【新連載版・2話】現在のステータス

「仕事、本当にやめちゃったなぁ……」


道を歩きながら、俺は胸のうちで呟く。


27歳、恋人なし、無職。

自分の今のステータスを改めて考え、俺は思わず息をはいた。





新卒で入った会社を辞めたのは、つい一週間前のことだ。


「どんなに辛いことがあっても、経験だと思って、3年は辞めずに頑張ろう」

そう自分に言い聞かせて、入社時から、自分なりに真剣に、仕事に向き合ってきた……つもりだった。

取引先を回り、何とか新商品の話を聞いてもらえるよう、笑顔を見せて、頭も下げて。

あまり得意でないながらも、周りとコミュニケーションをとろうと意識した。


そうして自分で決めた3年、さらにそこから2年、耐えてみたが――特に何かが変わったとか、得られたとかいう実感はまるでなく。

ただただ毎日、仕事のことだけを考えて過ぎていった日々だった。


休みの日にも、どこかに出かけようとか、何かをしようという気力は全く湧かず。

取引先からかかってくる電話やメールに対応しながら、合間に眠っているだけで休日はあっという間に消費されて。


やめた今となっては、古い体質の、ブラックな企業だったのではと思う。

そうではなく、もしあれがの社会人の生き方なんだとしたら――あまりにも普通のハードルが高すぎる。

手取りは安いし、毎日仕事に追われているし、休日はただただ死んだように眠っているし。


いやいずれにせよ。


「とりあえず、再就職はしなくちゃな……」

道路に転がる石を蹴り、俺は考える。


でもそうなったとしたら、何が起こるのだろう。

ただ仕事のことだけを考える日々が、また始まるとして。


その先は。

俺はこれから、何のために生きていけばよいのだろう?






夕暮れ時のことだった。


自宅から徒歩で3分ほどのコンビニへ向かっていたところ、俺は薄暗い道端に、奇妙な人影を見つけた。

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