記録13―平穏と冒険そして邂逅⑬―
霊山の切り立った断崖。
世捨て人の内ケ島は落ちてもおかしくないスレスレの崖の上で佇む。彼はここで空を眺めていた。見飽きると眼下に広がる景色と視線を変えて眺める。
「平行線のまま写り変わらぬ、群青と大地」
依然と世界は時の針を止まったまま。
代わり映えのしない
「魔法は希望を与えたのは間違いない。
難病や虐げられるだけの人は減っていた。
だが破滅までも撒いた。
悲鳴をあげた不随する目に見えない事象の声を耳を貸さずに世界を平和に自由を胸に抱えて戦争を起こした。根本的には同じだというのに」
誰も彼もが上級魔法や禁断魔法までも発現させて使えるようになった世界。魔法を目覚めてから誰もが勇者にもなり魔王にもなれた。しかし選ばれし真の勇者や魔王は存在しない。
「まるでゲームやスポーツみたいだった。
契機となった魔法。それは用意された隔てなく万人が魔法を駆使するのは爽快に尽きる。無邪気すぎた代償としては取り返しがつかないところまで来てしまった」
他を屈服させる絶対なる力を
イジメや性被害、傷害事件などの社会問題と切って離せない深刻な課題はその日に対抗する反撃能力が高すぎることから恐れて抑止となった。
「虐げる輩が命を懸けてやる理由がない。
たとえ物量でものを言わせようともしても。
道連れの魔法の爆発、自爆もそうだろう」
魔法を世界で波及してから被害者が最後の手段として体内と大気のジェネシスエネルギーを膨らませて爆発を故意に起こす。
追い詰められた魔法暴走の蒸発は小規模の核ともされる脅威性から襲う者はいない。
「魔法の唱える数が同じなら差を埋まらない。なら技術や技それと補助機になる」
まだまだ技能や戦術などで差が埋まることはあれど魔力量や魔法の威力といったものでは埋まらない。
ファンタジーではない現実は現実に世知辛いと当時の人は嘆いていたなと内ケ島は想起する。
そのゆえ勇者と魔王は現れる事はいない。
「これだけの力に覚醒しておいて人かよ。
もう命や愛を尊さなんて忘れた哀れな化け物だ」
内ケ島ウジマサは孤独を抱えて雲に向かって叫んだ。唾棄する心に蓄積していた負の感情を吐き出して幾分か晴れる。おもむろに背後の建物に反転して歩き出す。
内ケ島はここを住宅として勝手に使用している。
日本三霊山の一つとしてかぞえられる富士山。そこから山頂にある峰には剣ヶ峰には建設された測候所がある。
人生観の価値をどうしても見い出せない彼は世をはかんでいた。ずっと身体が十七歳で止まったまま六千年の恒久的に生きてきた。
室内にあるテーブルの上にはコースターに上にインスタントコーヒーが入ったマッグカップ。
それを口に啜りながら内ケ島は、散歩でもしようと考えた。
「ずっと同じ環境もいいけど。中に閉じ込めていると考えが鈍くなってくる。たまには活性化するために外の景色を浴びていくか」
やや独特な表現で景色を浴びてくる。
肉体や思考の基本的な機能は衰退することない。厳密にいうなら現象や法則の一部による崩壊。
即ち肉体が老化することがないのは単に成長しない、時間を経過しないからだ。若いまま保たれる彼の身体はあまり好きじゃなかった。
心は大人でも酒は飲めないし永遠に知らない。
コーヒーを飲み終えるとマグカップを水につける。次に外出の準備をそろそろするかと呟いた内ケ島は
――
鼻が刺すような匂いにスピネルは昏睡から意識を戻すと周囲を見渡す。
ここが牢屋だと彼女は知ると恐怖を覚える。
(手足そして首にも
どうポジティブに思考を捉えても、今は捕まっているとしか思えないよね……さて、どうしようか)
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