記録15―平穏と冒険そして邂逅⑮―
階段の上から差し込む光の
「……そろそろ頃合い、かな?」
スピネルは左手で桃色の髪を払うようにすると耳に挟んでいたカギを手にする。
科学者然としたヒューマンから勘づかれないよう実験室にある枷のカギを自慢の髪でコッソリと隠して手に入れていた。手枷を解錠すると次に首と足にかけられた枷を外した。
「よっと。まぁ、こんなところかな。
さあーって。こんな陰気な牢獄をいつまで居ても退屈。さっさとここを脱出しないと。
今の時刻は……おそらく零時かな」
聞こえないよう低く抑えた声で独り言をくちにする。まずはスピネルが鈍った身体をほぐしてから、その後に小さく息を吸っては吐いた。それから階段を音を立てずに駆け上がる。ここまでのアクション順調ながら懸念を過ぎるものがあった。もし上がり階段の先からドアノブが閉まっていたら他にもバッタリ遭遇しないかの不安があふれ緊迫感で高鳴る。
その不安が起きず幸運にもそれは杞憂であった。
まったく人の気配が感じない家屋の中は施錠はされず、すんなりと脱力をおぼえるほど開けれた。
(それもそうか。
囚われた檻からでも閉まったドアには隙間から明かりが差し込んで見えるわけだから。造りからしてお世辞でも丁寧とはいえないよね、ここは)
杜撰な作りは侵入を防ぐ機能が皆無。
ドアの先にあったのは調度品が少なく簡潔なものしか置かれていないリビングだった。
ここが古びた木造建築なのは見てわかったのでスピネルは床を極力と
口元を収めてスピネルが目にして衝撃だったもの壁にかけられていた槍が取り付けていた。
不用意な徒歩しないように立ち止まると没収された武器を物音を立たせず忘れず回収する。
ここまで動けたのは姉のカンヒザクラが入念な準備をした逃亡計画をあせらず確実に整えていくのを間近で見て学んできた。
だからこそ無事に安寧の地へと行けた。
妹のスピネルは
(大切な物を回収したし。
ラストミッションここからは一直線で、このまま出入口まで密かに外に出るだけ!)
耳に入るか入らないかの微かな音。小さな軋み音を立てながら冷静にスピネルは出入口に向かって移動する。
そして鼻の奥にむず痒さをおぼえると。
「クシュン!し、しまったァァァ!!」
盛大にクシャミを放った。
鼻粘膜の刺激には逆らえず小さなクシャミをすると慌てふためくスピネルは声を上げた。
そのパニックした叫び声は、奥の部屋にある研究室にまで届いた。
没頭して熱中していた
「むっ、捕まって精神が恐怖に塗りつぶされた叫びか。まったくこれだから女のサンプルは」
パニックを起こすのは実験対象されたばかり多々あるケース。そう思い研究に戻ろうとした手をまたもピタッと止まる。
そう結論して戻ろうとするマッドサイエンティストはこれを楽観的な考えではないかと疑問を追いやらず思考を深める。
あの音を防げないぐらいに杜撰な構造とはいえ、ここまで声が届くものなのかと白衣の男は不審となり腰を上げた。
「万が一を捨てれない。防音が効いていないとはいえ万が一という可能性があるからね。モルモットが天才の頭脳から読めない言動と頭があるとは思えないが確認して。
防衛として軍用オートマトンを起動して行こう」
机の引き出しからスイッチを取り出す。
複数のボタンのうち大きい方のボタンを押すとオートマトンは起動音を鳴りだす。
するとボタンを押した宮下龍斗は部屋を出ると……研究サンプルである桃色の髪が似合う美少女、スピネルの目と合った。
「「……」」
沈黙が支配する。
目と目が合いながらも眼前の事実を理解しようとするまで情報処理には時間を要した。
驚愕するスピネルは目を見開いて硬直に対して宮下龍斗は瞬きだけを繰り返していた。
「う、うわあぁぁッ。それじゃあ私は、お
全速力でスピネルは駆け出してドアを打ち破って突き進んでいく。その背をどこか
「はっ!オートマトンよ追え、とにかく追いかけろ。あのモルモットを逃がしてかえすなぁ!」
慌てて追撃するよう命令を飛ばした。
オートマトンは支持に従い乱れぬ動きで静かに追撃しようと動く。
マッドサイエンティストの彼は一旦そこから部屋に戻ると武装をしてから追いかけるのであった。
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