★12月12日 (穂乃香からの手紙⑥)
ふと窓の外を見ると、レストランの入口の横の椅子に女の人が座っています。満席と勘違いして待っているのかなと思ったので、ドアを開けて声をかけました。「席、空いてますよ」って。すると女の人は微笑んで「ありがとう。でも人を待っているから、いいのよ」と一言。
側で見ると、黒髪が波打ってて、肌は小麦色で、美しいってこういう人の事を言うんでしょうね。
「どう? この服、きれいでしょ? 夜会服なの」
女の人の着ている黒いドレスは、色とりどりの宝石が縫い付けられていて、確かにきれいでした。でもどこか現実離れして見えて。
「待ち合わせている人、まだ来ないのよ。もう少しだけ待ってみるわ」
レストランの中で支配人さんがこちらの方を見て、首を横に振っているのが分かりました。
私は「早く来るといいですね」と言い、もう一度、レストランに入りました。きっと待ち合わせの恋人がずっと来ないんだ、と思ったのでいたたまれなかったんです。
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