★12月6日 (図書館にて⑥)
「ここに来るまでの林の道を通る時、いつもミーニャを思い出すのは事実です。でも本当の理由はあの棚にある深緑色の表紙の英語の本の中に、ミーニャそっくりの黒猫の挿絵があるからなんです。英語が読めないので内容は分からないけど、黒猫が外国の通りを歩いてたり、素敵なレストランの前で座ってたり、妖精の住んでいそうな建物の床にチョコンと座っていたり。そんな挿絵を見ているだけで落ち着くんです」
「へえ、そうなんだ。今日はもう書庫を閉めたから間に合わないけど、今度先生もその本を読んでみるわね」
「ってか司書の先生だから、何の本か知ってるんじゃない?」
ミノルの質問に、由季は気不味そうに答えた。
「私だってここの全部の本を知ってるわけじゃないわ。とにかく今日は早く帰りましょ。穂乃香ちゃんを守ってくれたミーニャのためにも安全に帰ってね」
由季はミノルにそっと目配せをした。
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