★12月2日 (図書館にて②)

 由季は十一月のその日、帰ろうとカウンターの前を通った穂乃香に話しかけた。ミノルもそこにいた。


「ね、いつもこの時間よね。『秋の日は釣瓶落とし』と言われているのよ。日が暮れるのがあっという間って意味なの。いつも一人で来てるんだし、閉館時刻でなく、もっと早く帰ったら? 穂乃香ちゃんってよっぽど図書館が好きなのね」


「『秋の日は釣瓶落とし』ってお父さんも言ってました。でも私が図書館に来るようになったのは、その事が原因なんです」


「え?」

これにはミノルも身を乗り出した。「どういう事だよ」

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