記録3―平穏と冒険そして邂逅③―

いつ戦いの火蓋が切ろうとするかという間際。

どちらも剣呑な気配が放たれていた。

もしも通行人がいればピリピリとなる大気の震えに錯覚を覚えさせる戦意。意気天を衝くほどの戦意がぶつかり合う。


「それだけの気迫を醸し出せるとは進歩したようだなハルピー」


「フン」


まだ武器や魔法で交わし合ってもいない二人。

好戦的な内ケ島うちがしまは挨拶代わりと威圧を放つ状況をどこか楽しげな表情。

その一方でウジマサに討たんとする戦意の咆哮を上げるスキンヘッドの男も不敵に笑う。


(さて、ここまでは拮抗しているといえる。さてハルピーどうくる?)


彼らが立っているのは日本で知らぬ者はいない尤も有名なスポット富士山。富士山が誕生したのは約十万年の前となり中原で新しく噴煙が上がってからだ。噴火を繰り返して規模が増えていき、その標高は3776メートルを誇る。

かつて山頂には精確な気象をしようと剣ヶ峰けんがみねの一角に建てた施設がある。

当時では世界一の高さに規模が最大を誇っていた気象レーダー。何故こんな高所で設置したのか?

日本内ではより事前に報せて避難するための時間を正確な気象データを観測するために求められたからである。

気象を観測する意の測候そっこう

富士山測候所と呼ぼれる建物は2004年からは閉鎖となり決定され特別地域として多用的な目的で利用することになった。


「それでは始めるとするか。踏み込むからわしの剣を受け止めてみせよハルピー」


内ケ島はそう言うと拳を上げて構える。


「いくぞぉ!?」


「さあ、楽しませてくれよ」


禿頭とくとうの巨漢ハルピーは好戦的な笑みを浮かべた。

内ケ島は右手を空に向けて掲げはじめた。

すると虚空から突如として黒い渦が発生。

その渦は段々と拡大していき、広がる深層の奥から表れすのは武器。

その呼び出した武器は――。


「装着、完了。

白銀のシールド〖ディシジョンアップ〗!」


なんと彼が呼び寄せたのは盾であった。

それを右手、盾の内側を装着する作業を終えると内ケ島は腰を落とす。

そのまま盾を前に手を伸ばすと、前傾の姿勢を維持。内ケ島はそのまま前へと駆け出す。

シューズの裏側には魔法を付加させている。

指数関数的な速度の上昇。

加速の補助したことで人外的な速度を引き出した。


「うおぉぉぉ!」


そう来るだろうと予測した禿頭の巨漢ハルピーは背にある大剣の柄をつかむ。取り出すと上段の構えで迎撃の体勢を取る。


「はあぁッ!」


鍛えぬかれた筋肉を躍動するハルピーは振り絞られ振り下ろした大剣。

盾を突き出しての突然敢行をする内ケ島は軌道を変えずに迷いないまま正面へと突き進む。

大剣と盾のはげしい衝突音が山頂に響き渡る。

まだ残響する金属音を気にせず内ケ島は大剣をはじき返すと前へ迫ろうとするが。


「踏み込みが足りん!」


間合いに入らんとするがそれに見通していたハルピーは腰をやや落とした。

そして飛び膝蹴りをかます。

距離をゼロにまで縮めてからの肉弾戦に持っていこうとした内ケ島の思惑は物の見事に読まれての行動だった。


「なんと!そこまで進化したというかハルピーよ。だが踏み込みが足りんのはハルピーの方ぞ」


――二段構えの反撃してくるとは、見た目に反して頭脳戦な戦い方をすると内ケ島は敵を心中で称賛を送る。

ハルピーの飛び膝蹴りカウンターアタックは内ケ島の身を引いて避ける。それもハルピーから視点として半身の最低限な動きをとった。


「クッ!流石さすがにやるじゃないか!」


「ほう」


――まさかこれも避けるの前提なのか……そしてこれが本命の三段目になるか。

蓄えたエネルギーを爆発するようにジャンプをするハルピーは大剣を大きく掲げた。

バネのような飛びかたをした禿頭の巨漢は空中で、その力の限りに大剣を振り下ろさんと強力な一撃を見舞わせようとする。

手強い相手をするのは、やはり面白い。

なら渾身の一撃を込められた落下エネルギーごと打ち返すだけ。

本命の大上段斬りを弾き返してやる!

前傾となり、盾を後ろにして右斜めにする。そのまま腰を低く落とす。そして直撃するギリギリを推し量ってから大武器を振り上げるように大剣へとぶつける。

富士山の山頂におおきく響いて渡る衝突音。

そして結果は……俺の勝利だ。大きくハルピーは武器ごと吹き飛ばされるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る