【新連載版・3話】奇妙な二人組
夕暮れ時のことだった。
自宅から徒歩で3分ほどのコンビニへ向かっていたところ、俺は薄暗い道端に、奇妙な人影を見つけた。
迷子だろうか?
そう思いつつ、いきなり声をかけることは躊躇われた。
周りに親御さんがいるのかもしれないし、こちらが不審者に思われたり、変なトラブルに巻き込まれたりするのはまずい。
でも本当に困っているのだとしたら、放っておくことはできないし……と目をやると、幾つもの奇妙なことに気が付いた。
そこにいたのは、5、6歳ほどに見える少女と、彼女が連れているらしき白い犬のような生き物。
まず違和感を覚えたのは、彼女の服と顔立ち。
どこか、異国の地からやってきたかのような変わったドレスに身を包んでいる。
整ったフランス人形のような顔立ちも、日本ではない国や文化の中で育ったかのように見えた。
肩からさげているポシェットは、奇妙なモンスターを模したものだった。
そして彼女が連れている生き物。白い、もふもふとした毛。
大きさと、四つん這いの姿からしておそらく犬。
あまり見たことのない姿をしている気もするが、俺が知らないだけで、珍しい犬種なのだろう。
この辺りまでは、まぁぎりぎり「ちょっと変わった二人組だな」くらいで済む。もしかしたらどこか遠くの国から旅行に来たものの、ちょっとした隙に親とはぐれてしまったのかもしれない。
ここは田舎の地方都市。地元の人間である俺からすると大して目玉となるような観光地はなさそうだが、文化財的なものは幾つかあるかもしれない。
だが決定的に奇妙だったのは――
「透けてる……?」
彼らの姿から、向こう側の景色が見えたこと。
つまり、俺たちが一般的にイメージするところの「幽霊」に見えたことである。
彼らは俺の視線に気が付くと。
「げっ……」
彼らは勢いよく、俺に近寄ってきた。
そして少女は、俺に向かって言った。
「××××」
「え……」
何と言っているのか、さっぱり分からない。
この幽霊の言葉……日本語じゃない?
というか、幽霊に国籍とかあるのか。
意識を音に集中し、耳を傾けてみるが、
「×××××××」
やはり聞き取ることはできない。
日本語ではないとして、英語……でもない気がするけど。
どこの国の言葉だろう。
すると、白いもふもふした犬も吠えた。
「××××××」
うん。犬の言葉は、当然分からないな。
すると少女が犬に話しかけ始めた。
犬もまるで、彼女の言葉が分かっているように吠えている。
うーん、不思議な二人組だ……。
いやいや、待て待て。
俺はそこで、半透明の彼らから視線を外した。
おい、どうしたんだ。
なに当たり前のように、幽霊の存在を認めちゃってるんだ。
俺、今まで霊感があるような経験したことないじゃないか。
でも……。
俺はまた、犬と少女に視線を戻す。
目の前の少女がまばたきし、長いまつ毛がぱちぱちと揺れる。
「あそこの影に、いま白装束の女らしきものが!」とか、そんなレベルじゃない。
がっつり、目の前にいるんだよなぁ……。
よし。
俺は覚悟を決め、まずは白い犬に手を伸ばす。
そう、俺は疲れているんだ。半透明に見えるような感じがするのは、たぶん目の錯覚みたいなもので、だから少女と犬は、たしかにこの場所にいるんだ――
「……!!」
言葉にならなかった。
今度は、少女の肩に手を置いてみる。
こちらも完全にアウトだ。
犬も、少女も。
触れようと伸ばした俺の手は、彼らの体を見事にすり抜けてしまった。
「まじかよ……」
本当に幽霊なのかよ。
そして俺、見えんのかよ……。
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