けるよりいい。
もう直ぐ落ちることになるであろうエルフの街を眺めながら、彼は心の中で呟いた。
その心の中に、陵辱され、殺戮される異種族への同情はかけらもなかった。
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