記録7―平穏と冒険そして邂逅⑦―

スピネルとドワーフが住むのは塩尻市しおじりし

長野県の中部に位置する。

そしてここは娯楽と興味本位と新世代を残すことだけのために創られた生きる魔法の生命体。

長野県は異種族たちの都市にまで成長して聖地。

搾取され続けてきて生きるだけを目的だけではなく趣きを見い出せていける安住の地。

そこ以外にも似たような地域を支配しているエリアはあるが比較的にその面積は小さく軍事侵攻されれば一日もかからず奪還される。

そして苦肉の策として取った手段は条件付きの公認による統治だった。

彼等が取ったのは選りすぐれた中で他種族を人類に求めに応じて送ること。これは人身売買めいたことだった。

独立したのではなく形だけのもので実質的な従事されていた。

そうしないと生き残れず生き残るための唯一の道。同族を道具として譲渡しないとならない不条理に極まりない条件を呑むしかなかった。


「イルデブランドさん今日も稽古けいこお願いします。姉さんが言っていたんですよ。身体と技そして心を磨くことは、まず毎日の地道な努力からって」


「えぇー、僕そんなに強くないよ。

千里の道も一歩からの心構えは立派だけど僕なんかじゃあ力不足だぞ」


「いえいえ、そんなことありません。

姉さんいわくイルデブランドさんは私がピンチの際には胆力と武勇をみせてくれるって」


「そ、そうか。あのカンヒザクラがね僕をそんなふうに褒めていたのか。ヘヘッ、ハッ!いかん、いかん騙されないぞ。

僕はパワーだけしか取り柄のないのだぞ」


「姉さんは自分よりも強い人と付き合いなんとか言っていましたよ……まあウソですけど」


最後のは聞こえるかといった囁き声ほどの呟き。


「フッ、何をしているんだいスピネル。

いつまでも居間にいないで出るよ。

今日の鍛錬は厳しい物になるだろう」


「わぁー、本当ですか。やった!そうこなくては面白くありませんからね」


理知的な面があるドワーフではあるが如何せんカンヒザクラの事になればその思考は鈍重となる。

勇ましくなったドワーフの青年が先頭にドアをくぐり抜けていく。レンガ造りの建物を出ていき数分ほどの距離にある公演広場へと向かった。

そして二人が得物にしているのはプラスチック製の武器である。

もし怪我をしないための訓練に怪我したら元の子もない。なので殺傷力のある武器で負傷して倒れたら本末転倒。よほどのことがない限り負傷はしない素材を使用する。


「よろしいですかイルデブランドさん?」


陽光でキラキラとまぶしく一本いっぽんの髪の毛が輝きを放たれ腰まで伸ばした桜色。

今はそれが邪魔になるため長く伸ばした髪を後ろにと束ねる。そしてスピネルは凛として透きとおる瞳をドワーフへ向けて槍を構える。

あらずもがな、その槍はプラスチック製である。


「それは、こちらの言葉よスピネル。

その蝶よ花よと愛でるような美貌びぼう華奢きゃしゃなレディがどこまで強くなったか。

お手並み拝見とさせてもらうか。ハッハハ」


対して伸ばし放題な青い髪。ドワーフの特徴でもある顔の左右から下までも覆うほどの髭。

その髭は髪色とおなじく青色である。

イルデブランドの得意武器は俊敏性を重きを置いた短剣。ただリーチが足りないのでサブメインとして牽制に大剣も扱う。戦闘スタイルは頭数で攻めてかかる独特や二刀流な使い手である。

ガラス細工のような少女がどこまでやれるのかとドワーフは心をワクワクしながら武器を構え、桜色のエルフは槍を振り払う構えをすると突撃した。

そして数分後――。


「ぜぇ、ぜぇ……ま、待ってくれスピネルちゃん。まさか、こんな戦法を取るなんて思わなかった。

なんて搦手からめてを使うんや!」


手を膝について荒れるゼェゼェと息を整えはじめたドワーフ。

そんな弱音を吐く姿が芝生の上であった。

威勢を張っていた偉丈夫の姿は何処いずこに。

見る影も失った情けないドワーフを見下ろすスピネルは嘆息して肩を落とした。


「いえ戦闘を想定とした訓練なのですよ。

まず死角からの奇襲攻撃とかを警戒しながら様子見が序盤の基本ですからね。実力や能力を見図らずに倒そうとはするのはケースは少ない。とりあえず相手の体力をじわじわと削っていく……これが搦手なんて卑怯な手ではないのですからね」


傷つかないよう言葉を選びながらスピネルは胃を唱えた。そして食ってかかるように反論すると怒りすぎたかなと頬を掻く。

彼女の性質から嘘をつくのが苦手である。


「ゼェハァ、ハァ……そうだね手痛い。でも悪意のない言葉というのは悪意のどんな罵りよりも鋭いもの。だから心身共に限界なので終わりにしない?」


「それだけ宣っれること出来るのでしたら後もう少しだけ付き合ってくださいよ。

いいでしょう?お兄ちゃん。それともパパ?」


「そんな優しい声をされても……コレぼっちも嬉しくない。あとパパじゃないから……って腕を引っ張って無理やり立たせるのやめて。

うわおぉぉぉぉーーッ!!」


少し前に家で話をしたイルデブランドについた嘘は比較的につきやすいものだった。

相手をある方向にと誘導させて騙すようなものと傷つける謀るような嘘は苦手とする。

とくに傷つける目的の虚言はとくに忌避感きひかんを強く感じる性分。

これとは別に相手を善意による嘘ならスピネルはこれは付ける。悪意に忌避感のある彼女はそれを心に永く同居させることを嫌う。

ドワーフのイルデブランドは鍛治を生業としており休みの日では家にもっている。

なにより引き締まった筋肉は研究所による体質に作られているもので運動するのが苦手なのである。

たまにはこうして身体を動かせようと配慮もあるが最優先に武術を磨きたいと勝っていたが。

なので誘ったのはイルデブランドの運動不足を改善させるために嘘をついて外に出した。


「疲れていますよイルデブランドさん。

もっと打ち合いに集中してください」


「ぜぇ、はぁー……これで、全力……なんだが」


手加減をしながら打ち合う。

優位になりすぎないようにして。息が絶え絶えながらもイルデブランドは大剣でおおきく横に振るいときには空振りをする。槍で防いだところで無防備な箇所に短剣を突こうとするがスピネルは防いでいる槍をそのまま回転やってみせると柄の下部で防いで弾かせた。そして弾き返してイルデブランドは背中から倒れるのだった。

尻もちをついたイルデブランドにおもむろに歩んで進むスピネルは右手を伸ばした。


「それじゃあ休憩としましょうか」


「あ、ありがたやぁ」


どちらが年上で年下か分からないなあと気優しいスピネルは内心そう心中て呟くのだった。

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