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「そうやって……いつも私を馬鹿にして見下して……そんな女、妻としても王妃としても相応しいはずがないだろう」

「それは貴方が見下されていると思っているだけでしょう? 私が主席で、貴方は違うから」


 そう。それもまた、リュシアンのお気に召さなかったようだ。どうしようもないことなので、放っておいたが。


「これは貴方の言う②の答えになるかと思いますが……私は国王陛下や王妃様、そして両親から首席卒業を義務づけられていたのです。当然の責務を果たしたまでですわ。貴方こそ、人のことを妬み羨みやっかむ暇があるなら、次期国王に相応しい行いをなさってほしいものですね」

「な、なんだと? よくもそんなことを……」

「言いますとも。謂れのないことまで喚き立てられて、せっかくの晴れ舞台を台無しにされたんですものね。かたや学院の科目すべてにおいて主席をとり、その間に王妃様直々の王妃教育も受けてきた私。かたや学院の成績は悪くない程度で、婚約者そっちのけで他の女にうつつを抜かす放蕩ぶりの王子。いったいどちらに非があると思われますか?」

「う、うつつを抜かすなどと……」

「なんなら重臣会議にかけてもいいんですのよ。王子と公爵令嬢との破談ですもの。陛下や父、その他の貴族方にもご意見を伺わねばなりませんね。そうだわ、それがいい」


 何かの機会に見た歌劇のように、今度はレティシアが高らかに謳った。


「最後の③ですが……ええ、そうですね。この婚約は破談がよろしいようですね。相応しくないようですもの」


 そう、言い放ったレティシアは心の中でぐっと拳を握りしめた。

 ようやく、言ってやった。子供の頃から妬ましい視線を向けられる度に、わざとらしくアネットとの睦まじい姿を見せつけられる度に、ずっと言ってやりたかったことを。


 リュシアンはレティシアが悔しがるか、あるいは泣いて許しを請う様子を期待していたようだ。


(お生憎様。私はあなたと違って遊んでなんかいなかったんですから)


 笑みが、止められなかった。

 リュシアンが悔しそうに歯がみして、拳を握りしめていた。そして、喉の奥から声を絞り出していた。


「……偽の聖女のくせに」

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