★12月4日 (図書館にて④)

「それが分からないの。林の中でミーニャを抱き締めて心細くて泣いてしまって。そしたら急にミーニャが私の腕から出たがって、トコトコ歩き始めたの。ミーニャを一生懸命追いかけていたらだんだん眠くなってきたのまでは憶えてるんだけど、それから先の記憶がないの」


「はぁ? 記憶がない?」

「じゃあどうやって家に帰って来たか、憶えてないって事?」


 穂乃香は、首を横に振った。

「家に帰った時の事は憶えてる。気が付くと私は小屋のような所で寝ていて、周りに家族や近所の人達が心配そうな顔をして立っていたの。私は林の出口付近にある大きな家の、ちょっと離れた納屋で眠っていたみたい。周りにはわらがお布団のように積み重なっていたから、寒くもなかったのよ。林の出口の家の人は、納屋にも、そこに入るための木戸にもカギをかけていたのに、こじ開けられた様子もなく不思議だと言って首をひねってた。ここには、ネコが入り込める位の隙間しかないのにって。でも子どもが無事見つかったという事で、勝手に入った事を叱られなかったの」


「あー、思い出した! そう言えば四年前の秋、小三の子が一時行方不明になって、その夜中に見つかったって事件がウチの学校であったな。どこか、人んちで昼寝してたとか……」


「何かまるで不法侵入した人みたい」穂乃香は頬をふくらませた。


「だけど不法侵入したんだろ?」


「憶えてない。けど、見つかった時、いつもミーニャとお昼寝する時やってたみたいに横向きに丸まってたから、やっぱり自分でそこに入って寝たって事なのかな。私はミーニャを追いかけてたら、眠くなったっていう事しか本当に憶えてないの」


「きっと眠くなったから、どこか眠れる所がないか、探したのね」


「その家の人がカギをかけたと思い込んでて実はかけ忘れてたのに一票」


 ミノルと由季はまるで名探偵になったように推理し合った。


「ネコが話せたらよかったのにね。きっと一部始終を知ってるだろうから」


「それが、私が発見された時、ミーニャはどこにもいなかったんです。いえ、その時だけじゃなく、それから今まで誰もミーニャの姿を見ていないんです」


「え?」

 二人は驚いて穂乃香の次の言葉を待った。

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