第21話 罪

 罪。

 存在することが罪。


 女神様が作られたこの世界に存在する穢れ。

 私はその全てを払わなければならない。


 美しく清浄な世界のために。




 魔族。


 人間の血肉を喰らい、醜くも長かき命を得ようとする種族。

 なんと悍ましい。


 殺さなければならない。

 殺し尽くさなければならない。


 見かけの容姿は整っていようとも、その中身は穢れている。

 今は人間を食べなくなっていようと、過去の罪は消えることはない。


 その穢れた血は絶たなければならない。





 獣人。


 半分獣の低脳な種族。

 なんと愚か。


 飼われるのならともかく、獣のくせに人であろうとするなんて。


 醜い。

 臭い。


 獣は獣らしく、飼われるか狩られるかその二択しかない。


 それが嫌だというのなら。

 駆除するしかない。





 鬼。


 魔族と同じ。


 過去人間の血肉を喰らっていた穢れた血の流れる種族。

 暴力しか脳のない野蛮で粗野な生き物。


 狩らねばならない。

 首を取らなければならない。


 鬼とは悪。

 鬼とは邪なもの。


 一匹残らず殺し尽くさなければならない。





 人魚。


 魚類のくせに人を装う種族。

 なんと烏滸がましく業腹なことか。


 魚類らしく水槽で飼われるなら問題ない。

 その歌声で蓄音機となるのなら許せる。


 だが、魚が人として振る舞うのは許せない。


 獣人と同様だ。


 飼うか、狩るか。

 それが嫌なら滅ぼすしかない。






 ドワーフ。


 土竜のような醜い種族。


 背が低く、太い。

 オスはその上毛だらけ。


 醜い。


 それだけで罪。


 土竜は土竜らしく、一匹残らず土に還してやるしかない。






 ドラゴン。


 トカゲの癖に人間より上位の存在として振る舞う種族。


 長命で強靭であれば優れていると勘違いしているトカゲ。


 思い知らせてやらなければならい。


 神の前では無力なことを。

 所詮、武器や装飾の素材でしかないことを。





 エルフ。


 耳が長く長命なこと以外、人間と変わらない。


 いや。


 その容姿は女神様のように美しく、人間では及ばない。

 容姿の優れている魔族や鬼よりさらに女神様に近い。


 森と共に生き、不必要な殺生も破壊も行わない。


 だからこそ、これまでも生かされてきたし、女神様の望む美しく清浄な世界にも存在することを許されていた。






 ……でも、私は思う。


 女神様の世界に、女神様以外で、女神様のように美しいものが必要か?

 個人ならともかく種族としてそのようなものが存在してもよいか?


 神は神として唯一だから尊い。


 私はそう思う。


 だったらいらない。

 神のように美しい、神ではないものなど、この世界にはいらない。


 ……滅ぼそう。


 美しいままではなく、穢してから。

 この世に存在してはいけないと自ら思うようにしてから。


 全てはそう。


 私の思う、女神様のための理想の世界を作るために。

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