★12月13日  (穂乃香からの手紙⑦)

 ミーニャの方を見ると、自分のご飯を食べ終わり、とても満足そうでした。


「家に帰りたいんだけど、帰り道が分からないな。どうしよう」

 半分独り言、もう半分はミーニャと支配人さんに向けて。すると支配人さんが言いました。


「確かにここでは帰り道を見つけるのは並大抵の事ではありません。夜になったら星が出るので道標みちしるべになるし、朝になったら太陽が出て目印になるのですが、ここはいつも日が暮れて中途半端な時間ですからね」


「今頃、お父さんもお母さんも心配してると思うんです。他の家族も」


 私はレストランに泊めてもらえるかなと期待していましたが、支配人さんはそんな様子を見せず、代わりにこんな事を言いました。


「小さな宿屋がここの何軒か先にありますよ。ただ……」


「ただ料金が高いんですか? 私はお金を持っていないし」


「いや、そこもここと同じでミーニャの顔がききます。ただ宿屋というのは夜にならないと泊まれないですからね」


「夜にならないと?」

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